脳辺雑記帖 (Nohhen-zahts)

脳病と心筋梗塞を患っての独り暮し、Rondo-Nth の生活・世相雑記。気まぐれ更新ですが、気長にお付合い下さい。

千鳥ヶ渕墓苑

2007年09月22日 17時47分42秒 | 随想
九月下旬にしては、夏日のような陽気である。
午前に新宿西口で、高速バスに乗る友人を見送り、
その帰りに、九段下に向かい、千鳥ヶ渕墓苑を訪れた。

陽射しの降る、正午の九段坂をのぼり、
右手に見える靖国の大鳥居とポールに翻る日の丸に、
背を向けるように、お堀沿いに左折する。

皇居には、未だにセミの声が鳴り響いていた。
木々の繁るお堀端の石畳をしばらく歩くと、
右手に、墓苑の入り口が見えた。

この墓苑は、先の大戦で海外で戦没された
軍人・軍属・一般邦人等、240万人を祭ったものであろうが、
実際に納められている遺骨は、35万数千柱の、
身元不明等で、遺族への引渡しが出来ない御魂である。


九月の晴れた空の下、
訪なう者も少なく、墓苑は閑散としていた。
苑内中央の、納骨堂である六角堂に進み、
一本百円なる白菊を手向けて、心を込めて合掌した。

黙祷後、眼を開いたとき、
気のせいか、
六角堂の空気が、私に向かって、
ほのかに緩んだように感じた。

参拝後に休憩室に入り、記帳簿に我が名を記し、
ガラスケースに並んだ遺品の数々を眺めた。
錆付いた三八銃や軍刀、飯盒の中蓋などの他、
一番多い遺品が、戦地で拾われた小さな石であった。

酷暑厳寒の戦地で、
身命を削る思いで生き、
そして亡くなった大勢の方々が、
ただの石ころとしてしか、祖国に帰ってないのである。

私は、またこの墓苑に来たいと思った。

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