朝、実家を出てマンションに行き朝食を摂る。夕方に夕刊紙を手に取り
実家に戻る。夕飯は外食。実家の風呂場でシャワーを浴びて、座布団を
布団にしてラジオを聴きながら眠る。実家への未練から、未だ100%の
マンション暮らしをしていないのだが、そろそろ終わりだ。
解体すべく、家具もカーテンもガステーブルも、仏壇も神棚さえない、
ガランとした実家の室内は、生気を喪った死に体のようだ。空き家の風
景そのものである。シャワーの給湯と、電灯とエアコンが使えるのみ。
家とは、住んでいる人のことだと思う。ヒトのいない家は、物理的家屋
であっても、人間の家ではないのだ。住まなくなると、家は滅んでいく。
家の末期、臨終に立ち会っているようなものだ。この家は父がローンを
組んで建てた家である。長男の私が住み、私が引導を渡せて良かったと
も思う。二親を見送り、期せずして今、家と土地を見送ることになった
が、私も還暦である。これで上の世代からの、しがらみの精算である。
実家はもうすぐ取り壊しで、家を喪失するが、賃貸マンションの部屋も
実家にあった家具や調度品、飾ってあったポスターや額等を飾り付ける
と、少しだけ「実家」の風情が蘇り、「実家」を取り戻した気になって
くる。喪失したつもりの事物との再会、それが嬉しい。
人生は出会いと別れだというが、不本意な出会いや別れも数多いだろう。
ヒトは喪失した事物の穴埋めに、新たな出会いを求めようとする方向と、
喪失した事物を思い出して復元、再会を試みようとする、二つの方向が
あると思う。ヒトは意識せずとも自然とその両方を試みるだろうが、性
格や境遇、年齢等からどちらかに偏るものでもあろう。
新たな出会いに期待しつつ、旧懐も重んじて、新生活のスタートかな。
実家に戻る。夕飯は外食。実家の風呂場でシャワーを浴びて、座布団を
布団にしてラジオを聴きながら眠る。実家への未練から、未だ100%の
マンション暮らしをしていないのだが、そろそろ終わりだ。
解体すべく、家具もカーテンもガステーブルも、仏壇も神棚さえない、
ガランとした実家の室内は、生気を喪った死に体のようだ。空き家の風
景そのものである。シャワーの給湯と、電灯とエアコンが使えるのみ。
家とは、住んでいる人のことだと思う。ヒトのいない家は、物理的家屋
であっても、人間の家ではないのだ。住まなくなると、家は滅んでいく。
家の末期、臨終に立ち会っているようなものだ。この家は父がローンを
組んで建てた家である。長男の私が住み、私が引導を渡せて良かったと
も思う。二親を見送り、期せずして今、家と土地を見送ることになった
が、私も還暦である。これで上の世代からの、しがらみの精算である。
実家はもうすぐ取り壊しで、家を喪失するが、賃貸マンションの部屋も
実家にあった家具や調度品、飾ってあったポスターや額等を飾り付ける
と、少しだけ「実家」の風情が蘇り、「実家」を取り戻した気になって
くる。喪失したつもりの事物との再会、それが嬉しい。
人生は出会いと別れだというが、不本意な出会いや別れも数多いだろう。
ヒトは喪失した事物の穴埋めに、新たな出会いを求めようとする方向と、
喪失した事物を思い出して復元、再会を試みようとする、二つの方向が
あると思う。ヒトは意識せずとも自然とその両方を試みるだろうが、性
格や境遇、年齢等からどちらかに偏るものでもあろう。
新たな出会いに期待しつつ、旧懐も重んじて、新生活のスタートかな。