不安が覆う静かな街。

今、東京の街は人出が少なく静かである。言わずと知れたコロナ禍の
影響である。電車に乗っても空いているし、乗客は咳払いひとつしない。
皆鳴りを潜めて見えない何かを気にしながら、窮屈に委縮した空気が
蔓延しているように見える。

イベントや公演の中止、無観客で行われる数々のスポーツ行事や競馬等
街のレストランや居酒屋も客が来ないという。ガランとした休校中の学校
、家庭学習をする子供たちと、在宅ワークする親たち。公立図書館も開館
しているが、滞留を禁じていて本棚の閲覧は不可。図書は予約した上で
カウンターでの手渡しと返却業務しか行わないという。

新型コロナ・ウイルスを封じ込めるためというが、総じて人間の方が封じ
込められているような有様である。皆、逼塞して不安とストレスをため込
んで、息苦しかろうと思う。還暦過ぎの私も、人生で未経験の事態である。
オイル・ショックのトイレット・ペーパー不足は覚えているが、マスク不足
は初めてである。検査体制の遅れその他、様々な観点から、政府の危機
管理・危機対応は全くなってないと思う。国民の生命・健康よりも、別の
事(株価とかオリンピック開催等々)を気にしているからではなかろうか。

日本での新型コロナ感染者は、大規模な検査をすれば、確実に増えると
思われるが、それよりも、アメリカでの感染の実態がどうも不明であり、気
懸かりである。カリフォルニア等一部地域では感染が報じられているが、
大統領選挙の予備選演説会場に集う多くのヒトビト、バスケットの試合を
観戦する観客たち、ＴＶニュースで見ても、ほとんど誰もマスクさえしてい
ない。トランプ大統領の采配なのか、全米でコロナ問題を、故意に無視し
ている印象さえ感じる。

東京オリンピックの延期・中止はどうでも良いが、現今のコロナ禍は一体
いつ収束(終息)するものやら、一向に出口が見えないのが、不安であり、
この問題への思考停止状態を強いられている。私自身は、心筋梗塞の基
礎疾患があるが、感染が怖いとはあまり思わない。それより感染すると隔
離だ何だと、仰々しく面倒臭そうである。

新型コロナ自体は、今後は季節性のインフルエンザの一種になっていく
だろうという、専門家の意見を聞いたが、戦前のスペイン風邪が、その後に
今のインフルエンザＡ型・Ｂ型等に変異した経過を辿ったのと同じ結末は、
理解できるが、「どう収束」の「どう」が、日程的な先行きの流れが、全くアナ
ウンスされて来ない現状では、安心の仕様がない。

株価の２万円割れは目前だが、どこまで落ちることやら。米ドルも104円台
まで下げ、１０２円５０銭まで下落(可能性)するという話だ。リーマン・ショック
では、３年で株価は元に戻ったそうである。株やドル相場は戻っても、ヒトの
命は一度失われたら、戻らない。何が、一番大切な事か、政治は濁り曇った
目を綺麗に覚ましてから、包括的で抽象的な答弁はもう止めて、今を生きて
いる国民とその生活にとって、肝心で具体的な事に、親身に機動的に対応
して欲しい。