俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

選択と集中

2013-01-05 08:58:31 | Weblog
 ビジネスの世界では一時期「選択と集中」という言葉が流行った。限りある経営資源を拡散させず最も得意な事業に集中的に投下するという戦略だが、これに異を唱える人は殆んどおらず金科玉条の如く持て囃されたものだ。しかしこれは危険な戦略だ。成功すれば良いが失敗すれば目も当てられない。シャープはその典型で液晶と太陽光パネルに賭けて経営危機に陥っている。
 投資では危険分散をすることが常識だ。偏った投資はイチかバチかのギャンブルのようなものであり大失敗を招きかねない。日航や東電の株を大量に保有していた人は大損をしただろう。普通に考えればこれらは堅実な安全株の筈だ。まさかこんなことになろうとは予想できなかった。
 発電事業も「選択と集中」をすれば大変なことになりかねない。大規模発電の代表は原発だが、巨大火力発電所も事故を起こせば大変なことになる。今後は多少、高コストであろうとも、中規模発電所を多数作ることが経営戦略となるのではないだろうか。
 政治も中央集権が見直されつつある。東京と大阪が中央支配に反旗を翻しその後、全国に広まりつつある。中央集権は統治するためには都合の良いシステムだが国民にとって好ましいものとは思えない。中国のような極端な中央集権国は少数の権力者のために多数の国民が犠牲にされている。
 ところで今、バナナが妙に安い。これは南沙諸島の領有権を巡る問題のために中国政府がフィリピンとの貿易を規制しているからだ。一大消費地を失ったフィリピンのバナナは値崩れを起こした。中央集権は国内だけではなく隣国にとっても迷惑な制度だ。

深読み

2013-01-05 08:34:00 | Weblog
 いきなり3択のパズルを出題する。
 A氏は京大法学部の学生で日本共産党のシンパだ。10年後に彼はどうしている可能性が高いだろうか?
 ①サラリーマン
 ②サラリーマンで共産党のシンパ
 ③共産党の政治家
 申し訳ないが、このパズルに正解は無い。しかし正解ではあり得ない選択肢が1つだけある。それは②だ。
 「えっ?」と思う人が少なくなかろう。しかし②の可能性は必ず①よりも低い。A氏が共産党のシンパではなくなっている可能性が0ではないからだ。①は「サラリーマンである」と言っているだけで「共産党のシンパではない」とは言っていない。それなのに勝手に深読みをして誤った答を選ぶ。
 事実と解釈は明確に区別されねばならない。1時間のドラマで男女が一緒に食事をすればそれはその後の展開の伏線であり必ず意味がある。しかし日常生活で一緒に食事をしても大した意味を持たないことが大半だ。このことを理解していない人がストーカー的なことをして人を困らせる。普段親切にされていない人がたまに親切にされれば舞い上がってしまって特別な好意だと思い込む。
 中学生の頃、学校で「行間を読め」と教えられて途方に暮れたことを思い出す。なぜ行間を読めるのだろうか。それは解釈だ。文学作品ならドラマと同じで行間を読むことが理解を深める。しかし論文はそうではない。行間を読むことは勝手な解釈であり趣旨に背く。言外の意味を探ろうとすることも危険だ。無数の解釈があり得るからだ。事実と解釈は区別されねばならない。