俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

延命

2013-01-11 09:04:50 | Weblog
 延命の是非については訳の分からないルールがある。最初から延命治療を行なわなければ罪に問われることは無いのに、一旦延命治療をやってしまえばそれを中止することは殺人とされる。全く不可解な話だ。
 些か不謹慎な例え話だが、マンションに大きな損傷が見つかった場合どうするだろうか。余程大きな損傷でなければ即刻解体ではなくまずは応急措置をするだろう。それから精査して、補強をするか建て替えるかが決められる。もし建て替えることになったら当初の応急措置は無駄な投資だったということになるだろうか、そんなことにはならない。検討するための時間的余裕が生まれるからだ。最初の損傷の時点でいきなり建て替えの是非を決めるよりもずっと冷静で合理的な判断が可能になる。
 さて人が交通事故などで重態となった場合、どう対応されているだろうか。延命措置をすればその装置は外せなくなる。延命措置をしなければ助かるかも知れない命を見捨てることになる。
 私は一旦延命措置をすることを義務付けるべきだと思う。生死の境にある人を目前にして冷静な判断は不可能だ。延命措置後の経過を見て親族と医師が協議をしてその継続・打ち切りを決めるべきだろう。
 延命する・しないは悪しき二分割法だ。「分からない」があって然るべきだ。従って差し当っては延命して後からその是非を決めれば良い。とりあえず延命を選ぶことが賢明な選択だ。なぜなら最初に「延命する」を選べば後で「延命しない」に変更できるが、「延命しない」を選んだ場合は「延命する」という選択肢は失われるからだ。とりあえず延命をしてその後に見直すということをルールにすべきだ。現行法は間違っている。

円安のメリット

2013-01-11 08:38:23 | Weblog
 円安になっても利益を得るのは輸出企業だけだと思っている人が少なくなかろう。円安になれば輸入品が値上がりする。海外の有名ブランド品だけではなく食品も日用品も値上がりする。100円ショップの商品は大半がアジアからの輸入品だから価格は据え置かれたままで量が減らされて実質的には値上げになる。これでは庶民には何のメリットも無いように思いそうだ。
 ところがそうではない。輸入品が高くなれば国産品に価格競争力が生まれる。典型的なのは林業だ。林業は長期に亘って衰退産業だった。海外から安く調達できたからだ。輸送コストを含めても太刀打ちできないほど価格差があった。ところがこのところの円安もあり輸入木材が高騰しているので国産木材が再評価されるようになった。日本は国土の80%が森林という世界でも稀な森林大国なだけに林業の復権の意味は大きい。
 食料品でも同じようなことが起こっている。ご存知のとおり日本のカロリー自給率は約40%だ。これは自給できないからではない。生産するよりも輸入したほうが安いから生産されなかったという事情もある。意外なことに四方を海に囲まれた日本の水産物の自給率がたった58%(2011年)しか無い。それなのに漁港では少なからぬ魚が廃棄されている。消費者に馴染みの薄い魚・小さい魚・傷のある魚などがゴミとして廃棄されている。輸入魚が高騰すればこれまで廃棄されていた魚も商品として生かされるようになるだろう。
 飼料価格も高騰しているそうだ。これまで米国産のトウモロコシに敵わなかったが俄かに国産の「不味い米」が注目されているようだ。食用には適さないが生産効率が高いので充分採算が合うからだ。
 円安を機に改めて国内産業を見直すべきだろう。円安が国内産業の振興に繋がるということは見逃せない。