俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

夢は叶わない

2013-01-09 10:19:45 | Weblog
 年始の番組で著名人にインタビューをすることがある。その時しばしば耳にするのは「夢は必ず叶う」という言葉だ。こんな迷惑な言葉は無い。こんな無責任な発言をするから多くの人が不幸になる。
 インタビューされるのは芸能人であれスポーツ選手であれ経営者であれ夢が叶った人ばかりだ。その人に能力があったのか運が良かっただけなのかは問わない。確かなことはその人は夢が叶った人であることだ。夢が叶った人は夢が叶うと信じる。夢が叶った人の背後にはその数万倍の夢が叶わなかった人がいることは忘れられている。
 ホームレスにインタビューせよ、とは言わない。道行くサラリーマンでも誰でも良い。夢は叶うかと問えば殆んどの人が「叶わない」と答えるだろう。夢が叶った人が「夢は叶う」と答えるのは当り前のことであり、こんなインタビューは情報操作の一種であるとさえ言えるだろう。
 宝くじに当った人に尋ねたら「宝くじはいずれ必ず当たる。私は諦めずに買い続けたから当った」と言うだろう。当った人に尋ねても仕方が無い。大半を占める当らなかった人なら「何度買っても当らない」と答えるだろう。
 幸運な勝者は間違った希望を説く。夢が叶うのは例外であり殆んどの人は夢破れる。自分の能力の限界に早く気付けばそれだけ将来の選択の幅は広がる。夢を諦められず見果てぬ夢を追い続ければ99%確実に悲惨な末路が待っている。
 夢を見るな、とは言わない。夢と現実の両方を見つめて、それが叶う夢なのかどうかを現実的に判断することが大切だ。

呼吸の乱れ

2013-01-09 09:50:31 | Weblog
 激しいスポーツをすれば誰でも体温が上がり呼吸が乱れる。その経緯を知らずに現状だけを見れば、ヤブ医者なら体温を下げる薬と呼吸を整える薬を処方するだろう。それは気違い沙汰だ。運動をして体温が上がり呼吸が乱れるのは当然のことだ。それを薬で抑えれば病気になるだろう。
 ビールを沢山飲んで何度もトイレに行く人に排尿抑止剤を飲ませたらどうなるだろうか。きっと有害だ。小便が近いという結果ではなく大量のビールを飲むという原因に対処せねばならない。
 対症療法では治療の名の元でこれらと同じようなデタラメが行われている。血圧が高いとか血糖値が高いのは、運動後や飲酒時の反応と同様に殆んどが体にとって必要な反応だろう。その原因を無視して対症療法を施すことは却って危険な状態を招く。
 風邪をひくと熱が出る。これは決して病原体が発熱させている訳ではない。逆に、病原体の活動を抑え免疫機能を高めるために、体が熱を出しているのだ。解熱剤を使って無理やり熱を下げれば、一時的には病が抑えられているように誤解されるが、実は風邪を悪化させている。
 下痢や嘔吐をするのは体内の有害物を一刻も早く排除するためだ。堺市でのOー157による集団食中毒事件では下痢止めや嘔吐止めが効いた人ほど重篤な症状になったそうだ。下痢や嘔吐を止めずに、点滴による水分補給だけをすべきだったのだろう。
 原因が分かっている病気に対する治療は科学と言える。しかし原因を放ったらかしにしたままでの対症療法は似非科学だ。これはカルト教団よりもタチが悪い。カルト教団のお守りやお札は全く無効でしかないが、対症療法は明確に有害だ。