俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

二分割法

2013-02-26 09:39:03 | Weblog
 被害者にも問題があると言うとすぐに「悪いのは加害者だ」という反応が返って来る。加害者が悪いのは当り前だが被害者にも幾らかの責任がある事件が少なくない。一方が悪で一方が善と決め付けたがるのは理性のレベルに達していない幼稚な判断だ。好き・嫌いや快・不快の感情のようなものだ。
 白と黒の間には無数のグレーのグラデーションがある。これを白か黒かの2種類にしか分類しなければ矛盾に陥る。
 中国船が領海侵犯をするたびに中国そのものを敵と考える人がいる。しかし日本を挑発しているのは13億の中国人民のごく一部に過ぎない。多くの中国人民は善良だ。少なくとも中国政府と中国人民ぐらいは分けて考える必要がある。中国人民は支配者層に搾取されている被害者とも言えよう。
 「悪い被害者もいる」ということは決して「被害者が悪い」という意味ではない。こういう当り前のことを理解できないのは「被害者=善、加害者=悪」というステレオタイプに捕らわれているからだ。悪の組織対正義の味方という図式が成立するのは子供向けの勧善懲悪のヒーロー物語だけだ。
 二分割すれば判断は楽だ。しかしこんなヒューリスティック(直観的)な考え方では正しい判断はできない。これは人類以前の動物の脳による「反応」に過ぎず、人類を他の動物よりも優越させている大脳皮質を使った判断ではない。人類以前のレベルに過ぎない「反応」の粗雑さに操られないように、ちゃんと大脳皮質を使って考えることを身に付ける必要がある。

茶番劇

2013-02-26 09:10:42 | Weblog
TPPについて「総ての関税撤廃を予め約束しない」という共同声明を手土産にして安倍首相が凱旋帰国したが茶番劇ではないだろうか。そもそも「聖域なき関税撤廃」という言葉を誰が使っているのだろうか。少なくともアメリカの主張ではない。昨年12月の第15回のTPP会合においてもアメリカは乳製品と砂糖の例外扱いを主張していた。つまりアメリかは例外の必要性を主張している国だ。アメリカは日本に配慮して例外を認めたのではなく、元々自国の利益のために例外を認めていた。例外の必要性を主張する国と、例外扱いを認めてほしい国が共同声明をすれば「例外を認める」となるのは当り前だ。何の協議も必要ない。日米両国が対立している訳ではないのだから、オバマ大統領はなぜ共同声明による明文化が必要なのか理解できなかったのではないだろうか。
 「聖域なき関税撤廃」という言葉を使うのは民主党と自民党と日本のマスコミだけだ。民主党も自民党も幻の「聖域なき関税撤廃」を強調しておいて「聖域を認めさせた」という嘘で世論を納得させようとしたと思える。
 もっと悪質なのはマスコミだ。12月にアメリカが例外を認めていることを報じておきながら宛もアメリカが「聖域なき関税撤廃」を主張する張本人であるかのように扱い、わざわざ日本のために例外を認めてもらったのだという嘘でTPP推進をバックアップしている。これほど馬鹿げたできレースは珍しい。マスコミは政府の御用情報機関に堕したと言わざるを得ない。
 TPPの問題点は多数あるが最大の問題点は、これがアメリカの言いなり外交であり、そのことについて政府とマスコミが結託して情報操作をしているということだ。