俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

公務員

2013-03-12 09:31:21 | Weblog
 憲法に関する議論が盛んだ。以前からの9条「戦争の放棄」以外に96条「憲法改正の手続」が俎上に載せられている。1票の格差も14条「法の下の平等」に基いて定数是正が求められている。
 そんな中で明らかに違憲状態でありながら政官がグルになって無視している条項がある。第15条「国民の公務員選定罷免権」だ。条文は「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」とされており、その第3項には「公務員の選挙は、成年者による普通選挙を保障する。」と明記されている。
 ここで言う「公務員」とは誰のことだろうか。国会議員も最高裁判事も地方公共団体の首長および議員についても別途定められているのだからこれら以外の通常の意味の「公務員」と考えざるを得ない。しかし国家公務員であろうと地方公務員であろうと、「選定」したことも「罷免」したことも「選挙」をしたことも無い。これは明らかに憲法違反ではないだろうか。早急に少なくとも国家公務員上級職を選定する普通選挙が必要だろう。最低限でも問題のある公務員に対する罷免権を行使すべきだろう。国民が公務員を罷免できるなら態度の悪い公務員は随分少なくなるだろう。
 私は決して法律至上主義者ではないが、「憲法を守れ」と声高に主張する人がこの条項を無視することは不当だと思う。これでは「憲法のうち我々に都合の良いものを守れ」と言っているに過ぎない。憲法として定められている限りそれに従うことは国民の義務であり、15条についても遵守か改正かを検討する必要がある。放置するのなら無法国家・脱法国家だ。法曹界は「国民主権の理念に過ぎない」として骨抜きにしているが9条同様、明らかな曲解だ。

複数の原因

2013-03-12 09:06:22 | Weblog
 昔は「氏か育ちか」という議論があった。人の能力を決めるのは遺伝か環境か、ということだ。今ではこんな議論は無い。遺伝も環境も重要であり「どちらか」ではなく「どちらも」であることが明らかになったからだ。
 唯一の真因を探すことを科学だと思っている人がいるがそれは誤りだ。殆んどの事象の原因は複数だ。そもそも原因と結果は一対一対応しない。複数の原因が複数の結果と対応することが多い。
 酒を飲み過ぎた翌日、二日酔いで気分が悪いし肝機能も悪化し、同僚や顧客にも悪い印象を与えるだろう。この場合、1つの原因が複数の結果を招いている。
 18歳の少年が凶悪犯罪を犯したなら、多分遺伝子か家庭環境か社会環境かその他諸々のうち複数のものが原因だろう。どれかを真因だと決め付けるのは幼稚な発想だ。
 花粉症の原因は花粉だけではない。花粉が最も多い山の中では花粉症の患者は少なく、むしろ市街地で多く発症する。従って花粉だけではなく排気ガスなども原因物質だ。今年の場合はもっと複雑だ。花粉と排気ガスだけではなく、中国から飛来するPM2.5や黄砂の影響まで考慮せねばならない。これだけ要因が増えればどんな結果になるか予想できない。
 もっと難しいのは複数の薬の影響だ。一種類でも人体に異常反応を起こさせる薬を複数服用した場合、どんな異常が生じるか全く分からない。組み合わせが無数にあるため実験することさえ不可能だ。何種類もの薬を同時に服用することは危険極まりない。