俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

時と金

2013-03-17 09:16:17 | Weblog
 人的サービスを受ける場合、時間が長いほど料金は高くなる。マッサージだろうと風俗店だろうとそれは共通だ。しかしそれは快適なサービスに限定されるべきだろう。不快なサービスなら時間の長さは付加価値ではなくデメリットだ。
 長時間の歯の治療は極めて不愉快だ。どうせ同じくらい痛いのなら、あるいは多少痛みが増してでも、短時間で終わらせてもらいたいと思う。
 食堂で調理を待つ時間も無駄な時間だ。昔の人は鰻屋で1時間待ったそうだが私にはできそうにない。ファストフードのほうがずっと好ましい。寿司やソバは江戸っ子のファストフードだったらしい。
 都会では当り前の短時間理容店が地方には殆んど無い。これは全く困る。私にとって散発は特に不愉快な時間なのでできるだけ早く済ませたい。ところが時間が長くて高い昔ながらの散髪屋しか無い。彼らとしては客数が限られているだけに少しでも付加価値の高い理容にして客単価を上げているつもりなのだろうが有難迷惑だ。私にとっては短時間なほど好ましい。同じレベルの仕事を半分の時間でやってもらえるのなら2倍払っても良いとさえ思う。
 人件費から考えれば長時間なら高コストということになるが客としては納得できない。これは仕事の遅い者に時間外手当を支給するような馬鹿げた仕組みであり、料金は時間ではなく成果に見合うべきだろう。
 最近、コンビニなどの弁当がよく売れているそうだが、これはファストフードよりも更に早いということも一因ではないだろうか。time saving(時間節約)ということをもっと重視しても良いように思える。

麦の加工貿易

2013-03-17 08:45:29 | Weblog
 歴史に「もし」は禁物かも知れないが、もし農林水産省が小麦の輸入に関して過剰な規制をしていなかったら日本の産業構造が変わっていたかも知れない。主要産業となり得ていた事業の大々本命は即席麺だ。現在、世界で年間何と1,000億食も消費されている。これを発明したのは安藤百福氏であり、その後の様々な改善も殆んどが日本で生まれた。普通なら日本は即席麺の輸出大国になって然るべきなのにそうならなかった。小麦が国際価格の2・3倍もするからだ。そのために膨大な海外需要に対して国内生産ではなく海外生産やライセンス供与という形を取らざるを得なかった。もし国内での小麦の流通価格が正常なものだったら輸出工場によって大量の雇用が生まれ現在も主要産業となっていただろう。因みに即席麺の日本の輸出量は僅か4,700万食に過ぎない。多分、殆んどが在外邦人向け需要だろう。1,000億食とのギャップは余りにも大き過ぎる。
 資源の乏しい日本は加工貿易によって富を得た。自動車も家電も輸入した原材料を加工して輸出する。もし鉄や石油などの国内流通価格が小麦のように不当に吊り上げられていたらこんなビジネスは成立しない。
 小麦の価格は農水省による独占的国家貿易によって徹底的に歪められた。農水省の愚策さえ無ければ、日本は即席麺だけではなく菓子やパスタなども含めた加工食品の輸出大国になっていたのではないだろうか。旨味を発見した日本人の味覚は鋭い。加工食品において世界最高レベルの商品を作ることぐらい大して難しくなかろう。
 世界一の小麦輸入国は何とイタリアだ。世界中から良質な小麦を輸入してパスタに加工して輸出している。日本が見習うべき戦略はイタリアのパスタであり、日本の自動車・家電だった。麦農家を守るという大嘘を使って只管省益に励んだ農水省は亡国の徒とさえ言えよう。