俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

隕石

2013-03-15 09:37:43 | Weblog
 丁度1ヶ月前にロシアに落ちた隕石は日本人にとっては非現実的なものだった。大量に放映された映像は余りにも現実離れしていたのでまるで映画のシーンのようにさえ感じられた。しかしロシア人にとってはそうではない。こんなあり得ないことが現実になったことから少なくない人がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症しているらしい。
 この事件は、現在の科学では隕石落下事故を防げないことを実証してしまった。地上の特定の地点から発射されるミサイルの弾道なら予想できても、広大な宇宙のどこから飛来するのか分からない隕石にはお手上げだ。予防も予知も不可能だからその都度対応するしか無い。しかし隕石による被害は非常に稀な現象であっても、流星は毎日多数観測されている。燃え尽きなかった流星が隕石になるのだから、いつどこに落ちるのか全く分からない。
 こんな状況で原発の安全はどうやって守れるだろうか。非現実的なSFの話ではなく現実的な隕石襲来に備えて原発の周囲に迎撃ミサイル基地を作るべきだろうか。仮に最大限の投資をして最新の兵器を集積しても原発を隕石から守ることはできまい。
 結局、守れないものは作るべきではない、ということだろう。隕石によって破壊されても「運が悪かった」と諦められるもの以外は作るべきではない。隕石に対処できるほど科学文明が発達した時点で初めて人類は原子力を利用する資格を得るのではないだろうか。

遠近法

2013-03-15 09:01:56 | Weblog
 13日付けの「麦の関税」で農林水産省を酷評したが、これは国民として、国益を損なう農水省の隠蔽体質を非難したのであり、農水省を「悪の組織」として断罪した訳ではない。彼らは個人ではなく農水省職員として最大限の省益を得るために働いているだけだ。
 人は視覚だけではなく精神においても遠近法に縛られている。近くのものは大きく、遠くのものは小さく見える。従って最も大きいのは自分とその家族であり、次に大きいのは農水省関係者、一般の国民は遥か遠くの小さな存在に過ぎない。
 彼らはこう主張するだろう。
 私は最難関の国家公務員1種試験(旧:高文・・高等文官試験)に合格して高級官僚になったエリートだ。それにも拘わらず銀行やIT企業に就職した同窓生だけではなく地方公務員よりも安月給だ。これは不当なことだ。
 幸い農水省には多くの役得がある。これらは優秀な諸先輩が築き上げた農水省職員の財産だ。これらを死守することは農水省およびOBのために必須であり現役職員の重要な責務だ。
 小麦で得る省益は18,530円(ペーパーマージン)×570万t(年間輸入量)≒1,000億円に過ぎない。こんなはした金を、国民のために身を粉にして働く我々および特殊法人のために使って何が悪かろう。もしこの金を国民に還元しても一人当たりたったの1,000円だ。平成21年にバラ撒かれた定額給付金は一人当たり12,000円・総額2兆円だったが大した経済効果は無かった。それと比べて我々が毎年使う1,000億円は有効に活用されている。
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 もし開き直って正直にこう発表するなら私は文句を言わない。裏金を国民に隠蔽していること、そしてそれをマスコミが黙認していることを非難しているだけだ。隠さずに公表したらあとは社会が判断することであって私は関与しない。