俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

詐病

2013-03-22 11:01:56 | Weblog
 2018年4月から精神障害者の雇用が義務付けられるようだ。昨日(21日)、厚生労働省は障害者雇用促進法改正案をこの4月にも国会に提出すると発表したが、こんな法律は間違い無くザル法になり、精神障害者の雇用には全く結び付かないだけではなく医療財政を更に悪化させるだけだ。見直しが急務だ。
 精神障害者の大半は、脳波や心電図や血液を検査しても識別できない。自己申告に頼るしか無い。従って幾らでも詐病が可能だ。
 企業側としては、重度の障害者を雇って酷い目に会いたくないから、少しでも軽症の障害者を雇いたがる。ここで詐病者と企業の利害が一致する。詐病者は元々病気ではないのだから健常者と全く変わらない。企業としても限りなく健常者に近い障害者は大歓迎だ。こうやって精神障害者の雇用枠が埋められる。
 詐病者は2つの顔を使い分ける必要がある。企業に向けては健常者として、病院に向けては病人としての顔だ。
 主に2つの病気が選ばれるだろう。睡眠障害と鬱病だ。睡眠障害かどうかは同居する家族にしかチェックできない。従って「眠れない」と申告するだけで病人として認定される。鬱病も同様だ。鬱病らしい症状を訴えさえすれば鬱病と診断される。
 詐病が増えれば健康保険の無駄遣いも増える。元々必要の無い薬なのだから処方された薬はゴミ箱へと直行するだけだ。こうしてゴミまで増える。
 こんな馬鹿げた事態を招くのはルールが悪いからだ。雇用を義務付けるから企業も個人も抜け道を探す。雇用の義務付けではなく雇用を奨励して奨励金を支給するように改めればここまで酷いことにはなるまい。

異性の匂い

2013-03-22 10:32:21 | Weblog
 「パパは臭い」という言葉を使ったCMが幾つかある。可愛い娘から臭いと思われたくないのはどの父親にとっても共通の思いであり、娘に嫌われたくない父親は体臭を改善しようと心掛ける。しかし娘にとって父が、息子にとって母が臭く感じるのは良いことだ。近親相姦を防ぐために役立っているからだ。
 どんな動物にとっても親子や兄弟・姉妹を異性と感じることは好ましくない。近親交配が頻発するからだ。近親交配は種としても個体としても不都合を招く。
 種としては多様性を損なうことだ。多様性を欠いた種は変化に弱い。均質化した種は現在の環境に過度に適応しているために環境が変われば絶滅しかねない。多少バラついていればその変化に強い個体がいるので種としての絶滅を免れられる。
 個体としての不都合は劣性遺伝が発現してしまうことだ。「劣性」とは決して劣っているという意味ではない。最近では「不顕性遺伝」という言葉も使われているように、遺伝子が重ならない限り発現されない特性だ。人類では血液型のO型や金髪や一重瞼などが劣性遺伝だ。但し血友病や色盲のように不都合な遺伝もありこれらの場合は生存競争において不利だ。
 私は長年、なぜ動物界で近親交配が起こりにくいのか不思議だった。子供にとって最も身近な異性は親であり、近親交配を防いでいるのは年齢差なのかとぼんやりと考えていた。しかしこれでは兄弟・姉妹による近親交配を防げない。どうやら匂いに秘密があるらしい。本来、好ましい筈の異性のフェロモンが近親者の場合は不快に感じられるように本能に組み込まれているようだ。このことが最近、異性の汗の染みたシャツを嗅ぎ比べる実験によって確認された。
 自然界の仕組みの巧妙さに改めて感心する。そのために娘にはパパは臭く感じられるのだから、種族の繁栄のためと思って諦めるしか無かろう。