俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

機動力

2014-03-25 10:09:55 | Weblog
 機動力の優れた軍隊は強い。世界史上最大の領土を獲得したモンゴル帝国の主力兵器は馬だった。アジア全土だけではなく東ヨーロッパにまで領土を拡張した。
 ではなぜその最強のモンゴル軍が日本を攻略できなかったのだろうか。神風が原因ではない。機動力が使えなかったからだ。馬の強みは自ら移動できる兵器であることだ。陸続きであればこの強みが生かせるが海を渡るならこの長所が生かせない。馬は神経質で臆病な動物だ。馬を船で運ぶためには人間の10倍のスペースが必要なのではないだろうか。11万人の兵士を運ぶか、1万人の兵士と1万頭の馬を運ぶかの二者択一において後者を選ぶことは難しい。従って船で運べる馬の数は限られていた。これでは実力を発揮できない。元は負けるべくして負けた。所詮、陸続きの土地でしか通用しない戦法だった。
 こう考えれば日本にとって何が最も危険かは自ずと明らかになる。海を渡れる兵器だ。そしてそれはその600年後に実際に現れた。黒船だ。黒船は高速で移動して破壊力の高い大砲を持ち、当時の日本の大砲では破壊できない強固な装甲を備えていた。正に動く要塞だ。今度は日本が負けるべくして負けた。
 そして黒船から更に進化した戦艦を破ったのは皮肉なことに日本軍の航空隊だ。当時世界最強の戦艦だったイギリスの「プリンス・オブ・ウェールズ」と「レパルス」が空爆によって撃沈され、航空機という更に機動力の高い兵器の時代を迎えた。
 航空機の弱点は人間だ。人を乗せるから戦闘に特化できない。仮に技術的に可能であっても搭乗する人が耐えられない速度や機動力を持たせることはできない。この弱点を克服するためには人を乗せなければ良い。現代の最先端兵器はミサイルと無人機だ。人工衛星によるレーザー攻撃もあり得る。これらの共通点は人がそこにいないということだ。
 こうやって歴史を辿れば兵器の進化の方向性が理解できる。

糖質

2014-03-25 09:37:57 | Weblog
 子供の頃、私は甘いものが大好きな普通の子供だった。卵焼きにまで砂糖を入れたがるぐらいに甘い=旨いと思っていた。ところが20歳頃に突然、甘いものが大嫌いになった。甘さが嫌いなだけではなく匂いだけでも気持ちが悪くなった。長年これを飲酒による嗜好の変化だと思っていたが、最近ふと気が付いた、体に不必要あるいは有害だから嫌いになったのではないか、と。
 成長期の子供には炭水化物が欠かせない。炭水化物は成長のための必須栄養素だ。だから子供は甘いものが大好きだ。味覚が未発達だからではなく体が求めるからだ。ところが20歳を過ぎて成長を終えるとそれは有害物に変わる。成長のためのエネルギー源が成長に使われなければどうなるか、贅肉にしかならない。
 生体を維持するために必要なカロリーは呆れるほど少しで充分なのではないだろうか。象にせよ牛にせよ、殆んどカロリーの無い草だけを食べてあの巨体を維持している。最近でこそ牛に穀物を与えているがこれは太らせるためだろう。不自然なまでに太らせて肉を増量するために使われているのが穀物だ。
 勿論、牛の場合、消化管内の共生微生物がセルロースを分解してそれを吸収するのだから、人間がその真似をすれば栄養不足で死んでしまうだろう。
 14日に厚生労働省はカロリーに基づく食事摂取基準を見直してBMI目標値を提示した。読売新聞によると「運動による消費量の把握は困難」だからこれまでのカロリー量ではなく「体格数値を見て調整することを勧めている」とのことだ。これは嘘が得意な厚労省らしい誤魔化しではないだろうか。これまでの大原則だったカロリー論、つまり炭水化物と蛋白質が1ℊ当り4㎉、脂質が9㎉としていた基準が、実はその算出根拠も必要量も根本的に間違っていたから、一旦摂取基準を白紙に戻して時間稼ぎをしているように思える。
 私はこれまで基準にされていたカロリー主義を根底から疑っている。例えば蛋白質は4㎉/ℊとされているがこれは質の違いが考慮されていない。大豆の蛋白質は消化吸収されにくいからこそ豆腐や納豆や味噌などに加工されている。吸収率の違いを無視しても問題にならなかったのはこれが科学ではなくただのオカルトに過ぎなかったからだろう。機械ならエネルギーが満たされれば充分だが生体にとって最も重要なのは体の再生産のための栄養素でありカロリーではない。カロリー換算は誤った一元論だろう。近日中に更に根本的な問題に踏み込んで書こうと思っている。