俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

労働者

2014-03-27 10:06:05 | Weblog
 日本の技術者が退職後に中国や韓国に渡るケースが後を絶たない。これが日本からの技術流出になっていることは確実だ。しかし彼らに愛国心が無い訳ではない。むしろ日本の社会制度の犠牲者だ。
 技術者の価値は何か、当たり前の話だが技術力だ。ところが国内ではその技術力を生かせない。日本の企業が同業他社の退職した技術者を雇うことを紳士協定として禁じているからだ。これは引き抜き合戦を防ぐために有効であり、先端技術の担当者を過剰に優遇せずに済むというメリットもある。しかしこれは国内でしか通用しないマナーであって国際的に通用するルールではない。だから外国企業が退職者を雇って数年あるいは数か月で使い捨てにする。技術者こそ被害者だ。
 日本のルールは妙に高齢者に厳しい。アメリカでは認められていない定年制は問題にさえされず高齢者差別が横行している。定年後の移籍の自由さえ無いのなら老人に自由は無い。
 労働力確保のための外国人実習生も奇妙な制度だ。言葉も文化も違う外国人を雇うよりもずっと良い労働者が眠っているのに軽視されている。定年後の元気な老人こそ優良な労働力だ。これを活用すれば外国人に頼る必要は無い。
 老人は外国人実習生よりも多くの面で優れている。日本語が通じる、経験が豊富、経歴が明確等々、優越性は無数にある。流石に跳んだり跳ねたりすることは苦手だろうが通常の作業であれば決して見劣りしない。
 私自身は働かない老人だ。働かないのは能力が余りにも低く評価されているからだ。学生アルバイト以下の待遇で働こうとは思わない。正当に評価されるなら少しぐらいなら働くだろう。
 今働いている老人の多くは現役時代に充分に稼げなかった人だ。そんな落ちこぼれの人ではなく悠悠自適の人こそ人材だ。こんな人を活用できれば輸入労働者に頼る必要など無い。

カロリー

2014-03-27 09:38:43 | Weblog
 子供であれば食物摂取の目的は3つある。成長と新陳代謝とエネルギー源だ。大人は最早成長しないが、新陳代謝とエネルギー源の2つが必要だ。これをカロリーという一元論で考えることは、エネルギー論を猿真似した誤った考え方だ。
 機械であればエネルギーは動力としてしか使われないから一元論が通用する。しかし動物にとっての栄養は単なるエネルギーではなく部品交換の意味も併せ持つ。食物はエネルギー源であるだけではなくメンテナンスのための重要かつ唯一の素材だ。蛋白質と脂質と各種ミネラルは新陳代謝のための素材であり触媒だ。カロリー主義はこの視点を全く欠いている。
 必須アミノ酸と必須脂肪酸があるのに必須炭水化物は無い。これはどういうことだろうか。これらが新陳代謝のための必須栄養素だからだろう。生体の再生産のために使われる栄養素は体の一部になるのだから置換されて残りカスになった老廃物は排泄される。この過程において重量はプラスマイナスゼロになる。
 肉食動物の栄養の流れは分かり易い。栄養は代謝とエネルギー源の両方に振り分けられる。栄養が充分であれば代謝もエネルギーも満たされるし、不足であればどちらも満たされない。
 雑食動物の場合、少し複雑になる。炭水化物をエネルギー源にできるからだ。必要なエネルギー量を炭水化物で満たせれば、蛋白質と脂質の使用を代謝に限定することができる。
 人類はずっと食料に恵まれない動物だった。パワーもスピードも足りないのでいつも飢えていた。だからこの雑食という戦略が有効に機能した。蛋白質と脂質の不足を、炭水化物がエネルギー源となることによって補っていた。ところが突然、食料に不足しないという状況が到来した。これが肥満という文明病を招いた。
 西洋人の肥満の多くは蛋白質と脂質の摂取過剰が原因だが、日本人の場合は蛋白質と脂質が不足した状態での炭水化物の過剰摂取だ。だから西洋人型の肥満ならカロリー制限が有効だが、日本型の肥満でカロリーを制限すれば蛋白質と脂質が更に不足するということになる。
 カロリー制限をするなら代謝に必要な栄養素を別枠にする必要がある。代謝のために必要な栄養素を確保した上で、それ以外のカロリーを制限しなければ無意味だ。カロリー制限という一元論は西洋人には有効であっても炭水化物依存型の日本人には有害だ。