俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

飛び道具

2015-01-17 10:19:43 | Weblog
 男女の運動能力で最も差が大きいのは投擲力ではないかと思う。大半の女性は肩と肘と足腰そして手首を連動させて上手く投げることができない。ソフトボールの日本代表級の選手でさえスローイングはぎこちなく、草野球の男性のほうがずっと上手く投げる。子供の頃、スローイングが下手な者を「女投げ」と馬鹿にしたものだ。
 この男女差は多分、異なる役割を担う中で違う方向に進化したからだろう。狩りにおいて投擲ほど有利な戦法は無い。安全な場所に身を置いたまま一方的に攻撃できるからだ。初期の人類は石を投げ、その後、槍を投げることを学習したのだろう。この時代はかなり長く続いたと思われる。だからこそ男女の投擲力にこれほどの差が生まれたのだろう。
 チンパンジーやゴリラでさえ上手く投げることはできないようだ。むしろイルカのほうが器用にキャッチボールをする。
 手裏剣は日本独自の武器だろう。忍者が外国人に人気があるのも手裏剣という摩訶不思議な武器を使うからではないだろうか。外国ではせいぜいナイフ投げだ。映画の「荒野の七人」にはジェームズ・コバーン扮するナイフ投げの名人が登場するが、実際にナイフ投げが使われることは殆んど無く所詮サーカスの出し物に留まる。動物相手ならともかく、人間相手でのナイフ投げには大きな弱点がある。武器を手放すからそれで致命傷にできなければ相手に武器を渡すことになってしまう。こんな欠点があるから投擲は弓に取って代わられた。弓は威力も射程距離も投擲を遥かに上回るから世界中で様々な改良が加えられた。
 自分は安全な位置にいて相手を攻撃することはどの時代においても最も有利な戦法なので、弓から鉄砲を経て大砲へと進歩した。ペリーの黒船が江戸の住民を恐怖に陥れたのは、沖から大砲で攻撃できたからだ。日本の大砲では届かない位置から一方的に攻撃するのだから幕府の武器では戦いようが無かった。現代を代表する飛び道具は無人攻撃機プレデターとミサイルであり、相変わらず最強の兵器であり続けている。
 

有給休暇(2)

2015-01-17 09:42:11 | Weblog
 厚生労働省は有給休暇の取得率を高めるために、企業側に有給休暇取得の時期を指定させる方針らしい。全くお役所的発想だ。土日祝日が休日の企業しか想定していないようだ。年中無休の企業は沢山ある。小売業や交通機関や遊戯施設、あるいは公務員でも警察や消防は年中無休だ。休まない企業の従業員は交代で休んでおり、この勤務シフトに有給休暇を組み込むことは容易ではない。
 コンビニを例にしよう。フランチャイズ店であれば、オーナーと雇われ店長とアルバイトが主要メンバーになるだろう。オーナーは主に2つのことを店長に要求する。増収と人件費削減だ。店長の立場は辛い。一瞬たりとも販売員0にはできないのだから自らが穴埋め役を務めることが少なくない。こんな状況で自分の有給休暇を組み込めるだろうか。有給休暇にした日はタテマエ上では休日なのだから穴埋めのための出勤の時間外手当さえ受け取れないことになるだろう。これでは無休だけではなく無給ということになる。
 役人は机上の空論のために無駄な時間を使わずに現実を知るべきだ。1週間コンビニで働いてみれば労働の実態が少しは分かるだろう。厚労省のデータでは有給休暇の取得率は48.8%とのことだが、あるアンケートでは殆んどあるいは全く有給休暇を取得できない人がほぼ半数を占めている。もし両方共に正しければ、日本人は有給休暇取り放題の人と殆んど取れない人に二極化していることになる。これでは賃金差以上に酷い格差社会だ。
 そもそもなぜ厚労省は有給休暇の取得率を高めようとするのだろうか。ただ単に自分達が仕事をしているとアピールしたいだけなのではないだろうか。こんなくだらない理由で振り回される労働者こそ迷惑だ。必要なのは労働条件の改善であり企業に労働基準法を順守させることだ。
 ではどう解決するのか。ルールに現実を合わせるのではなく現実にルールを合わせれば良い。休めないという現実を踏まえてそれを賃金に反映させるべきだ。つまり使えなかった有給休暇を日当の25%増しで企業に買い取らせるべきだ。休んでも給与が支払われるのが有給休暇なのだから、使えなかった人にその対価が支払われるのは当然のことではないだろうか。こういうルールであればコンビニの店長が人件費削減のために有給休暇を取得するというモチベーションも起こり得る。自分が休んで誰かを勤務させたほうが店の人件費削減になるからだ。企業側も負担増を避けるために本気で有給休暇の取得を奨励するだろう。
 役人は今でも靴に足を合わさせようとする。改めるべきなのは足ではなく靴だ。現実に基づいたルールを定めるべきであり現実に背いたルールなど百害あって一利無い。役人によるスタンドプレーは国益を損なう。