俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

中立

2015-12-10 10:30:47 | Weblog
 意見において中立などあり得るだろうか。偏向はあり得るが中立などあり得ない。強いて言えば、偏向度が低いということが最も中立に近い。しかしこれは中立ではなく「無立」だろう。
 私自身、中立の記事など書いた覚えが無い。何らかの立場に立脚している。個人の意見が偏っているのは当然だ。偏りの無い意見は内容も無い。
 マスコミの立場は違う。事実を伝える義務がある。もし左右両派がデモをすれば両方を報じるべきであり、片方だけを報じることは情報操作だ。
 政党の代表による政治討論会は無理に中立であろうとして却って不公平になっている。与党2党に対して野党は10党ぐらいあるから対等に発言すれば野党の発言時間が大半を占めることになる。議席数に応じるなどの配慮があるべきだろう。
 新聞各紙が中立を装う必要などあるまい。朝日と毎日が左寄りで読売と産経が右寄りであることなど予め分かっている。読者が自分で補正して読めば済むことだ。
 私はマスコミに中立を求めない。公正さのみを求める。不都合な事実を隠蔽しないことを求める。都合の良い情報なら大きく、都合の悪い情報なら小さく扱っても構わない。隠蔽さえ避けていればそれで充分だ。最悪の偏向は何をどう報じたかではなく、何を報じなかったかだ。報じられなかったことについて庶民は知ることができない。
 中国共産党のやり方は徹底した隠蔽だ。中国国内では天安門事件について調べても何も見つからないそうだ。私は中国共産党に中立であることなど求めないが、事実を隠蔽して「由らしむべし知らしむべからず」とする姿勢には我慢ならない。あの歴史大国が歴史貧国に堕したことに怒りを覚える。
 このことは日本のマスコミについても言える。あれほど地球温暖化については騒いでいるのに「クライメートゲート事件」は無視されている。マスコミがこの事件について報じた例を殆んど知らない。朝日新聞はたった1段のベタ記事で掲載したが余りにも小さい記事だったために切り抜いた記事を紛失してしまった。クライメートゲート事件をグーグルで検索しても「ニュース」のカテゴリーではたった18件しかヒットしない。しかも新聞・テレビは皆無だ。情報操作ではないだろうか。
 あるいは安倍首相を訴えた菅元首相が3日に敗訴したことも殆んど報じられなかった。首相と元首相による原発事故を巡る名誉毀損の裁判なのだから充分に注目に値すると思うのだが、名古屋本社版の朝日新聞では第二社会面のベタ記事扱いだった。

 

禁止

2015-12-10 09:53:10 | Weblog
 マスコミは「これは差別語、あれも差別語」とばかりに放送禁止用語を粗製濫造しているが全く片手落ち(放送禁止用語)としか思えない。民放は今尚平気で「イスラム国」と呼んでいる。エジプト政府が世界中のマスコミに「イスラム国」という呼称を使わないように訴えているが無視されている。
 「イスラム国」ほど偏見を助長する名称は無い。まるでイスラム教が邪教であるかのように思わせる。勿論、国でもない。勝手に詐称しているテロリスト集団を国と呼ぶべきではない。NHKのようにISと呼ぶべきだ。もし国内のテロリスト集団が「正しい仏教」と名乗ったらそのとおりに呼ぶだろうか。アルカイダは「拠点」という意味でタリバンは「学生」という意味らしい。これらは翻訳しないのにIslamic Stateだけを和訳することには悪意さえ感じる。
 障害者に対する過剰な配慮と国内では少数者であるムスリム(イスラム教徒)に対する人権無視は余りにもアンバランスだ。
 「将棋倒し」は放送禁止用語で「玉突き事故」は許容されている。このアンバランスの原因は、将棋連盟は文句を言いビリヤード協会は黙認しているかららしい。要するに文句を言うグループにだけ配慮するということだ。
 これは公園の禁止事項と似ている。住民からのクレームがある度に禁止が増える。「漫才の練習禁止」と表示している呆れた公園もあるそうだ。お役所の事勿れ主義が禁止条項を増加させる。
 ドラマで喫煙するシーンを殆んど見掛けない。そんなシーンを使うと禁煙団体から抗議されるかららしい。
 マスコミが自粛するのは勝手だがこれが困ったことを招く。放送倫理においてお墨付きを得たグループはその基準を普遍倫理として社会に押し付けようとする。同性愛者はネガティブな発言者を吊し上げるし、一部の妊婦が何でもマタハラと因縁を付けるから彼女らと同一視されたくない妊婦がマタニティマークを付けたがらないという奇妙なことまで起こっている。被害者に対する過剰な配慮のために痴漢だけが「推定有罪」という異常なルールになって冤罪の温床になっている。声の大きい人の権利ばかりが拡大する。
 自らを正しいと信じる人は不寛容だ。他人を自分の信条に従わせようとする。こんな連中は気に入らないことを禁止させることに喜びを感じる。させない権利がこんなに拡張したのは、ファッショ的とさえ思える煙草狩りが成功してからではないだろうか。
 志摩市の萌えキャラクターの碧志摩メグが非公認になったことに続いて美濃加茂市では地元の高校を舞台にしたアニメ「のうりん」の良田胡蝶を使ったポスターが撤去された。少女漫画のような可愛い碧志摩メグとは違って美濃加茂市のキャラクターはエロ漫画系の絵でありこちらが否定されるのはある程度やむを得ないと思う。
 なお碧志摩メグの公認撤回について他県の人は知らないと思うので少しだけ書く。志摩市が海女を対象にしたアンケートでは7割が肯定的で反対は3割だったらしいから結果的には少数決だ。企画会社の側が辞退したから非公認になった。我儘な少数者が騒ぎを起こせば事勿れ主義のお役所側が折れるので理不尽な要求が通るという事例が頻発している。クレイマーやモンスターが市民権を得て跋扈する変な社会だ。