俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

歯原病(2)

2015-12-31 10:40:44 | Weblog
 動物の免疫力や自然治癒力は数億年に亘る進化の賜物だ。たまたまそんな能力を獲得した種が世代を繋ぎ更に進化を遂げた。適応は進化を通じて獲得されるから、進化を促す状態がある程度長期間続かなければ新しい能力は定着しない。
 動物は様々な変異を通じて進化した。現存する動物は総て適応体であり現在の環境に適応している。免疫力も自然治癒力もあくまでこれまでの環境に対する適応でありそれ以外の状況に対しては驚くほど無力だ。
 例えば破傷風という感染症がある。無傷の状態であれば破傷風菌の侵入を許さない防疫機能によって防御されている。皮膚からも目や口からの侵入も容易ではない。しかし傷口から破傷風菌が侵入すれば忽ち危険な状態に陥る。外部にある時とは違って、一旦内部に入ってしまえばそこでの防疫力は余りにも無力だ。
 傷口という言わばありふれた状況でさえ防疫力が無力化される。もし傷口が開いたままであれば破傷風菌以外の様々な病原体の猛攻を受けることになる。だからそれを防ぐために傷口は速やかにカサブタによって遮蔽される。免疫力はそれまでに侵入を許してしまった病原体とのみ戦いその残骸が膿になる。
 傷口と同様に危険なのは消化器だ。毎日大量の異物を受け入れその中には病原体も含まれる。これを防ぐ第一関門が胃だ。胃からは胃壁まで消化してしまうほど強酸性の胃液が分泌され大半の病原体は死滅する。第二の関門は腸だ。腸には全身の6割を占めるほどの免疫細胞が集中しており、胃酸による攻撃を潜り抜けた病原体を総攻撃する。
 動物の体はこうやって病原体の侵入を阻止しているが傷口からの侵入は比較的容易だ。もし自然治癒力が働かない傷口があれば病原体の侵入がフリーパスになってしまう。本来であればそんな異常事態は起こらない。進化を通じてそれは防止される。
 野生動物に虫歯は無い。人類と家畜とペットだけが患う奇病だ。この原因は炭水化物であり、炭水化物だけが哺乳類の歯を破壊する。虫歯は動物の数億年に亘る進化史の中で一度も起こらなかった異常事態だ。だから当然、歯には自然治癒力など備わっていない。
 虫歯だけが自然治癒されないからそれが病原体の侵入口になる。原因不明とされている病気の多くが歯原病なのではないだろうか。原因不明だからこそ不治の病となっている生活習慣病の多くが歯原病であるならこれは朗報だ。原因である歯を治療すれば結果である生活習慣病も治療できるということになる。虫歯からの病原体の侵入についての今後の研究に期待したい。

脂と塩

2015-12-31 09:45:44 | Weblog
 日本人に忌み嫌われている2つの栄養素、脂質と塩分について疑問を持っている。脂質は肥満の元、塩分は高血圧の原因とされているが本当だろうか。
 脂質に対する誤解はカロリー論に基づく。蛋白質や炭水化物のカロリーが1ℊ当り4㎉に対して脂質は9㎉だ。このことだけを捕えれば脂質は高カロリーでありいかにも肥満の原因になりそうに思える。しかしカロリー源としてしか使えない炭水化物と同じ尺度で測ることは余りにも不合理だ。汎用性がある脂質や蛋白質をカロリーという尺度だけで評価すべきではあるまい。実は、脂質に次ぐ高カロリー食品はアルコールで1ℊ当り7㎉ある。しかしアルコールのカロリーは総て消費されて体内に蓄積されることは無い。
 もし米100万円分と現金100万円を持っていれば、汎用性のある現金はすぐに使ってしまうが、米100万円分を使い切ることは簡単ではない。100万円という同じ価値であっても用途が多ければすぐに使い切られるように、用途が広い脂質や蛋白質は先に本来の用途で使われてしまうから余って脂肪として蓄えられる可能性は低い。糖質制限食の実践者はカロリーを殆んど気にせず炭水化物の摂取量だけを制限することによって簡単かつ健康的に減量しているそうだ。カロリー論は根本的に間違っているのではないだろうか。
 塩分が嫌われるのは過去の食生活に対する反省からだ。かつての日本人は塩辛いおかずとご飯に味噌汁という食生活だった。これを改めることによって高血圧症が激減して寿命も飛躍的に伸びたとされている。
 このことは事実だろう。しかしその解釈には異存がある。通説では塩分を減らしたことが奏功したとされているが、全く違った解釈が可能だろう。塩辛いおかずを減らせば人には2つの選択肢がある。ご飯の量を減らすかおかずの種類を増やすかだ。どちらを選んでも良かろうが、特に後者は確実に有益だ。塩分摂取量を減らしたから成功したのではなく、それまでの単に栄養バランスが悪いだけではなく明らかに栄養価の低い食事から脱皮して食材を豊富にしたからこそ顕著な効果が現れたのではないだろうか。塩分を減らしたことではなく、豊富な食材こそ重要な要因だろう。
 世界一塩分摂取量が多いと言われる日本人が世界一長寿なのだから、塩分有害説を見直しても良かろう。確かに塩分を短時間に大量に摂取すれば健康を損なうがこれは根拠としては余りにも薄弱だ。水でさえ過剰に摂取すれば水中毒を起こす。特殊な体質の人以外は塩分を目の敵にする必要などあるまい。