俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

育児休暇

2015-12-27 10:46:50 | Weblog
 出典が分からないために正確な話ではなくて申し訳ないが、中国か朝鮮に非常に優秀な将軍がいた。戦えば連戦連勝で敵国からも恐れられていた。ところがある日、任務を放棄して田舎に帰ってしまった。母が重病を患ったからだ。将軍を失った軍隊は負け続けた。
 正確な話を知っていれば教えてほしいのだが、大体こんな粗筋だ。これは忠と孝について考えさせられる話だ。将軍は忠よりも孝を選んだがそのために多くの兵士が殺され国は危機に瀕した。私はこれを賢明な選択とは考えない。
 こんな話を思い出したのは自民党の宮崎謙介衆院議員が育児休暇を取ると発表したからだ。このことの是非を問うためには議員という仕事をどう位置付けるかが重要だ。もし議員が常在戦場とも言うべき激務であれば寸暇を惜しんで働くべきだろうし、「気楽な稼業」であれば労働者としての権利を行使すべきだろう。
 この件に関して谷垣幹事長の発言が興味深い。「出産や育児の休暇は雇用主と雇用されている人との関係で規定されている。国会議員はそういう身分関係と違う。(朝日新聞12月22日)」私は谷垣幹事長とは逆に「そういう身分関係」だと思う。雇用主は国民であり国民が是非を判定すべきだろう。
 宮崎議員は育児休暇が夫としての義務あるいは権利であると堂々と主張すれば良い。しかし「公僕として粉骨砕身働く」とは言えない。仕事と家庭の両立という崇高な理想を唱えるべきだ。このことに対して判断をするのは雇用主である有権者だ。
 サラリーマン時代「仕事よりも家庭が大事」と公言して憚らない先輩がいた。労務関連の仕事に長く従事していたこともあり、周囲のワーカホリック気味の人々とは多少違った発想をするしその飄々とした仕事ぶりもあって一目置いていた。ところがたまたま一緒に仕事をすることになるや、とんでもない人だと分かった。面倒な仕事は総て他人に押し付けるし徹底的に責任逃れを図る。家庭を大切にする人格者がなぜこんなに卑怯なのかと驚いた。しかし考えてみればこれは当然のことだ。家庭を守るために仕事上では自分を守らねばならない。家庭というegosを守りたいegosistだった。
 終身雇用を前提とするサラリーマンと不定期雇用者である政治家は立場が異なる。終身雇用であれば雇用期間中に様々なライフステージを迎える。結婚・育児・介護といった状況に多くの人が遭遇する。企業側が雇用し続けたい人材であればこそ、企業にとってはデメリットであるこれらのライフステージを許容する。要らない人であればこの際、切り捨てたいということが本音だろう。
 育児休暇の是非を決めるのは我々ではない。京都3区の有権者だ。家庭と仕事の両立を図る立派な人と考えるなら当選させれば良いし、片手間仕事の無責任な政治家と考えるなら落選させれば済むことだ。これは実際の仕事ぶりを知っている選挙区の有権者が判断することであって、仕事ぶりを知らない余所者がとやかく言うべきことではなかろう。政治家の育児休暇の問題は一般論にはせず、個々に判断すべきでありそれを決めるのは雇用主である有権者だ。

歯原病

2015-12-27 09:52:24 | Weblog
 虫歯は文明病だ。不自然な生活をしているからあらゆる動物の中で人類だけが虫歯を患う。サメは歯の再生力(自然治癒力)を持っているから歯を傷めても何度でも生え替わる。しかし哺乳類の歯には自然治癒力が備わっていない。虫歯にならないのだからそんな能力など必要なかった。
 人類だけが虫歯になるのは、動物の進化を無視して不自然な食物を常食しているからだ。野生動物の食物は植物と動物であり所謂「炭水化物」(食物繊維は含まない)を食べる動物は鳥か昆虫だけだ。どちらも歯を持っていない。人類は歯がありながら炭水化物を食べるから虫歯になる。
 子供の頃「甘い物を食べると虫歯になる」と教えられたと思うがこれは正確ではない。「炭水化物を食べると虫歯になる」が正しい。虫歯の原因になるのは炭水化物だ。このことは考古学によっても裏付けられている。農耕以前の人類には虫歯が無かったとのことだ。農耕によって米や麦などの穀物に頼るようになってから虫歯という奇病に人類が悩まされることになった。
 実は人類以外に虫歯を患う動物がいる。それは家畜とペットだ。本来であれば摂食しない筈の炭水化物を人類と同じように大量に摂取するから人類特有の奇病を彼らも患うことになってしまった。
 口腔内には約100億個の細菌が棲んでおり、大半の病気は経口感染する。動物の体はこれらの侵入を防ぐために胃と腸に防疫機能を備えている。ところが口腔内に傷口があれば防疫システムが備わった消化器を経由せず直接体内に病原体が入ってしまう。動物の進化においては手つかずのままだった新たな感染経路が虫歯などの歯周病によって作られてしまった。本来起こる筈の無いことが起こったのだから人体はこれに殆んど抵抗できない。農耕を始めて以降の人類だけが持つ歯周病の傷口から侵入する病原体に対抗できるシステムなどどの動物にも備わっていない。口腔から直接病原体が侵入するような異常事態は数億年に亘る進化史の中で初めて起こったことであり、それに対応できる防疫体制を作るような進化などこれまで一度も無かった。だからこそ人類だけが生活習慣病などの奇病を患うことになる。これを「歯原病」と呼んで差支え無かろう。原因不明のまま対症療法に終始している生活習慣病の多くは歯原病だろう。生活習慣病が不治の病となっているのは、医学と歯学が分断されているからではないだろうか。
 私は肥満の原因は炭水化物だと考えている。汎用性のある蛋白質や脂質とは違って炭水化物はエネルギー源にしかならない。しかも安価であるために大量摂取され勝ちだからエネルギーとして使い切れない分は脂肪として体内に蓄積される。
 虫歯と肥満、そして歯原病の原因となる炭水化物の摂取量を減らして、蛋白質と脂質と野菜を食生活の中心に据えるべきだと私は考える。ご飯やパンに依存する食事は断じてヘルシーではない。糖質制限は減量のためだけではなく、歯の健康、更には歯原病の防止のためにも有効だろう。