俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

漁民

2014-11-21 10:13:18 | Weblog
 中国漁船による小笠原諸島・伊豆諸島・五島列島等の近海での違法操業に対して怒りを感じる。彼らは最早、漁民ではなく海賊だ。中国は犯罪まで輸出するな、と言いたくなる。
 しかしその一方で彼らに同情する。彼らは地元では仕事にならないから遠くの海まで出漁せねばならないのだろう。誰でも違法操業で捕まりたくないし遠隔地で働きたくない。増してや台風の接近中に危険を冒してまで操業するなど狂気の沙汰だ。そうせざるを得ない事情があるからだろう。
 中国の近海では魚が獲れないらしい。原因は2つある。①漁民による乱獲②海洋汚染。①は国による規制が不充分だったとは言え、言わば自業自得だ。しかし②については漁民の責任ではない。国による工業優先策によって漁場を破壊されて漁獲できなくなった漁民は被害者だ。福島の漁師と同じようなものだ。
 中国には戸籍が2種類あるそうだ。都市戸籍と農村戸籍だ。農村戸籍の人は教育の権利も制限され職業選択の自由まで奪われているらしい。農村戸籍の人の収入は都市戸籍の人の1/10程度らしい。だから日本の10倍の人口がありながらGDPは2倍程度しか無い。つまり一人当たりのGDPは日本の1/5しか無い。アメリカよりも酷い格差社会だ。中国とは市民と農奴の2階級にに分断された階級社会あるいは奴隷制社会だ。
 中国は元々農業国であり漁業は盛んではなかった。水産物の消費量は、30年前なら世界の1割程度だったが今では3割以上を占める。これは近年増えたと言うよりもこれまでは少なかったということだ。古来、中国の主要都市は北京、南京などのように内陸に位置する。これは主要都市の殆んどが沿岸にある日本とは顕著に異なる。漁民の地位は多分最も低い。農民には土地があるが漁民には海と船しか無い。貧しい漁民は生きるためには何でもやらざるを得ない。生きるために命懸けで働かねばならない。彼らをここまで追い詰めたのは中国共産党だ。彼らは共産党による悪政の犠牲者であり決して好き好んで海賊になった訳ではない。悪政のために山賊になった「水滸伝」の豪傑のようなものだと思えば彼らによる犯罪にも少しは同情できるだろう。

政治家

2014-11-21 09:35:08 | Weblog
 18日の経済財政諮問会議で安倍首相は「エネルギー価格の高止まりで」と発言した。なぜマスコミがこの発言を批判しないのか分からないが明らかに間違った現状認識だ。こんな誤解に基づいて政策を決められては困る。安倍首相は外遊で忙しかったから国内事情に疎くなっていたのかも知れないが、原油価格が暴落していることぐらいは知っておくべきだろう。
 政治家は事実に基づいて考えない。たとえそれが偏見だと分かっていても都合の良い嘘であれば利用しようとする。だから空手形に過ぎない薔薇色の未来を平気で約束する。
 彼らの最優先課題は次の選挙で当選することだ。そのために有利になることであれば何でも利用する。昔から言われているとおり、猿は木から落ちても猿だが選挙で落ちた政治家は政治家ではなくなるからだ。彼らの本性は男芸者であり風見鶏だ。彼らは20年後に批判されることを恐れない。その頃には引退しているからだ。だから現在と未来が対立すれば迷わず現在を選ぶ。延々と現在を選び続けたから国の借金は1000兆円を超えるまでに膨らんだ。これは次世代へのツケ回しだ。政治家の大衆迎合ぶりは「パンとサーカス」の時代から少しも進歩していない。政治家とは未来を食い潰す妖怪のようなものだ。
 彼らは二枚舌だ。日本の少子高齢化を問題視してもやろうとすることは全く逆で育児が困難な社会を作ろうとする。労働力の不足を女性労働力で埋めようとする。専業主婦を貶めて低賃金労働者を増やせばますます出生率は下がるし賃金は安値で安定する。女性労働者が増えれば男性の賃金も下がる。女性の社会進出を奨励するのは女性の社会的地位の向上のためではなく、女性に過度な負担を押し付けて安価な労働力を拡充するためだ。
 女性労働者が増えれば養育環境が悪化するので次世代は質・量ともに低下する。次世代が不幸になろうとも現在が豊かであれば構わないと考えるのが政治家だ。彼らには愛国も憂国も欠けている。勿論、一番悪いのはこんなポピュリズム政治家を選ぶ国民だ。

非戦論

2014-11-19 10:16:11 | Weblog
 戦争を肯定する気は無いが、非戦あるいは避戦が常に正しいとは限らない。第一次世界大戦後、ナチス・ドイツはベルサイユ条約を無視して侵略戦争を始めた。周辺諸国は第一次世界大戦後の厭戦気分が強かったためにナチスによる暴走を放置し、このことがナチス・ドイツの強大化に繋がった。これはあくまで結果論だが、早い時期に英仏などがドイツを攻撃していれば第二次世界大戦には至らず、局地戦で終わっていただろう。
 現在そんなジレンマを抱えているのがトルコだ。隣国のシリアで「イスラム国」が勢力を拡大しつつある。トルコは介入すべきかどうか非常に難しい決断を迫られている。介入しなければ自国にも及びかねない侵略を黙認することになる。介入すれば「イスラム国」との戦争やテロが避けられない。できれば介入せずに済ませたいというのが本音だろう。自らは手を下さず欧米が鎮圧してくれることを期待したいところだろう。
 クルド人問題を含めるともっと複雑になる。独立国を持たない民族として最大の人口を擁するクルド人は、イラン・イラク・シリア・トルコなどに約三千万人が居住する。トルコ国内のクルド人にとって「イスラム国」によるクルド人虐殺は見逃せない。トルコのクルド人は「イスラム国」との即時開戦を要求している。民族による温度差は顕著だ。
 朝鮮戦争はまだ終わっていない。現在はあくまで休戦状態だ。戦闘が勃発した時、日本はどうするべきだろうか。左派も右派も不介入を主張するだろう。左派は憲法9条を盾に、右派は嫌韓感情に基づく。両者も合わせれば国民の9割ぐらいが不介入を支持するだろう。理念としての平和主義は正しい。しかし現実としてはどうだろうか。隣国での戦争に知らぬふりをすることが正当とは思えない。
 国内での暴力なら禁止できる。それは警察という暴力装置を国が独占しているからだ。戦国時代に信濃国と甲斐国が闘っても誰も止められなかった。織田・豊臣・徳川による天下統一によって初めて地域間での戦闘が禁じられた。現代の国連にそんな権限は無い。ウクライナの紛争でさえ収拾できない。そんな状況での非戦論は空念仏に過ぎない。他国の惨事を無視することは決して平和主義ではない、事勿れ主義だ。
 

誤診

2014-11-19 09:41:44 | Weblog
 自分が受けている治療に疑問を持った患者は他の医師によるセカンドオピニオンを求めるだろう。その時、異なった診断をされてそれに納得すれば鞍替えをするだろう。以前の医師にそのことを伝えることはあるまい。するとその医師は誤診に気付けない。来なくなった患者は治癒したものと勝手に思い込んでその後も同じ誤診を続けることになる。これは医療システムとしての大きな欠陥だ。間違った医療が放置される。
 こんな恐ろしいことが医療、特に精神医療では頻発しているのではないだろうか。鬱病は10人に1人、統合失調症は100人に1人の割合で発病すると言われているが、現在治療中の人はそれぞれ百数十万人および70万人ほどらしい。しかしこれらの患者は正しく診断されているのだろうか。統合失調症の患者数が多過ぎるように思える。
 薬は怖い。薬は人体に異常反応を起こさせる劇物だ。しかも薬の効果とは実は異常反応を起こさせるということに他ならず、降圧剤が健常者に投与されれば低血圧症状になる。同じように抗精神病薬を投与された健常者は精神異常状態になるだろう。薬の効果とは異常を正常に戻すことではなく異常にさせることだ。異常を異常にすることによって正常にしようとしているだけだ。罷り間違えれば更に悪化させてしまうし、正常者を異常者にすることもある。
 抗鬱剤の最大の副作用が欝状態の重症化であることは割と知られているが、統合失調症の「治療薬」の副作用は余りにも多過ぎてどれが病状の悪化でどれが副作用なのかさえ分からないのが現状だ。だから副作用の症状が現れても更に投薬量が増やされることもある。症状は悪くなる一方であり、このままでは廃人にさせられてしまう。
 誤った診断と治療による医原病を防ぐことが急務だ。一番必要なことは医師に誤診を知らせることだろう。患者や他の医師が誤診を指摘しても多分、納得しないだろう。だから医原病の疑いがあれば公的機関に報告することを総ての医師に義務付けて公的機関を通じて改善勧告をすべきだろう。手術の失敗であれば結果から判定できる。しかし精神病などの治療の失敗は殆んどが闇の中に葬られている。
 医師による通報の目的は医療技術の向上であり、公的機関による懲罰が目的ではない。しかし勧告にも拘わらず誤診を繰り返す医師がいれば、再教育や資格停止などを科することも必要になるだろう。

ホステス

2014-11-17 10:32:14 | Weblog
 銀座のクラブでアルバイトをしていたという理由で大学生が日本テレビのアナウンサーの内定を取り消された。何たる職業差別か!マスコミは何様のつもりなのだろうか。ホステスが女給だから悪いのなら芸能人などだ。芸能人ならチヤホヤするのにホステスなら賤しい職業と考える感覚が理解できない。ホステスの一部が売春紛いのことをしているのは事実だろうが、芸能人による「枕営業」も公然の秘密だ。差別したいのなら公平に差別すべきだろう。
 ホステスを蔑視する人は多分、碌でもない店しか知らないのだろう。スケベ話でしか盛り上がれないような低レベルのホステスしか知らないからそれと同一視して蔑視するのだろう。一流店のホステスは才色兼備の才媛にしか勤まらないことを知らないからこんな偏見を持つ。
 水商売だけではなく風俗店も近頃では凄まじくレベルが上がっているらしい。昔のように股を拡げれば稼げるような低レベルの仕事ではなく、知性や気配りなどが要求される。風俗店で売る商品は自分自身だけだ。だからこそ単に容姿だけではなく知性も含めた全人的魅力が求められている。これは一方では困ったことでもある。何の取り得も無い女性のためのセーフティネットが無くなったということだ。
 私自身ホステスと付き合ったことがある。短大卒業後しばらくOLをしてからホステスとして働いていた。美人であるだけではなく話術も巧みだったし多芸多才だった。私が他人に自慢できることはカラオケと水泳ぐらいしか無いが、悔しいことにどちらも彼女には負けていた。今では女医だ。
 風俗店でアルバイトをしていた女医も知っている。彼女は学生時代に学費を稼ぐために働いていたそうだ。私立大学の医学部の授業料は高い。これを稼ぐためには長時間労働が必要になり学業が疎かになりかねない。風俗店なら他のアルバイトと比べて時間給が際立って高いし、勤務時間も自由に選べるので、仕事と学業を両立することできたとのことだ。
 たまたま私は優秀な元ホステスも元風俗嬢も知っているので、こういう職業に就く人を蔑視する人の人格を疑う。多分彼らは賤しい欲望しか持っていないのだろう。賤しい目でしか見ないから相手が賤しく見える。ニーチェ曰く「豚の目で見れば一切が豚になる。」(「ツァラトゥストラ『新旧の表』」より)

デマ

2014-11-17 09:50:01 | Weblog
 未来について考えられるのは人類だけだ。動物には過去と現在しか無い。原始的な動物であれば過去さえ無く、本能に基づいて現在に対して反応するだけだ。記憶という機能を持っていなければ経験によって「学習」することはできない。学習できるのは記憶力が備わった高等動物だけだ。
 環境が安定していれば本能だけで生きられる。眼前の出来事に、予め備わった本能で対応すれば、適者は生存し不適者は淘汰される。こうして環境に適応できた原始的動物が今でも圧倒的多数、生存している。
 学習できる動物であればもっと生存の可能性が高まる。環境が変化しても試行錯誤を経て適応行動が選択される。
 人類のみが経験に基づいて未来を予測しそれに基づいた行動を選択できる。眼前のことに振り回される人は原始動物の知的レベルであり、過去に囚われて未来志向ができない人は記憶力を持つ動物のレベルだ。脳は多重構造を持っている。
 文明社会であれば情報を共有できる。身近な人だけではなく地球の裏側の数千年昔の人の知恵まで借りることができる。しかし残念ながら時間的制約があるので得られる情報量には限界がある。だから良い情報を得るために真っ先にすべきことはくだらない情報を遮断することだろう。
 娯楽と称してくだらない情報が溢れ返っている。困ったことには事実よりも嘘のほうが面白い。事実は大半が平凡な話であり何の面白味も無いが、嘘であれば読者・視聴者を喜ばせる要素に満ちている。フィクションは人の関心を引くように脚色できるので必然的に事実よりも面白い。 
 朝日新聞による従軍慰安婦の強制連行という嘘はその典型例だ。ショッキングな内容だけに強烈な印象を与えた。私もかなり長い間、騙されていた。しかし知識を統合すればこのフィクションの矛盾に気付く。当時の朝鮮は日本の一部であり公娼制を認めていた。プロがいるのに重要な任務をアマチュアに任せることなどあり得ない。売春にも高度な技術が必要だということを理解しようとしない人はこんな矛盾にさえ気付かない。これは全日本の代表チームに高校生を使うようなものだ。絶対におかしいと思っていたら、案の定、今年になってようやく嘘であることを認めた。
 未来を考えることができるのは人間だけだが、嘘をつくのも人間だけ、それも文明圏の人間だけだろう。昔の西部劇では「インディアン、嘘つかない」という言葉がしばしば使われていたがこれは「白人は無いことを言うが」の続きだったらしい。
 フィクションはノンフィクションより面白い。フィクションであれば電車に乗っても食事をしても必ず何かが起こる。しかし現実であれば殆んどの場合、何も起こらない。日常は平凡だがデマや嘘は波瀾万丈で面白い。上手い話には気を付けろと言うが、面白い話であればこそ疑う必要がある。これは現代に限った話ではない。徒然草にも「世に語り伝うること、まことはあいなきにや、多くは皆そらごとなり」(第73段)と書かれている。昔も今と同様、デマやゴシップが持て囃されていたようだ。

誘虫灯(2)

2014-11-16 09:36:54 | Weblog
 誘虫灯には良い虫も悪い虫も集まる。それと同じようにイメージが良い有望そうなビジネスには有象無象の連中が集まる。そんなことを9月28日付けの「誘虫灯」で書いたが身近に毒虫が本当に現れた。
 母のところに中部電力を名乗る女からの電話があった。「屋根に太陽光発電機を付ければ電気代が安くなります」という内容だった。母が「よく分からないので息子と相談します」と言ったところいきなり切られた。これは100%間違いなく詐欺グループによる勧誘だ。本当に中部電力の関連企業であれば必ず連絡先を告げる筈だ。詐欺商法のオペレーターだから可能性の低い相手との電話を一刻も早く打ち切って次のカモを狙うことにしたのだろう。
 「誘虫灯」の記事のように論理的にではないが、日頃私は太陽光発電と健康食品には気を付けるよう伝えていた。たまたまその片方だったので母も警戒して事無きを得た。
 長く一人暮らしだった母は妙な物を色々買っていた。私が同居し始めてからも危うくブラジル通貨に投資させられそうになり私がキャンセルさせた。もし投資していれば、仮にまともな企業が相手でも大損をするところだった。田舎の老人は騙され易い。
 マスコミは100%確実な詐欺である振り込め詐欺については頻繁に報道するが、極めて怪しい太陽光発電詐欺や、自らが加担する健康食品や有害な市販薬などについては殆んど報じない。すっかり金権体質化した社会福祉法人については事件化しなければ報じないがこれは貧困ビジネスと紙一重の違いしか無いグレー企業が少なくない。
 精神病院も大半がグレー企業だろう。身寄りの無い老人を狂人に仕立て上げて病室に閉じ込めるだけだ。病院とは名ばかりで治療などせず飼い殺しにする。危険な狂人を社会から隔離するというタテマエだがその実態は医療保険と生活保護費を狙った「狂人ビジネス」だろう。なぜかマスコミはこれを問題視しない。
 宝くじのような詐欺紛いの事業にもマスコミは加担しているが恥じる素振りは見られない。宝くじが世界一配当率が低い最低のギャンブルであることは絶対に報じない。ギャンブル法の是非以前にこの問題を問うべきだろう。マスコミも誘虫灯の光に集まる毒虫だ。しかも善人面をした毒虫だ。
 

原油価格

2014-11-15 09:42:40 | Weblog
 ガソリンが17週連続で値下がりしている。12日の日本エネルギー経済研究所の発表によると、今週の価格は1ℓ当り159.5円で消費増税前の3月24日以来の最安値だそうだ。ガソリンが値下がりしているのは原油が値下がりしているからだ。6月に1バーレル当たり115ドルまで高騰した原油価格が今月は74ドル台まで下落している。これだけ下がれば円安や消費増税といった逆風が吹いても値下がりする。
 ではなぜ原油が値下がりしているのか。マスコミはヨーロッパや中国での経済の停滞とかアメリカやサウジアラビアなどでのエネルギー事情を挙げるが、そんなことではこんな暴落は起こらない。もっと決定的な原因がある。それは「イスラム国」による輸出だ。イスラム国は1バーレル当たり25~50ドルでの安売りをしているらしい。
 これは商店街の前に安売りスーパーが出現したようなものだ。商店街も負けずに安売りで対抗せざるを得ない。そうしなければ売り上げが激減してしまう。原油相場の下落はイスラム国による価格破壊が原因だ。
 ではイスラム国の原油はどんなルートで取引されているのだろうか。欧米寄りの報道しかされない日本ではさっぱり分からないが、意外と普通に流通しているのではないだろうか。
 イスラム圏諸国にとってイスラム国は決して単なるテロリスト集団ではない。敬虔なイスラム原理主義者だ。ムスリム(イスラム教徒)にとっては欧米が押し付けようとするキリスト教的価値観と比べてイスラム国の主張はずっと真っ当なものだろう。キリスト教的価値観に基づく民主主義・男女平等・一夫一妻制、これらはイスラム教とは相容れない。イスラム文明を破壊しようとするキリスト教徒よりもイスラム国のほうが正しいと考えるのはごく自然なことだ。イスラム教とキリスト教の対立は簡単には解消できない。
 宗教に無関心な日本人は欧米のキリスト教的価値観が正しくイスラム教的価値観は前近代的で野蛮だと無邪気に信じている。こんな偏見から脱却しなければ今、世界の経済がどう動いているかさえ理解できない。円安にも拘わらず日本での物価上昇率が低いのは原油価格の暴落が原因であり、これが12月に予定されている衆議院選挙にも繋がっている。「イスラム国」の影響は思いのほか大きい。

大国のエゴ

2014-11-14 10:21:55 | Weblog
 アメリカも中国も我儘な国だが、12日に発表された米中の共同声明は酷過ぎる内容だった。中国は2030年頃までを二酸化炭素排出のピークとするとのことで、中国が環境を汚染し続けることをアメリカが承認したという形だ。二大国の合意となれば他国はおいそれと口出しできなくなる。これで中国は堂々と大気汚染を続けられる。これは二酸化炭素排出量が1・2位で世界の4割を占める迷惑国による馴れ合いだ。
 こんな暴挙の裏には何らかの交換条件があったと思われるが今のところそれは表には出ていない。いずれ分かることだろう。
 中国ではAPECに合わせて1~12日まで、工場の操業停止や自動車の交通規制などを行った。その成果は素晴らしい。北京のPM2.5は前年同期比で55%も減ったそうだ。テレビで見る限り、北京では滅多に見られないような青空になりAPECブルーと呼ばれているそうだ。抜本的な手を打たずその場凌ぎの対策だけでこれほど効果があるということから、普段いかに酷い垂れ流しが行われているかよく分かる。これをあと16年間放置することにアメリカがお墨付きを与えてしまった。
 アジアの上空には偏西風がある。だから中国による大気汚染で被害を受けるのは日本と韓国と北朝鮮だけだ。広い太平洋で隔てられたアメリカの被害は殆んど無い。日本と韓国はアメリカの国益のために無視されてしまった。
 勿論、最も重大な被害を受けるのは中国人民だ。多分、平均寿命が数年縮まるだろう。だから何らかの手を打つだろうが、それは外国に干渉されることなく中国共産党の意のままだ。日本はこれまでに何度もアメリカに煮え湯を飲まされた。こんな国を友好国と考えるのは余りにもお人好し過ぎる。
 イソップ寓話を思い出した。イタチが鶏に言った「お前達は朝から騒いで迷惑だ。」鶏が答えた「人間様に朝を告げているのです。」イタチが再び言った「鶏姦(ギリシャ語では近親相姦を意味するらしい)をするとはけしからん。」鶏が答えた「卵を沢山産んで人間様に役立っているのです。」するとイタチは「つべこべ言うな」と言って鶏を食べてしまった。教訓;悪党に正しい理屈を主張しても虚しい。

刑罰

2014-11-14 09:46:34 | Weblog
 近代法の刑罰は様々な意味を持っている。人によってどれを重視するかが異なるので意見の一致が難しい。現存する成文法では2番目に古いハンムラビ法典は「目には目を」を原則とする。これは復讐法のように理解され勝ちだが「目には目で償え」という意味であり損害賠償の色合いが濃い。現代の刑法もこの2つの要素が大前提となるがそれ以外に社会秩序の維持も目的とされている。刑法の根本には、一方に個人の権利を守るための復讐と損害賠償があり、もう一方に社会秩序を維持するための禁止がある。
 秦の始皇帝は法家の思想に基づいて厳格な法律万能主義を採った。これは権力者が上から押し付けた法律だった。人民を支配し搾取するための法律だ。だからこの「法治主義」は人民にとっては軛でしか無かった。秦を倒した劉邦の「法三章(殺すな、傷付けるな、盗むな)」が熱烈に歓迎されたのは、秦の法律が権力者のためのものだったからだ。秦の法律は過酷で年貢や人足などが足りなければ厳罰が科せられた。だから厳罰を避けるために山賊になる者も後を絶たなかった。このことが却って国力の低下を招いた。
 法律はトップダウンとボトムアップが入り乱れているし、社会秩序を守るための法律が、道路交通法のように同時に市民を守る法律になることもある。
 刑罰は抑止力として働く。日本でしばしば議論になるのは、死刑が抑止力を持つか、ということだが、どんな刑罰も何らかの抑止力を持つ。逆に罰則の無い規則であればマナーに過ぎず拘束力を持ち得ない。
 裁判ではしばしば責任能力の有無が問われる。心神喪失状態であればそれが違法であることを意識できないからだ。あるいは殺人罪とするためには殺意が問われる。殺意が無ければ過失致死罪になる。倫理的にはそんな区別が必要だろうが、私はヒグマだろうがツキノワグマだろうが、人を襲うクマは悪いクマだと考える。やむを得ない事情があった殺人犯よりも、理由も無く犯行に至る狂人のほうが怖い。
 私は特に性犯罪者を危険と考える。昨年の強制猥褻犯の再犯率は46.4%で、強姦犯では54.6%だったそうだ。発覚しにくい性犯罪なのに発覚した分だけでこんな高率になるのだから、実際の再犯率はこれよりも遥かに高いだろう。
 アメリカでは性犯罪者の人権は大幅に制限されているそうだが、日本も見習うべきではないだろうか。性犯罪は再犯率が高いことを考慮して現状よりも厳罰化すべきだろう。多分、多くの女性もそう考えているだろう。