<前編からの続き>
【一期一会とは言うものの】
最後の居酒屋では、巻物と味噌汁を平らげ、会計して帰ろうかと身支度を整えていたら、2席隣のカウンター客から「すみません」と声がかかる。
オレがなにか落とし物でもしたかな?と思いながら足元を見まわすがなにもない。
その隣人は、どうやらオレに話しかけているようで、何度もコチラへ声をかけていたらしい。
いったい何事なのだ??
と思って顔を向けると、その方は40代後半のやや小太りの女性だった。
もう帰るところだったのだけど、「地元の方ですか」とか「どこの方ですか」とやたら会話で距離を詰めてくるので、近づきすぎないよう距離をとって対話しながら引き上げるタイミングをうかがっていたのだが。
【帰りたいんですけど】
前述のとおり、完全に帰るところだったわけだから、悪いけどこのまま延々付き合っているわけにいかない。
明日もやるべきことはたくさんあるから、寝不足なんかもってのほか。
「じゃあそろそろ」と席を立ちかけるが、「おごるからおごるから」と先方はいうことに対し、「いやいや結構です」とのやりとりを何往復したことか。
そのうちオレが締める前まで飲んでいた酒をスタッフから聞き出して、勝手に彼女がそれを発注するという暴挙に出始めた。
オレも最初は真摯にやんわり対応していたが、一杯だけだよと強く約束して付き合っていたはずなのだが、なんだかんだで何杯も付き合わされていたという。
とはいえオレが飲みの相手になったことが嬉しかったのか単に酒癖が悪いのか、杯を重ねるたび絶対に離してくれない状況が強くなり、ひいては話を聞かされる最中にも脱出の方法ばかり考えるようになっていたオレであった。
【帰りたいんですけど2】
彼女がトイレに立とうとしたので「じゃあオレはそろそろ」と席を立とうとしたら、「逃げるんじゃないよ」と恫喝とも取れるワードが飛び出すようになる。
顔は笑っているので酔っ払いの悪い冗談だとは思うが、ちょっと話に付き合っただけで、なんだかんだでいつしか4杯くらい付き合わされてしまった。
こっちはさっきまで気持ちよく酔えていたところに、帰り際に突然泥のような状況転換に酔えるわけもなく、むしろ悪気になるばかり。
時間がたつにつれ店内の客はほとんど帰り、店員もこのまま泳がせておけばナンボでも儲かると思っているのか、我々に近づかず距離を取って必要以上に関与しない状況が見て取れた。
明らかに大トラに絡まれている異常な状況なのに、店が助けてくれないなんて。
儲かるからって、そりゃないよ。
【そりゃそうだろ】
ハッキリ言って、これだけしつこく絡んでくるため、きっと先方は宗教的な勧誘者ではないかと早いうちから疑っていたから、どんなに時間は経っても絶対にオレの身分は明かさなかった。
しかし、一切身分を明かさないオレに対し、先方が名刺を突き出してきたのでいよいよ万事休す。
オレも出すしかなくなって名刺を出してしまった。
そうなってくると彼女は知人と(現地集合のうえ)二人で仕事の一環により高山に来たというのに、なぜ一人で飲んでいるのか?と知りたくなって尋ねると、「すでに約束があったんだって」と口を尖らせていた。
ここでピンときたオレ。
なるほど、その人はこの彼女の酒癖の悪さを知っていたんだろうとすぐさま察知。
ま、そこまでその人も近しくないなら、こんな人に「オレも仕事終わりに付き合わんわな」と理解したが、現にハマってしまったオレは苦笑うしかない。
【思わぬ救世主登場】
なんやかんやで、この店だけに3時間以上滞在しているハメになり、一杯だけだという約束も早々に反故にされ、ツマミもない状態で何杯付き合ったか分からなくなったころ、日付が変わりそうだから一旦お互い会計しておこうというオレの提案にはなぜか乗ってきた彼女。
つまり、これで完全にタイミングを計れば逃げ出すことが可能になった。
(もっと早く仕掛ければよかったww)
名刺こそ交換してしまったが、後日に酒席での出来事までほじくり返してきて因縁をつけることもあるまいと判断したこともある。
そこで登場したのが、会計を対応してくれる店長さんだ。
今までホールにいなかったのに、この遅い時間になってようやくホールに登場してきたようだ。
お互いの会計後に彼女がトイレのため席を立ったので、すかさず店長を呼んで
「次、彼女が席を立ったらオレ逃げ帰りますんで」
と告げると、
「(彼女が)飲み始めたときは静かだったんですけど、突然変わっちゃいましたよね。了解です。」
と気の毒そうにうっすら笑顔で返してくれた店長。
「本当に助けてください、よろしくお願いいたします。店長さん!」とオレ。
もちろん店長と面識などないが、切にこう訴えるしかなかった状況、みなさん共感していただけましたでしょうか!?
<次編へ続く>
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