冨尾と書いて「とんびゅう」と読みます。この山里は、標高420mのところにある、現岡崎市、旧額田町の限界集落のひとつ。週に4,5回、市内の自宅からこちらにある実家にやってきて、半分だけの田舎暮らしをはじめた小野佳秀、澄子さんご夫婦をお訪ねしました。
こちらが小野さんのお宅。築150年の古民家です。太い梁が何本も使われていて、南北に開け放たれた部屋の中を通る風が涼しい。道を行きかう人や車の気配はまったくなく、蝉の音や鳥の声しか聞こえません。
小野さんご夫婦とは、小原の西村自然農園で知り合い、一度お訪ねしたいと思っていました。この冨尾から車で10分ほどのところに住む友人・Kさん親子を誘って、やっと出かけることができました。
お昼時に伺った私たちを待っていたのは,天然の鮎の塩焼き。佳秀さんが、天竜川上流まで行って、私たちのために釣ってきてくださったものです。碧南産の陶製のコンロの周囲には穴が開いていて、串を突き刺せるようになっています。
「できれば頭から食べて下さい」といわれ、頭からかぶりつきました。最初だけちょっと固さが気になりましたが、3口目くらいからは平気に。鮎全体から香ばしい匂いがします。さっぱりしているのに味がいい。はらわたの苦みがアクセントになって、どんどん食べられます。ほんとうにおいしい。こんなにおいしい鮎は初めてです。勧められるままに、遠慮なく3匹も平らげました。
天然の鮎、と一言で言っても、どこで獲れたかによって味はそれぞれらしい。私は単純に上流域のもののほうが良質だろうと思っていたのですが、佳秀さんによれば、いただいた鮎の獲れた川より上流であるはずの場所で獲った鮎のほうがおいしくないのだとか。鮎の餌である苔の質が、鮎の味を左右するわけなので、上流であっても家庭排水などで汚染されていたら、苔の質は劣るのかもしれないとのことです。
この鮎、友人の2歳半になる息子・Tくんが、夢中になって食べました。ふだん養殖の鮎が食膳に上ることが多い家なのだそうですが、彼は今までほとんど見向きもしなかったそう。それなのに、串に刺してあるこの天然鮎はたいへん気に入ったようで、彼は帰るころまで、「おさかなおいしかった」を連発。よほど舌とこころに残ったようです。
昨年秋、小野さん夫婦は、5年ほど無人になっていたこの家と周辺の山里を、田舎暮らしの楽しさを味わってもらえる場所にしようと思い立ちました。そして西村自然農園を知り、いまは、西村さんから田舎暮らしのあれこれを学んでいます。
上の写真は、佳秀さんが作ったこの里での体験メニュー。五平餅作り、山菜採りと山菜料理、星座観察、つるかご編み、箸作りなど、楽しそうな遊びがいろいろそろっています。この6月から撮りはじめたという、周辺で咲く山野草の花の写真も美しい。絶滅が心配されている笹百合も、季節になると咲くそうです。
今年はじめたばかりのお二人の畑。昼餉に出された野菜は、すべてこの畑で採れたものばかりでした。キュウリ、ニンジン、レタス、モロヘイヤ、タマネギ、ゴーヤ、シソ、オクラ、トマト。「ニンジンもタマネギも小さくて」と謙遜なさるのですが、一年目からこれだけの種類ができるのがすごい。うらやましいことです。
水上勉の「土を喰らう日々」の中に、「御馳走するというのは、畑に「馳けて走って」丹精こめて作った新鮮な野菜を採ってきてお客をもてなすことだ」というような話が載っています。この日の小野家のランチは、まさに文字通りのご馳走でした。
小野さんの家の向かいには、中世の山城・冨尾城の城跡があります。そこも、小野さんの敷地内。登る途中の森には心地よい風が吹いていました。
城跡で。両側が小野さんご夫婦です。向うに見える赤い屋根が小野さん宅。
城跡からは、冨尾の集落が見渡せます。小野さんの子供のころには24軒あったのだそうですが、いま残っているのは10軒ほど。半分以下に減っています。
帰り際、KさんとTくんは、小野さんが間伐材で作った立派なブランコに乗りました。ブランコの隣には、同じく間伐材をぜいたくに使った大きなテーブルが。「ときどき田舎暮らし」を思い立ってからなさった仕事の多いのに、驚きます。
小野さんの「癒しの空間Tonbyu house」は、一般の方にも開放できるように思案中だとか。興味のある方は、℡0564-22-3635まで、ご連絡下さい。
こちらが小野さんのお宅。築150年の古民家です。太い梁が何本も使われていて、南北に開け放たれた部屋の中を通る風が涼しい。道を行きかう人や車の気配はまったくなく、蝉の音や鳥の声しか聞こえません。
小野さんご夫婦とは、小原の西村自然農園で知り合い、一度お訪ねしたいと思っていました。この冨尾から車で10分ほどのところに住む友人・Kさん親子を誘って、やっと出かけることができました。
お昼時に伺った私たちを待っていたのは,天然の鮎の塩焼き。佳秀さんが、天竜川上流まで行って、私たちのために釣ってきてくださったものです。碧南産の陶製のコンロの周囲には穴が開いていて、串を突き刺せるようになっています。
「できれば頭から食べて下さい」といわれ、頭からかぶりつきました。最初だけちょっと固さが気になりましたが、3口目くらいからは平気に。鮎全体から香ばしい匂いがします。さっぱりしているのに味がいい。はらわたの苦みがアクセントになって、どんどん食べられます。ほんとうにおいしい。こんなにおいしい鮎は初めてです。勧められるままに、遠慮なく3匹も平らげました。
天然の鮎、と一言で言っても、どこで獲れたかによって味はそれぞれらしい。私は単純に上流域のもののほうが良質だろうと思っていたのですが、佳秀さんによれば、いただいた鮎の獲れた川より上流であるはずの場所で獲った鮎のほうがおいしくないのだとか。鮎の餌である苔の質が、鮎の味を左右するわけなので、上流であっても家庭排水などで汚染されていたら、苔の質は劣るのかもしれないとのことです。
この鮎、友人の2歳半になる息子・Tくんが、夢中になって食べました。ふだん養殖の鮎が食膳に上ることが多い家なのだそうですが、彼は今までほとんど見向きもしなかったそう。それなのに、串に刺してあるこの天然鮎はたいへん気に入ったようで、彼は帰るころまで、「おさかなおいしかった」を連発。よほど舌とこころに残ったようです。
昨年秋、小野さん夫婦は、5年ほど無人になっていたこの家と周辺の山里を、田舎暮らしの楽しさを味わってもらえる場所にしようと思い立ちました。そして西村自然農園を知り、いまは、西村さんから田舎暮らしのあれこれを学んでいます。
上の写真は、佳秀さんが作ったこの里での体験メニュー。五平餅作り、山菜採りと山菜料理、星座観察、つるかご編み、箸作りなど、楽しそうな遊びがいろいろそろっています。この6月から撮りはじめたという、周辺で咲く山野草の花の写真も美しい。絶滅が心配されている笹百合も、季節になると咲くそうです。
今年はじめたばかりのお二人の畑。昼餉に出された野菜は、すべてこの畑で採れたものばかりでした。キュウリ、ニンジン、レタス、モロヘイヤ、タマネギ、ゴーヤ、シソ、オクラ、トマト。「ニンジンもタマネギも小さくて」と謙遜なさるのですが、一年目からこれだけの種類ができるのがすごい。うらやましいことです。
水上勉の「土を喰らう日々」の中に、「御馳走するというのは、畑に「馳けて走って」丹精こめて作った新鮮な野菜を採ってきてお客をもてなすことだ」というような話が載っています。この日の小野家のランチは、まさに文字通りのご馳走でした。
小野さんの家の向かいには、中世の山城・冨尾城の城跡があります。そこも、小野さんの敷地内。登る途中の森には心地よい風が吹いていました。
城跡で。両側が小野さんご夫婦です。向うに見える赤い屋根が小野さん宅。
城跡からは、冨尾の集落が見渡せます。小野さんの子供のころには24軒あったのだそうですが、いま残っているのは10軒ほど。半分以下に減っています。
帰り際、KさんとTくんは、小野さんが間伐材で作った立派なブランコに乗りました。ブランコの隣には、同じく間伐材をぜいたくに使った大きなテーブルが。「ときどき田舎暮らし」を思い立ってからなさった仕事の多いのに、驚きます。
小野さんの「癒しの空間Tonbyu house」は、一般の方にも開放できるように思案中だとか。興味のある方は、℡0564-22-3635まで、ご連絡下さい。