数日前、稲武地区の大栗山にあるオオキツネノカミソリ群生地に行ってきました。ずっと前から見たい見たいと思いながら、なかなか開花期にちょうどうまく訪れることができないまま、何年もたちました。
今回はたまたま山歩きを予定していた日が運よく開花時期に間に合い、数年越しの願いが叶いました。群生地は、県道沿いに車を止めて山に入り、およそ600mほどで登ったところにあります。沢筋の苔むす岩々も風情があります。写真上の赤い実は、ウワミズザクラ。きれいなオレンジ色です。
同行した友人の子供が見つけたエビガライチゴの実。この実はイチゴのうちのひとつぶ。大きなイチゴのようです。見たかった。
よく見かける苔ですが、名前を知らない。草は、チャルメル草の一種だそうです。
アブラチャン。
うちにもある洋種ヤマゴボウですが、やけに生育がいい。近くに水があるせいか、日陰だからなのか、立派過ぎて別の草に思えました。
こちらも稲武のたいていの山同様、スギヒノキの人工林となっています。でも、間伐がさほどされているようでないのに、暗くはないのは、オオキツネノカミソリ群生地の保護のために、人々が行き来しやすいよう手入れしたおかげかもしれません。
これはアワブキ? 燃やすと泡が出るからこの名前がついたそうです。
オタカラコウという葉の大きな植物。うちの裏の林にもあります。こちらに来た頃は、この草とフキの区別がつきませんでした。
いい写真が撮れなくて残念なのですが、小さな谷川はきれいで、こもれびが心地よく、群生地までの山道はときどき急坂はありますが、おおむねなんとか私の足でもたどり着けました。
山歩きしていると、しばしば見かける岩や切り株を一面に覆う苔やシダ植物。見ていて飽きない風景です。そこに一株何かの苗が育っているのを見ると、さらに愛しい。
マツカゼソウ。可憐な白い花が咲いています。葉っぱもかわいい。
シダなのですが、これは覚えやすいシダです。裏表どちらもほぼ同じように見えるのです。だから名前は、両面シダ。
コクサギだそうですが、この植物、クサギとは無関係だそう。
でも、臭いことは臭い。変わっているのは、葉のつき方。ふつうは、対生か互生。葉が茎に対して向かい合っているか、互い違いになっているか、なのですが、こちらは、右右、左左・・・と二枚ずつ同じ側についています。そして茎をよく見ると、ぐるぐるっと回っています。なんなんだろう。コクサギ型序列というのだそうです。
こちらも白い花。
群生地に近づきました。想像以上に広い場所です。
このあたり一帯は、木地師たちが住みつき、木を伐っては道具を作っていたそう。オオキツネノカミソリは、彼らが薬草として使うために栽培していたということです。ケヤキは村人が神社建立のために苗を植えたものだとありますが、このケヤキも生地の材料として大事なものだったのでしょう。
木地師の集落や住居跡はまったくありませんが、炭焼き窯のあとはあります。このあたり一帯、あちこちにみられるのだそうです。木地師集団とは別に炭焼きを専業とする集団がいたのか、それとも村人たちが副業で携わっていた仕事の場所だったのかは不明です。
オオキツネノカミソリは彼岸花と同じ科で、春は緑の葉があるのですが、花が咲くころは葉がなくなっています。おしべが花弁より長いのがオオキツネノカミソリで、短いのがキツネノカミソリなのだそうです。
オオキツネノカミソリの群生地にはケヤキが。周囲は針葉樹で囲まれているのに、こちらは広葉樹地帯になっています。上の方に黄緑色の葉が見えます。新緑の時のようにきれい。
群生地は、ぐるっと一周できるように整備されています。
例年は盆過ぎが見頃だそうですが、今年は一週間ほど早め。まだほとんどつぼみばかりの群落もありましたが、ほぼだいたいピークをちょっとだけ過ぎている感じでした。でも、夢のように続くオレンジ色の群れは、見ていて飽きない。
草アジサイというのだそうです。確かにアジサイっぽい。
こちらはカエデだそう。カエデといえば「カエルデ」から来た名前といわれるくらいだから、みんな水かきのようなものでつながっている形の葉だとおもっていたら、こんなのもあるのだそうです。名前はミツバカエデ。言われてみれば、たしかに葉っぱは3枚ずつになっています。3枚一組でミツバカエデ。
あまり記憶が定かではないのですが、こちらに越してきたばかりのころ、地元の人に誘われて、「オオキツネノカミソリを守る会」に参加したことがあります。種取りに行ったのだと思う。その当時は、今ほど群落が広くなかった気がします。地元の人たちの努力で、ここまで自生地を広げたのではないかと思います。
多分、100年以上前の人たちが植えた薬草が、こうして後代の私たちの目を楽しませてくれているのだなとおもうと、なんだか感無量です。白っぽい肌のケヤキとオレンジ色のオオキツネノカミソリ。美しい夏の日の思い出になりそうです。
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