晴耕雨読とか

本読んだり、いきものを見たり。でも、ほんとうは、ずっと仕事してます。

上高地の森

2008年08月30日 | 
というわけで、上高地から涸沢まで歩いたのですが、その過程でいちばん興味深いのは森ですね。

まず上高地。個人的にはカラマツに目がいきました。天カラ(植えたものでなく天然のカラマツという意味)なんだろうと思うのですが、つまりそこはもともとは崩壊地的な場所なんでしょうね。あるいは焼岳からの噴火物の堆積物なのか。いずれにせよ、カラマツは中部日本山岳地のパイオニア植物で、その土地の気象(寒さと乾燥か)と地質に大きな特徴がある種類ですよね。

で、明神に進むと、シラビソやウラジロモミの針葉樹林となって、亜高山帯の雰囲気になります。でも、、、上高地の標高は、じつは1500メートルしかありません。明神だってそんなもんです。そこにブナ帯上部から亜高山帯に生える樹木が存在してるわけです。

本来、上高地から横尾は、標高的、気温的にはブナ帯と言える場所です。それが森の基質となる土壌の状態によって、見かけ上、亜高山帯の森になっているわけです。

おもしろいのは横尾を過ぎちょっと登ったところにブナがごくわずかあるところです。感覚的には、亜高山帯の針葉樹林…的な森を抜けて、山を登るとブナが出てくるというのは不思議ですよね。

基本的には、登山道が川沿いから中腹に通っていることが原因だと思いますが、それでも梓川流域にはとにかくブナの姿はほとんどないわけです。

ブナの生育環境は、土壌がきちんと発達していて、湿気がある程度あることが重要です。つまり上高地・横尾間はそういう場所じゃないということです。

槍穂高連峰は岩稜の山です。そこに氷河があって、涸沢・槍沢を流れ、岩石を少なくとも横尾まで運びました。そして、焼岳という活火山。それらがあいまって、この場所はブナが生きられない土壌なのです。

どうしても教科書的には、森は気温だとか、標高、緯度によって○○帯という分類をされますが、自然はそんなに単純ではありません。

生き物屋は、土壌をみるときに、落葉層から腐食層までを考えがちですが、もっと深いB層、C層が、見えない分だけわかりにくいのですが、樹木にとってはけっこう重要だったりするわけです。そういう視点で森を見ると、いろいろ見えてくるのが楽しいところです。

自然の、見えないものを見るチカラを持つことがわたしのテーマでもあります。涸沢までの山歩きは、もう一度そのことのおもしろさを教えてくれました。


*注 内容はあんまり信用しないでね。半分想像と妄想ですから。