昨年、秋が少しずつ深まる頃でした。
厚紙が入った白封筒が届いたのは。
えーーっ。
『山の上ホテル』休業のお知らせでした。
休業だったか、閉館だったか、記憶は定かではないのですが、
ともかく、先のことは不明というお知らせだったはず。
慌てて電話するも、全く繋がらず、、、不通続き。
全国のファンが殺到したことが容易に想像できました。
後日談、ひと月は電話が鳴りっぱなしだったようです。
私がこのホテルを好きな理由。
添乗員としては、室内のシンプルな動線が、銀ステ世代向きで、
押しボタンひとつで全て解決する稀有な存在が嬉しい。
今時ホテルは、高齢者には動線が複雑すぎます!
完全に昭和レトロ擁護です。
と、これはあくまでも添乗員目線。
個人的には、、、
もちろんモダン建築が好き、ということに尽きるのですが、
モダン建築の誕生秘話に必ずつきものの時代の寵児の気概に
ずしんと惹かれます。
「人富みて死す、その死や恥辱」
この言葉を信条にしていた
“石炭の神さま”こと実業家・佐藤慶太郎氏が私財を投じて建てた、
生活向上を目的とした実験的施設が前身と聞きます。
ちなみに東京都美術館も彼の寄付にて。
お金持って死んだってアカンよ(多分)、なのですが、
なかなかできることではありません。
それがずいぶんたった事後にわかることであっても、
“世のため人のため”は、結局人がすること。
きっかけがなんだっていい。
ええ格好でも、格好いい。
昭和12年、世のため人のために建てられた山の上ホテル。
長い歴史を纏い、明日終焉の時を迎えます。
それぞれの人々が記憶に残す、さまざまな場面の脇役であったホテル。
宿泊客の数だけ、その記憶の場面があります。
私にとっては、あの日。
令和6年元旦、ホテルの小さなBARで能登地震の一報を知った場所として
ずっと記憶に残って行くことになります。
終わりは始まり。
きっと、繋がっていくはず。
分相応のええカッコは続けていきたいなぁ。
ありがとうございました。
山の上ホテル、再会のその日までしばしのお別れです。
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