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銀ステ根なし草

銀のステッキ旅行・スタッフの雑記帳

マニュアル本が先か、予備知識が先か

2009年06月24日 | のほほん同志Aの日常
「家は借りて住め。本は買って読め。」

兵庫県が生んだ、偉大な教育者にして児童文学者の、
亡き灰谷健次郎さんの言葉です。

この言葉、別に座右の銘にしているわけではないのですが、
欲しい本があるときに引っぱり出してきて、
ドカドカ買うのに都合がいい。

というわけで、我が家の本棚は常にいっぱい。
置き場に困っては、「これ、面白いよ」と友人に貸しつけ、
会うごとに「あれ、読んだ?」とプレッシャーをかける。
 
あるいは古本屋で安く買ったつもりの本を、
同じ古本屋に持っていって、もっと安く買い叩かれたり。
…いったい何をしてるのだ?

いま本棚にズラリと並ぶのは、

『小さな会社の作り方』
『起業をするならこの1冊』
『完全ガイド 成功する会社を作る!』
 
といった起業マニュアル本。

3ヶ月前にどっさり買いこんだこれらの本、
最初はまったくちんぷんかんぷん。
知らない言葉のオンパレードでした。

定款って何のこっちゃ
はぁ、登記…
貸借対照表にいたっては、「ん? チンタイ…?」と
読み方すらわからない。
  
――それが今ではどうでしょう。
「タイシャクタイショウヒョウ」
すらすら言えます。
 
内容もすんなり頭に入ってくる。
まぁ、すでに会社を作ってしまったのだから、
「会社の作り方」なる本が、すらすら読めるのはあたりまえ、ですね。
 
 
…そういえば、以前に勤めていた旅行会社でも
似たようなことがありました。

2度目の海外添乗先は、ハワイ。
ホノルルのイメージが強いオアフ島ではなく、
活発な火山活動で知られるハワイ島8日間の旅でした。

「ハワイ島・キラウェア火山を歩く」というのが、そのツアーのタイトル。
ちょっとは予習をと、子どもむけの科学本
『火山は生きている』を買ってみたのですが…。

そもそもが根っからの文系人間。
マグマがどうしたって? と、理解不能なまま、 
結局ほうり出して、いざ現地へ――。

ハワイ島、いいところでした。
キラウェア火山を真正面に望む宿「ボルケーノハウス」に連泊し、
夜、波の音を子守唄に眠り、朝、小鳥の声で目を覚ます日々。

直径4km、巨大なフライパンのようなクレーター(火口)の底を歩いたり、
月夜の海にとろとろと流れ落ちる赤い溶岩流を眺めたり。
島在住のトレッキングガイドさんの話に耳を傾けながら、
「ほんと、地球は生きている」と実感した1週間でした。

帰国後。
挫折した例の『火山は生きている』をふたたび手にとると、
なんとすらすら頭に入ること。

「さすが。予備知識があると、よく分かるなぁ」
感心してつぶやくと、
「それ、逆です!」
すかさず横から突っ込まれましたが。


――さて問題は、読破しないまま用済みになった
この起業マニュアル本の山です。
どうしてくれよう。 

肝心なときは、ちんぷんかんぷん。
でも会社もできて「予備知識」のあるいま、
とってもわかりやすい良本に思えてきて、別れがたい。

困ったものです。

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『地球の○○し方』

2009年06月22日 | のほほん同志Aの日常
これじゃあ、『地球の歩き方』じゃなくて『地球のだまし方』よ!

実は私、バックパッカー時代、
口の悪い仲間うちで、しょっちゅう悪態ついてました。

いえ、『歩き方』さんには本当にお世話になっているのです。
放浪のひとり旅ではもちろん、仕事で海外添乗に出るときも、
必ずカバンにしのばせてます。
似たようなガイドブックは山ほどありますが、
充実度は『歩き方』がピカイチ、
間違いなく、一番つかえるガイドブックでしょう。

ただ…。
『歩き方』の特徴は、とっても主観的ということです。
読者の旅のエピソードなんかも満載で、
(私もはりきって投稿してました)
だからこそ面白いのだけれども。


忘れられないのは、まだ二十歳の夏のヨーロッパひとり旅。
世間では、沢木耕太郎の『深夜特急』がリバイバル人気。
影響を受けやすい私は、行き先も決めぬまま、
ドイツのベルリンに降り立ちました。
決まっていたのは1ヶ月後、ローマから日本に帰るということだけ――。

旅のバイブルは、『地球の歩き方 ヨーロッパ』
北欧からギリシャまで、ぜーんぶ載った分厚く重いページを繰りながら
明日はどこへ行こう?と悩むのが、
楽しくも判断力を試される毎晩の日課でした。

そんなある夜、ふと目のとまった1ページ。
番外編ということで、北アフリカはモロッコの体験談が
小さく紹介されておりました。
そのなかの一行がこちら。

「マラケシュのジャマエルフナ広場の喧騒は、この世のものとは思えない」

この世のものとは思えない…
 
ずーっと頭のなかをぐるぐるリフレインするこの一言。
行きたいなぁ、でもアフリカかぁ。ちょっと怖いなぁ…。
 
迷うこと数日。最後はエイヤと思いきり、
スペインの南端からアフリカ大陸めざしてフェリーに乗り込んだのでした。

――そして数時間後。
降り立ったのは、モロッコの港町タンジェール。
アフリカは目と鼻の先にありました。
とはいえ、ターバンを巻いた男たちがうろうろし、まったくの異世界。

目指すマラケシュは、まだまだ先。
月光が妖しく照らす砂漠を夜行列車でひた走り、
辿りついた砂漠のオアシス、マラケシュの町は…。

あれ? 別にふつう。
いや、でも、そのジャマなんとか広場へ行けばきっと…。

最高潮に高まる期待と、かすかに生じた不安を抱きつつ、
ようやくジャマエルフナ広場の喧騒を前にしての感想は?

「…どう見ても、この世のもの」

あぁーっ、また騙された!


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短期留学か、それとも放浪か

2009年06月21日 | のほほん同志Aの日常
夜、ぴっかぴかの二十歳の女の子から電話をもらいました。
この夏、カナダはトロントへの短期留学を考えているとのこと。
費用は3週間で39万円!
 
以下、私が一方的に電話口でしゃべったこと。

「ふーむ、トロントねぇ。
 銀行やら会社やら高層ビルばっかりで、日本で言えば大阪の北浜よ。
 
 で、留学で何したいの?
 英語力をつけたいなら、そのお金で日本でスパルタ語学学校に通うべし。
 短期留学より、よっぽど身につく。
  
 経験とか、思い出とか、友達ほしいとか、そんなのが目的なら、
 バックパッカーになって放浪の旅に出るべし。
 39万もあれば、たいていのとこで3週間すごせるよ。
 鮮烈な経験と、忘れられない思い出と、よき友との出会いが待っている。
 
 海外に行くのが初めてでも、英語がぜんぜん話せなくても、全く問題なし。
 ホテルの予約も買い物も、基本 “I want to~” でしょ。
 中学英語で十分だし、発音悪くて通じなければ紙に書けばいい。
  
 大丈夫。
 『地球の歩き方』とHISと若ささえあれば、
 誰だってバックパッカーになれるんだから。」


10分後――。
短期留学を志していた彼女はなぜか、
「はい、あした本屋さんで『地球の歩き方』を買ってきます!」
と力強く言って電話を切りました。 
 
あれでよかったんでしょうか…。

それにしても、初めて海外に飛び出そうとする彼女のドギマギの、
なんと ういういしかったこと。
 
そう、「可愛い子には旅をさせよ」です。

 

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ネーミングの達人、ゴーギャン

2009年06月20日 | のほほん同志Aの日常
●タヒチ
●ゴッホの同居人
●サマセット・モーム作『月と六ペンス』のモデル

…とくれば、タヒチを愛した異色のフランス人画家、
ポール・ゴーギャンです。

名古屋ボストン美術館で、6月21日まで開催中の「ゴーギャン展」。
ちなみに上の3点は、ゴーギャンと聞いて私が思い浮かべる乏しい知識。
『月と六ペンス』って、たしかけっこう面白かったよなぁという
はるか昔の記憶だけを頼りに行ってまいりました。

行ってびっくり。
老若男女がぎっしり列をなしている。
ピカソやゴッホならわかるけど、
ゴーギャンって、そんなに人気あったの?

会場をぐるり周ると、なかでもすごい人だかりが。
なるほど、皆さんこれがお目当てだったのですね。

《我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか》

――ご存知、ゴーギャン晩年の大作です。

この絵の芸術的すばらしさは正直わかりません。
なぜなら「不朽の名作」を前にしても、ちっともピンとこなかったから。
 
でも、この絵のタイトルの秀逸さならわかります。
ある意味、「ちょっとずるくない?」ってぐらいの
こんな壮大なタイトル、なかなかない。

ほかにも印象的なゴーギャンの作品名。

《かぐわしき大地》
《恋せよ、さらば幸福ならん》
《戦争と平和》
 
邦訳の力はもちろんですが、
ゴーギャン、なかなかのネーミングの達人ではないでしょうか。
 
ネーミングは命です。
 
このたび我々も起業にあたって、
社名をどうするか、ずいぶん頭を悩ませました。
「覚えやすい名前にしよう」
「事業内容がイメージできる社名にしたい」
「でもセンスも大事よね」などなど。
 
そのなかで、一つこだわったのは、略称がきれいにできること。
「キムタク」しかり、「パソコン」しかり、
4文字に略せると、やはりきれいにおさまります。
「銀のステッキ旅行」、いま我々の間では、「銀ステ」と呼んでいます。
 
ここでふたたび、ゴーギャンの
《我々はどこから来たのか 我々は何者なのか 我々はどこへ行くのか》
  
このタイトルに唯一ケチをつけるなら、略しにくいこと。
今回、展示にあたった学芸員さん、
あの絵をいちいち何と呼んでいたのでしょう。 
 
あ、「我々」かな。



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ミッキー・ロークと『レスラー』と銀のステッキ

2009年06月19日 | のほほん同志Aの日常

「忙中閑あり」…というわけで、
会社設立のあいまをぬって、話題の映画『レスラー』を観てきました。

――ミッキー・ローク演じる往年の全米No1レスラー、ランディ。
妻とは離婚し、一人娘とも疎遠。
人気レスラーだった頃、家族をかえりみなかった彼は、
50代半ばにさしかかった今、その報いのように、
コンテナハウスで孤独に暮らしている。
スーパーの惣菜売り場でアルバイトをし、
ぼろぼろになった体でかろうじてプロレスを続けながら――。
   

わたくし、2時間ちょっとの上映中、1時間は泣いてました。
 
こんな、自分の心と体をぼろぼろに痛めつけている
アメリカ人の初老のプロレスラーに、
ここまで感情移入できるとは不思議です。
 
共通点なんて何もないのに。
…いや、もしかしたらあるのかも。

エンドロールが流れたあと、
同じ列で観ていたひとりの女性が近づいてきました。
「この映画、よかったですか? 
 私、ちっとも主人公に感情移入できなくて」

どうやら私があまりにグスングスンとやっていたので、
奇異に思われたようです。

 
たしかに、万人受けする映画ではなかった。
まずは、プロレスというスポーツへの偏見。
思わず目をそむけたくなるような、映像の痛々しさ。
映画らしい華やかさなんてこれっぽっちもなく、
生きることの辛さ哀しさを、これでもかこれでもかと見せつけられて。

でも、私にはとても響きました。
重い映画なので、すぐにもう一度観たいとはなりませんが、
確実に、心に残っていく1本です。


で、ここで突然(むりやり)、「銀のステッキ旅行」です。
 
万人受けする旅行会社でなくていい。
不特定多数の人の、そこそこ60%の合格点よりも、
旅への思いを同じくする、顔の見える方々からの圧倒的支持がほしい。
それが、理想。

無事、設立登記をすませた「銀のステッキ旅行」、
始動まで、あとは旅行業の認可を残すのみです。


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