銀ステ根なし草

銀のステッキ旅行・スタッフの雑記帳

添乗員から客になると(3)

2009年06月14日 | のほほん同志Aの日常
ある日、自宅の留守電に男性の低い声。

勉強のため、某旅行会社に申し込んでいた日帰りバス旅行。
「ベンガラの町・備中吹屋」ツアー、
添乗員さんからの確認のお電話でした。
 
今回、注目するのは、他社の添乗員さんのお仕事ぶり。
へぇー、男性の添乗員さん。
これだけですごく新鮮です。 

当日、集合場所に立っていたのは、
お電話から想像したとおり、ベテランの風格を漂わせた男性添乗員さんでした。
 
受付をすませてバスへ。
平日ということもあり、ゆったりした雰囲気のご年配のお客様が中心。
一緒に参加させた母がカムフラージュとはいえ、
明らかに私ひとりが浮いてます。

全員そろってバスは出発。
まずは添乗員さんからごあいさつ。
つづいて行程の紹介が終わると、車内はリラックスモード。

さわやかな朝の空気にふさわしく、
インストゥルメンタルのBGMが心地よく流れ…。

…ん、これってもしかして「遠き山に日は落ちて~♪」
え、朝からコレ?

以前、添乗したツアーでいただいたアンケートを思い出しました。
「車内が静かで良かった。気分と違う音楽を流されて困ったことがあったので」
こんな感じだったのでしょうか…。
 

その日は五月晴れのいいお天気。
窓側の席の私には、容赦なく陽がさんさんとあたり…。
カーテンを引きたいのだけれども、
前席のご婦人は外の景色が見たいらしく、カーテン全開。
 
ご婦人がうつらうつらする隙に、後ろから手を伸ばしてさっと引くのですが、
気配で目覚めたご婦人、
「あら、ここはどこかしら?」ってな感じでさっと開け…。
知らなかった、添乗員の後方でカーテン争奪戦をやってたとは。
 
さて、お待ちかねのお昼。
青春映画『バッテリー』の舞台にもなった、山あいの小さな町のホテルにて。
刺身、てんぷら、茶碗蒸し、とくれば、
昼間っからビールがおいしい!
バスに戻れば、心おきなくうつらうつらと船をこぎ…。
 
あぁ幸せ。
昼ビールと居眠り。
どちらも添乗員時代、ご法度でしたから(当然です)。

気持ちよくひと眠りしているうちに、バスは備中吹屋に到着。
地元のボランティア・ガイドさんの解説をみっちり受けながら
幾つかの史跡をめぐりました。
 
でもみっちりすぎて、自由時間がまったくない。
この辺りから「ぶらぶら勝手に歩きたい」病が頭をもたげてきて、
「あー大丈夫です、ちゃんと集合時間には戻りますから」と、
一方的に添乗員さんに告げ、むりやり作った自由時間。
 
足の向くまま、ずんずん歩いた先に現れたのは…
まるで映画のひとこまのように、ノスタルジックな小学校。
生徒数わずか10名たらずの吹屋小学校、
国内では一番古い木造校舎だそう。
この日、一番の景色でした。

それにしても忘れられないのは、
グループを離れ、あらぬ方向に行く私たち親子を
不安げに見送る添乗員さんの姿。
 
わかります。
「自分は大丈夫」と思っている人が、一番危ないんですよね。
この日、一番、添乗員さんを身近に感じた瞬間でした。
 
バスでの長い帰路。
いつしか日も傾き、すっかり気分とマッチする「遠き山に~」を聞きながら、
また、うつらうつら…。

ツアー終了後、母から私にきつい一言。
「で、あなた、ビール飲んでずっと寝てたけど勉強になったの?」

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