ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅      薬物後遺症と心の傷・・・13

2012-01-11 | 3章 デリー中央精神病院・入院記録


12月11日(月)(入院して8日)
 
 入院して8日目。多量の薬漬けに変化はない。スタッフ中毒者の体内に残っている薬物濃度を下げ排出する、と同時に外部との隔離が必要だ。面会は大使館員以外一般人としてマリーが許可されている。そのマリーでさえ面会時の差し入れ品のチェックと特に時間の制限はないが複数のシスターによる立会いは拒否出来ない。入院して1週間目を境にしてぼくの心理に変化が始まった。スタッフを断って1~2日目は薬物を求めて狂い、1日中スタッフの事ばかりを考えていた。3~4日目になるとスタッフへの欲求は強いが時々、ぼんやりと何を考えていたのか、ふと自分に気付いては現実に引き戻されたりしていた。現実と非現実の狭間に意識が揺れる。
 禁断からの回復に有効なのは時間の経過である。体内への薬物注入を断つとそれの体内濃度は低下していく。身体の痛みと不眠という苦しみを引き摺りながら薬物は体外へ排出される。それを手助けするのが医薬品だ。8日目になってぼくはこの禁断から取り敢えず抜け出したいと思うようになった。もし再びドラッグの世界に入るとしても今までの分は清算しておきたい。
 朝食後、薬を飲んで前庭に行った。良い天気だ。今までは身体が動かないので病室に閉じ籠っていたが、こうして外へ出られるようになると気持ちが安らぐ。家族の見舞いに来られた婦人達だろうか、ベンチに座ってアユミと話をしている。男性は男性で別のベンチに座っている。昨日も見かけた2人のインド人がぼくに興味を示している、ぼくは彼らが座っているベンチに行き彼らの話しに加えてもらった。2人とも入院がかなり長そうだ。病院の評判や薬、体調について聞いてみた。こんな病院なんて治療費が高いだけで何の役にも立たない、と彼らの病院に対する評価は散々だ。話しが一段落すると、彼はポケットからビリを取り出し美味しそうに吸い始めた。ぼくはスタッフとニコチンのダブル禁断者だ。両方を断って8日目になる、スタッフはやらないがそろそろ煙草かビリくらいは吸っても良いだろう。ぼくはインド人に
「お前、ビリを吸っても良いのか?」
「お前、吸いたいのか?」
と奴は言いやがった。吸いたいに決まってるだろう、今まで禁止されていたのだから。
コメント
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