今回は本当に失敗した。白を切り通さなくっちゃ、例え相手に嘘だと思われても。白を切り通せば最後にはぼくのお金なんだから、大使館はぼくにお金を渡さざるを得なかっただろう。裁判所にパスポートを没収されているぼくは個人的に日本からの送金を受け取る手段はなかった。
「送金は大使館口座を使って良い」
厚意に感謝して送金していたのだがそこで疑われこのざまだ。要注意人物のお金の流れを100パーセント大使館はキャッチしていた。好いように手玉に取られたぼくはアホとしか言いようがない。去年、捕まったのがケチのつき始めだった。カトマンズを出る時、何故だか分からないが嫌な気持ちがちらっとあった。予感と言うか、虫の知らせと言うか、その上インドではペストが流行って危険だという、カトマンズの新聞は写真入りでデリーのペスト騒動を報道していた。どれもこれもぼくにとっては悪い兆候ばかりだった。何度もデリーへ買出しに行っていたがそんな変な感じを持った事は今迄一度もなかった。