ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅          No2 Ward・・・・・47

2014-03-09 | 3章 デリー中央第一刑務所No2Ward

夕方、中庭を急ぎ足でBバラックへ向かう3名の刑務官を見た。Bバラックの一つの房が抜き打ち調査に入られたようだ。散歩を装って中庭を歩いていたぼくの横を刑務官達は手ぶらでゲートの方へ歩いて行った。何も出て来なかった。これもたぶん密告によるものだろう、どこで見られているか分からない。特にインド人の目は危険だ。
 6時の施錠後アフリカ人とインド人が大喧嘩をやった。刑務官が直ぐ監房に飛び込んで来た。アフリカ人とインド人の喧嘩は周囲に飛び火して集団暴力抗争に発展する危険性を持っている。刑務官の警棒は喧嘩の当事者に容赦なく打ちつけられた。アフリカ人は血の気が多い。昨日もナイジェリア人が派手にやった。ドス、ドスと周りに聞こえるパンチの音、すぐ近くの者が引き分けた。広い監房だが鳥小屋のように多くの収監者が押し込まれ生活の場は狭い、その中で毎日同じ顔だ、どうしてもストレスが溜まる。些細なことでもそれが一気に爆発してその時にはもう止めようがない状態になっている。彼らは若い、特に性欲は抑えようがない、この不満がストレスの主要な原因のように思われる。
 ぼくがネットの外に出されてスリランカ人の様子が変った。以前だと8時頃にはネットを張りその中でぼくが書き物をしているとアミーゴ、ディクソン、サンダーが中に入って来た。ショッカンは外でぶつぶつ嫌味を言う。それが逆でぼくがネットの外にいるのでアミーゴも中にいては面白くないのか外をぶらぶら歩いている。ショッカンとセガはネットも張らず黙って座っていた。ビリに火を点けても奴らに回す必要はない。中からは気になるのか時々ビリや食べ物が回ってきた。


朝 うなぎを冷凍庫から出した 三つ切りにしてあるが大きい 60cmはあっただろう
蒲焼きのたれを作って自転車で海へ散歩に出かけた 寒いのでニット帽とマスクで誰だか分からない
どう あんたかぁ ナマコ採りの浜ちゃんだ バイクの荷台にはワカメが一杯入ったバケツ
茎が細いなぁ 寒の戻りが終わると水温も上がる それからだ 彼は茎を刻んでつくだ煮を作る
これでご飯を食べると何杯でもいける 浜ちゃんは呑み助ではない 湾の男にしては珍しい
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ジャンキーの旅          No2 Ward・・・・・46

2014-03-07 | 3章 デリー中央第一刑務所No2Ward

 ぼくは一度大きなミスを犯してしまった。買物の時だろうと思うクーポン券の間に挟んでいたパケを落とした。それを黒人のリーダーが見つけ後でそれを同じ場所に置き誰が探しに来るのか見張っていたのだ。パケを落とした事に気付いたぼくはショッカンに相談し2人で探し回った。見張っているとは知らないぼくらはパケを見つけ拾ったところで奴に捕まった。奴は何をしたかったのか、刑務官への報告はしていないし出来ないだろう。誰から買ったのか、と愚図愚図言ってパケを返そうとしなかったが最後には戻してくれた。その代償としてビリ4本を取られた。もしインド人が見つけ刑務官に報告していればその程度では済まない。奴はぼくへ貸しを作ったという優位な立場に立った、高値のビリを買わされるかもしれない。模範囚とはいえお金は必要だ。彼は今年の正月で7回目だとぼくに言った、気の遠くなるような時間だ。20代の大切な時期の10年間、その代償の支払いは大き過ぎる。
 寒い日が続いている。毛布を3枚重ねて掛けているがインドの毛布は重くて厚いだけで暖かくない。肩の隙間から冷たい風が入ってくる。トイレから戻ってくるサンダルの音もパタパタと急いで寝ているぼくの横を通り過ぎた。夜中11時半、眠れない。静かだ。寒くて頭から毛布を被って眠る。
   1月4日(水曜日)
 明日は裁判所出頭日になっている。午後、弁護士がセンターゲート・オフィスに面会に来た。ぼくが依頼した弁護士のジュニアーらしい。明日もボスではなく彼が立ち会うらしい、それとマリーだ。弁護士はフィリップスの意見を重視して決めた。ぼくの為、外で働いてくれる人がどうしても必要だ、大使館、弁護士それとぼくを繋ぐ大切な要がマリーだ。彼女を信用して今後の裁判の進行を考えていきたい。ぼくはマリーに託す大使館宛の手紙を書いた。
一、マリーはぼくが信頼する代理人です。
二、マリーが持参するぼく自筆の手紙での依頼については対応して頂くようお願いします。


冬型の天候が続いている 北西の冷たい風が強く吹く こんな日は何もできない
去年の今頃は甲イカ 飯蛸が釣れ 青なまこは幾らでも採れた 
イカは卵を抱いて産卵のために湾へ入ってくる 今その反応がない
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ジャンキーの旅          No2 Ward・・・・・45

2014-03-04 | 3章 デリー中央第一刑務所No2Ward

 毎日同じ夜の営みが行われている。ゲームをする者が多い。ベッドの上で横になって考え込んでいる者、マガジンを読んでいる者、雑談している者様々だ。ぼくのように毎日、日記を書いている者は他にはいない。テレビは画像を流してはいるが見ている者は誰もいない。早くスタッフを入れたいのだがネットの中でスリランカ人がトランプゲームをやっていていつ終るか分からない。昨夜のように停電でもしたら最悪だ、一度だけでも粉を入れておきたい。トイレでやるのには不安がある。鍵はないのだからいつ人が来てドアーを開けるか分からない。ディクソンは仲の良いインド人とバラックの奥トイレでチェーシングしていて捕まった。スニッフなら何とでも誤魔化せたのにトイレに火とアルミホイールを持ち込んで二人でやるなんて考えられない。確かにその夜ディクソンはぼくにダークブラウンの小さな塊りを見せた。
「チャラスか オピューム?」
「いやスタッフだ」
スタッフはパウダー状態だとぼくは思い込んでいた。
「どうして使うんだ?」
「チェーシングだ」
この大部屋で火を使い数分間チェーシングするなんて不可能だ。だから奴らはトイレに行ったのだ。
 毎日通路で寝ているがあほくさくてやってられない。食器一揃いを買って一人でやっていけばお金はそんなに必要ない。野菜にしても石鹸などの生活用品、ビリ、スタッフも自分の分だけ用意すれば良い。だがここで孤立するのは避けたいという気持ちがあって出来ない。新しくスリランカ人のキタが入って来てぼくらのグループは8名になった。トマト、オニオンを各2kg買っても一週間も持たない。食事時インド人やアフリカンが野菜を貰いに来るとディクソンの馬鹿は適当にやってしまう、その上 more want と言う。そうして奴らから何を助けてもらっているというのかオンリー・ギブでテェィクがない、ギブだけでは成り立たないのだ。その事によって自分達がやっているドラッグを見て見ぬ振りをしてもらいたいのか。アフリカンも人のことは言えない事情がある筈だ。自分はドラッグをやらないからといって密告すれば逮捕された者が逆にアフリカンの組織をゲロする。刺せば刺し返えされる共同体なのだ、お互いという事ではないのか。


朝 海へ様子を見に行った 強風、波浪注意報は出されていなかったが海面を風が奔っている
向かい風だ 自転車が進まない 通称タンク前を左へ曲がるとSさんが竿をだしていた
どう あかん 今呑み助が帰ったばい そりゃ良かった 会わないですんだ
帰りスーパーに寄って一人用パック くじらのベーコンとねぎとろを買った 晩酌用だ
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ジャンキーの旅          No2 Ward・・・・・44

2014-03-02 | 3章 デリー中央第一刑務所No2Ward

フィリップスが一度、唇と左目に青黒い痣をつくっていた事があった。裁判所出頭の日だ。留置場で何かトラブルがあったのだろう、激しく打ち込まれた痕だ。かれはドラッグをやらない、均整のとれたアフリカンらしい強靭な体をしていた。インドにもマフィア、暴力団と言われる様なものがあったように思う、ぼくは実態を知らないが。裁判所の留置場は広い、取巻きを連れたインド人のボスらしい男がいた。そこへやはり其れらしい風体の者が呼び込まれた。それを隠すインド人の人垣。何が行われているのかは想像に難くない。第2収監区の陽当たりの良い場所で敷物の上に腰巻姿で横たわりオイル・マッサージを受けていた男はそんな雰囲気を漂わせていた。刑務所内でもインド人社会と外国人社会は一線を画していた。低カーストのインド人だけが外国人社会に下働きのような形で入り込んでいた。
 インド人は今日、面会があった外国人に合計で10ルピーのクーポンを払えと掛け合いに来た。払え、払う必要がないで揉めている。ここCバラックは広くて収監者も多い。バラック内の通路、トイレ等の掃除は誰がやるという決まりはなく今までの慣例でインド人が来てやっていた。その報酬として面会があった者達から合計で10ルピーを集めインド人に渡すというものだ。そういう仕事をしているインド人は低カーストで貧しい、外国人の仕事をやって幾らかのクーポンを得ようとしていた。房やトイレの掃除、他には洗濯、食器洗い、食事の受取り、素焼きの瓶での飲み水運び、そんなものだろう。幾らの金額になるのかぼくは頼んだ事がないので分からない。


朝 晴れた Tさんがワカメ採りに行こうと車で迎えに来た 友人に貸したワカメの道具は
竹の真ん中からぼっきりと折れている ぼくも借りた道具を折ったことがあり文句は言えない
しようがない作り直しだ やれやれさぁ作業にかかろうとするとちょうど大潮の満潮になった
潮が満ちて苦労したが まあそれでもかなりのワカメを採った 
茹でて冷凍パックが終わったのは昼過ぎだ 一杯飲んでラーメンを食べに行った やれやれだ
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