上海神殿の発表、黄信号？

[上海、外灘（がいたん）、かつての租界、観光地区]

　今年４月５日、春季総大会でネルソン大管長は上海に神殿ができると発表して教会員を驚愕させた。この上海神殿を取り巻く状況について、ソルトレークトリビューン紙は４月29日付けで、上海に神殿が建つ可能性について見通しは必ずしも楽観できないと報じた。

　心臓の外科手術の面で指導したり中国に講義のため滞在したりして、中国から他の誰よりも信頼を勝ち得ているネルソン大管長であるが、上海の神殿について、「小規模な多目的集会所が神殿儀式を受けられる機能を具えることになる」、「初め予約制で受ける形になる」、「外国から旅行者が訪問するような神殿にはならない」と控えめな表現をしている。香港神殿が改修工事で使用できなくなることも背景として考えられると同紙は見ている。

　大管長の発表後数日して、上海市倫理宗教事務局は二度、「モルモンの神殿」が同市に建設されることについて何も聞いていない、とウェブ上で表明した。そして微博（ウエイボ、中国のトゥイッター）で同局は、「外国人は中国領土内に宗教組織を設けることも、宗教活動を行なう地域を築くことも許可されていない」と書き、「アメリカのモルモン教会が神殿建設を発表したというニュースはアメリカ側から聞こえているだけである」と質問に答えている。後に上海当局は上海に神殿の件は何も聞いていない、と繰り返し述べている。「これは米教会の希望的な想いであって、現実的な拠り所に基づいていない」と加えている。

　北京でも上海でも末日聖徒（米人）はビルを借りて集会を開いていて、中国籍の会員も広い家に集まったりして、自分の集会所も礼拝堂も持つことを許されていない。そこへ急に神殿を建てる許可が下りるとは考えられない。

　近年、中国政府の宗教に対する締め付けが厳しくなっていて、宗教の中国化が進む時になお、実現性が覚束なく感じられるのである。

　

　末日聖徒イエス・キリスト教会は、公認された宗教に数えられていないけれども、中国政府の法律と伝統に沿うよう注意深く振る舞ってきた（伝道しない、布教冊子などを配布しない）。信頼を得て、控え目に駐在米人の信仰の自由を、また漢族会員の家庭における信仰の集まりを許可されてきている。それで、上海に神殿建設についても上級要人との申し合わせ、あるいは合意があるのではないか、と見る人もいる。しかし、その可能性は不明である。現に、７月２日現在、教会の神殿建設予定のリストに上海は入っていない。

 

　*ソルトレークトリビューン紙記事　https://www.sltrib.com/religion/2020/04/29/plans-an-lds-temple/