コンデ氏は、小さな活字で300ページ以上ににわたり、アメリカの軍事政権の悪行を暴露しています。その長い説明を要約しますと、次のようになります。
・アメリカが余計な干渉をしなければ、朝鮮には統一された社会主義国家が生まれていた。ソ連の協力で、人民を解放する素晴らしい国ができていたはずだ。
氏の叙述はアメリカの悪口の後で、常に日本への敵意が続きます。
・米軍事政権は、朝鮮の人民を抑え込むため、日本が残した統治組織を利用し、日本以上の圧政を行い、人民の苦しみと悲惨さを放置した。
コンデ氏だけでなく、この書の出版に協力した左翼主義者たちは十分な調査もせず、頭から日本叩きをし、朝鮮人を弾圧したと述べます。出版当時の状況を思えば、この本は日本で多くの人間に読まれただろうと推察できます。マルクス主義に憧れる日本人だけでなく、在日の朝鮮人も意を強くして読んだはずです。
本はさらに韓国・北朝鮮に持ち込まれ、彼らの「恨日」に貢献したと思われます。具体的な事実でアメリカを攻撃すると、必ずそこに日本への憎しみが添えられているので、読んでいる間ずっと怒りをこらえました。
現在の北朝鮮を見れば、コンデ氏たちの考えが見当違いだっだことが分かります。社会主義国家として朝鮮が統一されていたら、朝鮮民族が幸せになったと、こんな意見ですから、「歴史的な価値」があるというのはそういう意味です。
トルーマン大統領の『回顧録』の中に書かれている、朝鮮占領後3ヶ月の時点で、ホッジ将軍が報告した言葉が紹介されています。
・現在の状況では、アメリカの朝鮮占領は疑いもなく、政治的、経済的などん底状態にまで押しやられる。
・ここからは極東におけるアメリカの威信を、回復することはおぼつかない。
・現状のままなら、アメリカとロシアが同時に朝鮮から撤兵し、あとは朝鮮人の思うにまかせ、必然的に起こる国内動乱の中から、みずからが清浄化の方向へ動くよう、ロシアとの協定を真剣に検討するよう勧告したい。
これに対し、コンデ氏は次のように述べています。
・ホッジの結論は、正直で、賢明な判断だった。
・アメリカの政策が、この判断に基づいていたら朝鮮戦争など起こらず、朝鮮の状況は大いに違ったものになっていただろう。
・この時アメリカ軍が南朝鮮に到着してから3ヶ月、ソ連軍が北朝鮮に入ってから、4ヶ月が経過していた。
・この二つの地域で取られた決定は、全く異なっていた。
・両国の占領が始まった時、すでに朝鮮全土には、人民共和国委員会が樹立され、権力を行使していた。
・北部ではソ連が、人民の意志に基づき、つまり民主的に人民が統治し続けることを許可した。
・土地改革と昔の日本人企業の国有化は、大多数の朝鮮人民に支持された。
・これに反対した比較的少数の者は、地主、実業家、対日協力者など、自分の労働で、暮らしを立てることに慣れていない人々で、彼らは南部に逃亡した。
・南部のアメリカ地区では、人民共和国委員会は弾圧された。
・日本人企業の国有化の要求や、アメリカの政策より少し左寄りのことを実行しようとすると、その努力は妨害された。
・ホッジ将軍が発した三大布告は、朝鮮人民がみすがら作った組織を通じて、自治を行うという可能性を奪ってしまった。
〈 ホッジ将軍が発した三大布告 〉
1. 日本人の政府が出したすべての法律、規則は引き続き効力を有する。
2. 日本人によって維持された朝鮮の慣習は、正当な権力によって変更されるまで有効である。
3. 軍政府は、日本の朝鮮総督の権限をすべて引き継ぐ。
ホッジ将軍が発した三大布告は、以上です。著者が批判しているのは、北朝鮮でソ連がやったように、日本政府の作った法律や諸制度を全廃せず、継承すると宣言したところです。
社会主義国を作ろうとするソ連には、日本の影響を残すものはすべて邪魔でしかありません。破棄し、破壊し、消滅させなければ、社会主義朝鮮が作れません。
しかしこれから、ソ連や中国の共産主義と戦おうとするアメリカは、反共の日本が作った政策を継承します。アジアで共産主義と戦い、懸命に国を守ろうとしたのは日本だけでしたから、米国の指導者も朝鮮統治に関しては日本の制度を継承しました。
それなのにアメリカは、日本を悪として叩き、解放者としての姿で朝鮮人に臨もうとしました。なぜならアメリカの占領に韓国が激しい拒絶反応をし、アメリカそのものが憎悪されたからです。アメリカは、韓国の世論に合わせ、日本を極悪非道の国としなくては占領政策が遂行できなくなりました。
それはちょうど現在の米国が、かけがえのない同盟国として日本を重要視しながら、一方で韓国の機嫌を取り、私たちを傷つける言動をしているのと同じ姿勢です。アメリカの矛盾した動きは、この時から始まっていました。
昭和21年に韓国共産党が発表した、党の目的とする三項目を氏が紹介しています。これを読みますと、日本の存在は、日本人が認識している以上に、当時も今も韓国に大きな影を投げかけているのが分かります。
1. 日本帝国主義を、朝鮮から完全に駆逐すること。
2. 親日朝鮮人を、公的生活と軍政府から追放すること。
3. 朝鮮における、進歩的民族運動を支持すること。
韓国の歴代政権が取り組んでいたのは、上記3項目だった言うことが分かります。朴槿恵氏が、「日本への恨みは千年消えない。」と言いましたが、本音なのかも知れません。
次に、太平洋軍総司令官としてマッカーサー元帥が、朝鮮人民へ発した布告文の帥一部を紹介します。
韓国も北朝鮮もことあるごとに、日本が韓国人を奴隷として扱ったと見当違いの攻撃をしますが、これを最初に公的に発言したのがマッカーサー元帥でした。大東亜戦争の責任をすべて日本に負わせるため、元帥は日本国憲法だけでなく、日本の悪評をアジアで広めた最初の人物だったことを発見しました。
〈 アメリカ太平洋軍総司令部布告第一号 〉
朝鮮人民へ
アメリカ太平洋軍総司令官として、余は、ここに次のごとく宣言する。
余の指揮する戦勝軍はきょう、北緯38度線以南の朝鮮領土を占領する。朝鮮人民の長い間の奴隷状態と、やがて朝鮮は解放され独立するであろうという朝鮮人民への決意を心にとどめ、占領の目的は、朝鮮人民の個人的、宗教的権利を守ることであることを、余は保証する。
第一 住民に対する全統治権は、当分の間、余の権限下に行使される。
第二 公共福祉等の全公共事業の幹部並びに従業員、国家公務員、地方公務員、および
他の重要な任務にたずさわつているものはすべて、通常の機能と任務を引き続き
遂行し、すべての文書と財産を守らなければならない。
第三 すべての者は、余の命令と余の権限下に出される命令に従い、占領軍に対する反
抗行為、および公共の治安と安全を乱すすべての行為は、厳重に処罰される。
( 第四、第五、第六は割愛します。)
横浜にて記す
1945年9月7日 アメリカ陸軍元帥
アメリカ太平洋軍総司令官
ダグラス・マッカーサー
マッカーサー元帥は大時代的で、尊大で、芝居かがっているとの批判がありますが、布告文を読むと、なるほどと思わされます。日本政府に対しても、同様の布告をしていたのだと思うと、敗戦国の惨めさを改めて知ります。要領よく変節した卑怯者もいましたが、耐えていた日本の政治家と軍人に敬意の念を捧げたくなります。
本日は、ここまでといたします。