今回はブレジンスキー氏の「中国共産党論」を、紹介します。
「中国共産党の改革は、おそらく成功するだろう。」「中国にとって、成功はプラスになるだろうが、イデオロギーの面で、また中国共産党の純粋性という面では、失うものも多いと思われる。」
「今後の数十年間に中国は近代化を果たし、力をつけ、政治面でも、経済面でも国際社会の舞台で、大きな役割を演じるようになるかもしれない。」
本を出版当時、ソ連はゴルバチョフ書記長の時代です。中国では趙紫陽氏が活躍していました。出版された翌年にソ連邦が解体し、ベルリンの壁が崩れます。中国が天安門で学生のデモ隊を、戦車でひき殺し弾圧したのは、出版のその年の10月です。
「中国の歴史的再生を進める上で、共産党の指導者は理論の大幅な、見直しをはかっている。」「プロレタリアートの独裁を主張する、革命的な党という主張が、次第に薄れ、国家を後ろ盾とした、新商人階級の独裁を主張する近代化思考の党、というニュアンスに変わってきた。」
「中国共産党の軌跡は、東欧諸国やソ連とは違っている。中国の共産主義は、国産である。」「中国の若い指導者は、ロシア革命に衝撃を受けたが、モデルとして見習うべきとは考えなかった。」
「注目すべきは、伝統ある文明を誇る中国人は、自らの手で革命を達成し、戦略を立てたいという、知的文化的自負心があったということだ。」
アメリカがイギリスの支配から離れ、独立宣言をしたのが1776年ですから、国の歴史はやっと200年を越えたばかりです。2000年以上の歴史を持つ中国に対し、氏のような知識人は理屈抜きに引け目を感じるのでしょうか。日本駐在米国大使だったライシャワー氏も、中国を礼賛し、日本は中国文化圏内の国の一つと考えていました。
米国人指導者たち中国認識を、私たちは肝に銘じ、もしかすると、欧米人の認識として受け止める必要があるのかもしれません。
現在トランプ大統領がアジアでの覇権を中国と争い、敵対しているからといって気を緩めてはなりません。米国の指導者層に、「中国文明と歴史」への敬意の念が流れている事実が、氏の意見から伺えます。
「中国共産党はイデオロギーと歴史を、うまく結びつけることができた。」「単に労働者の不満をすくい上げる、階級闘争だけでなく、100年にわたって西欧諸国に痛めつけられたきた自国の屈辱感や、愛国心に結びつけて、イデオロギーを訴えたのである。」
「こうした国民感情は、日本の侵略によって、さらに燃え上がった。」「中国の悠久の歴史は、19世紀になりどん底に落ちていた。」「文化的に誇り高い中国人にとって、これは耐え難いことであり、近代的な民族論と急進的な社会改革論が、ここ中国でひとつになった。」「ソ連でさえ、共産主義が民族主義の色合いを帯びたのは、ドイツとの戦争中だけであった。」
宮沢氏以下「憲法研究委員会」の学者たちは、GHQの権力に膝を屈し、変節した者がほとんどでしたが、ブレジンスキー氏は変節した学者でありません。予測が間違っていたとしても、氏の中国礼賛には筋が通っています。
「指導者がはっきりした民族意識を持つと、中国共産党はイデオロギーそのものを、定義しなおす必要に迫られた。」「中国共産党の指導者が中国の再建を、古来の伝統と、価値観の上に求めようとした切り替えの素早さには、驚かされる。」
毛沢東が行った文化大革命時の、伝統破壊の激しさと暴力を思うと、そんなことは言えないと考えますが、一度植えつけられた中国への親近感は、多少の悪材料では揺るがないようです。
「中国の高度な文化、孔子の思想、国家に奉仕する官吏階級、優れた商業的手腕に裏付けられた文化、これらにはしっかりした伝統があるため、共産主義といえども、その影響は免れなかったのである。」
これを読んだとき、中国の日本攻撃は、共産党政権が続く限り収束しないと理解しました。習近平氏が国民の記念日にした「南京事件」と、韓国と連携した「慰安婦問題」は、まさに氏が指摘した中国共産党の基本方針でした。
「中国共産党はイデオロギーと歴史を、うまく結びつけることができた。」
つまり彼らは、「100年にわたって、西欧諸国に痛めつけられたきた自国の屈辱感や愛国心に結びつけて、イデオロギーを訴えたのである。」・・ということです。
江沢民氏が執拗に「歴史認識が足りない」と、日本政府を責め立てたのかが、これで分かります。これが中国式の共産主義活動であり、中国式建国活動だったのです。中国を痛めつけてきたのは、本来なら英、仏、独の西欧列強でしたが、屈辱と憎しみの対象を、彼らは日本に絞っています。
天安門事件の発生後、結束した欧米諸国が経済封鎖で中国を追い詰めた時の、日本政府の対応と、当時中国の外交部長だった銭基深氏の言葉を思い出すと、答えが見つかります。
「西側同盟の中で、もっとも弱い部分である日本を、うまく利用した結果だ」
中国は勝てない相手とは戦わず、勝てると見た弱い相手と、徹底的に戦うのです。しかもアメリカには、ブレジンスキー氏だけでなく、親中の大統領や政治家が沢山いますから、中国は安心して日本攻撃ができます。その上アメリカが、日本攻撃のための土台まで整えています。それが、次の三つです。
1. 東京裁判史観の、国民への浸透
2. 親米と親中に連動する、自民党内の有力政治家
3. 反日左翼マスコミによる、親中報道網の確立
こうして国民の多くが「平和憲法信者」となり、「お花畑の住民」となり、日本の歴史や文化や伝統の破壊に精を出しています。不愉快なブレジンスキー氏の著作ですが、私たち日本人には、貴重な情報と警報を与えてくれました。
息子たちに言います。どうか、こんな馬鹿な国民にならないで欲しい。安倍政権は憲法改正を後回しにし、目先の利益だけ求める財界に妥協して「外国人移民法案」成立させてしまいました。
( 今回で終わる予定でしたが、日本共産党に関する氏の興味深い意見を、紹介したくなりました。あと一度だけ、ブログを綴ります。)