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ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

大いなる失敗 - 8 ( マスコミの宣伝 )

2018-12-08 18:03:15 | 徒然の記

 今回も、「なぜ未だに、日本ではマルクス主義の信奉者がいるのか。 」別の言葉で言うと、「なぜ70余年間も、社会主義の間違いに気づかなかったか。」について、検討します。

 前回の目次で見る通り『資本論」そのものは、立派な学術書です。

 「マルクスの理論はいまでも生きている。」「自民党の悪政で、貧富の格差は広がるばかりだ。」「「資本論」は不朽の預言書だ!」

  学生に檄を飛ばす左翼教授の言葉を、ブログを訪問された方が教えてくれました。ブレジンスキー氏も、賞めていました。

  「この考え方は、何百万人もの心をとらえ、」「彼らに、期待を抱かせた。」「新たに政治に目覚めた、大衆の心理に、」「マッチした思想であった。」「この意味では、偉大な宗教の魅力に似ている。」「どちらも、人生の意味を余すところなく説いており、」「その解釈の全体性と、単純明解さが、人々を捉え、」「安心させ、そして熱狂的な行動に駆り立てたのである。」

  つまりマルクスの書は、時代にマッチした思想だったのです。彼の指摘通り、富める資本家と、搾取されるばかりの貧しい労働者がいて、悲惨な日常がありました。極端な貧富は人の心を傷つけ、暴利をむさぼる資本家への怒りや憎しみが溢れていました。そこへ出てきた『資本論』ですから、瞬く間にその思想が広がりました。
 
 しかし最大の問題は、「思想を実現するには、どうすれば良いか。」でした。マルクスは過去の歴史を分析し、彼独自の説を展開しましたが、「移行手段」については語りませんでした。歴史の必然として、資本主義は崩壊する。崩壊した後の社会の担い手は、虐げられてきた労働者階級だと、そこまでしか述べていません。
 
 レーニンが、「あらゆる反対分子を、僻地の強制収容所へ、送り込め。」と命じ、「政治的反対者に対しては、議論するより、銃で対決する方がマシだ、」と、述べても異論を挟めないほどの、資本家の過酷な支配が当時の社会にありました。
 
 「なんでもいいから、血も涙もない資本家どもを追放してくれ。」と、過激なレーニンを支援する声の方が大きかったのでないかと、考えます。レーニンは二千万人、スターリンは六千万人以上、毛沢東は四千万人と、彼らが死に追いやった人間の数が、いろいろな本で語られています。どの数字が正しいのか、検証したことはありませんが、どちらにしましても、マルクスの思想を実践するには、大量の殺人が避けられないという現実です。
 
 多くの人間がマルクス主義の間違いに気づけなかったのは、二つの理由です。
 
 1. マルクスの思想の学問的評価と、実践論としてのレーニン主義、スターリン主義を混同してしまったこと。
 
 2. レーニンとスターリンの残忍な手法に劣らない、資本家たちの労働者の酷使が蔓延していたこと。
 
 マルクスの思想と、「レーニン主義」「スターリン主義」の政治論は、別物です。現在存在している社会主義国は、「レーニン主義」と「スターリン主義」なしでは、語れない国です。私たちが目を覚ますべきは、大量虐殺を伴うマルクス主義でも、正しいと言えるのかという現実です。
 
 30年前、カンボジアはポルポトの率いる、クメール・ルージュに支配された国でした。共産主義者だった彼は、平等な社会を作る理想に燃え、反対者の処刑をためらいませんでした。人口およそ800万人のカンボジアにおいて、彼は4年間で、国民の4分の1にあたる、200万人を処刑したと言われています。
 
 スターリンの支配体制が完成するにつれ、虐殺の情報は隠されました。毛沢東の中国でも、ポルポトのカンボジアでも同じことでしたが、社会主義国の負の情報は他国に漏れませんでした。反日の朝日新聞が、スターリンのソ連を誉め、毛沢東の文化大革命を賞賛しました。
 
 「なぜ70余年間も、私たちは社会主義国の間違いに気づかなかったか。」の原因として、マスコミの宣伝をあげます。しかし日本には、もう一つの原因があります。それは、次回に報告したいと思います。
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大いなる失敗 - 7 ( 資本論の目次紹介 )

2018-12-08 14:29:17 | 徒然の記

 今回は、ブレジンスキー氏の著作を離れ、「なぜ未だに日本ではマルクス主義の信奉者がいるのか。 」を検討します。

 18世紀の半ばから19世紀初頭にかけ、イギリスを中心に産業革命が起きました。ワットによる蒸気機関の発明をきっかけとし、それまで人力に頼っていた動力源が、機械化されるようになりました。

 細々と行われてきた家内工業が、高度化された機械のおかげで、大規模な工場制機械工業へと変貌しました。特に綿織物業界の発展には、目覚しいものがあり、これに蒸気船や機関車の発明による交通革命が、さらに産業の発展に寄与しました。工場の所有者は事業を拡大し、ますます大量の労働者を使い、大きな利益を上げ富と権力を手にました。

 一方で貧しい労働者は、安い賃金で酷使され、長時間労働を強いられていました。それでも工場の拡大が続き、人手不足のため、未成年の少年や少女までが、安価な労働力として使われるようになりました。

 「貧しきことを憂えず、平しからざるを憂う(憎む)」

 ここには、マルクス主義の原点となる心情が集約されていると思っています。貧しくても、苦くしても、周りが皆同じ状況にあるのなら、頑張れます。むしろ互いに協力し、明日のため、邁進する勇気が生まれます。

 しかし貧しさの対岸に、裕福で贅沢で自由な人間がいて、毎日眺めていると耐えられなくなります。極端な貧富の差は、富める者への怒りや憎しみを育てます。

 「なぜ自分たちだけが、こんな貧しさに苦しむのか。」「神様は救ってくださらないのか。」

 病気をしても、仕事を休めず、休んでも医者にかかれず、薬も手に入らず、貧乏な労働者は打ち捨てられ、死んでいくだけでした。工場主は彼らを一顧だにせず、いくらでも他の貧乏人を補充し、使い捨てていきます。

 悲惨な現実を見て、マルクスが資本論を書きました。彼は27年の歳月をかけ、「第一部」「第二部」「第三部」となる、「資本論を完成します。」彼が、歴史に名を残す大思想家の一人であることに、間違いはありません。

 今回は資本論の目次を、息子たちと訪問される方々に紹介します。スペースの関係で、本論は次回からとします。 

第1部 資本の生産過程

  • 第1篇 商品と貨幣
    • 第1章 商品
    • 第2章 交換過程
    • 第3章 貨幣または商品流通
  • 第2篇 貨幣の資本への転化
    • 第4章 貨幣の資本への転化
  • 第3篇 絶対的剰余価値の生産
    • 第5章 労働過程と価値増殖過程
    • 第6章 不変資本と可変資本
    • 第7章 剰余価値率
    • 第8章 労働日
    • 第9章 剰余価値の率と総量
  • 第4篇 相対的剰余価値の生産
    • 第10章 相対的剰余価値の概念
    • 第11章 協業
    • 第12章 分業とマニュファクチュア
    • 第13章 機械と大工業
  • 第5篇 絶対的および相対的剰余価値の生産
    • 第14章 絶対的および相対的剰余価値
    • 第15章 労働力の価格と剰余価値との大きさの変動
    • 第16章 剰余価値率を表わす種々の定式
  • 第6篇 労賃
    • 第17章 労働力の価値または価格の労賃への転化
    • 第18章 時間賃銀
    • 第19章 出来高賃銀
    • 第20章 労賃の国民的相違
  • 第7篇 資本の蓄積過程
    • 第21章 単純再生産
    • 第22章 剰余価値の資本への転化
    • 第23章 資本主義的蓄積の一般的法則
    • 第24章 いわゆる本源的蓄積
    • 第25章 近代的植民理論

第2部 資本の流通過程

  • 第1篇 資本の諸変態とそれらの循環
    • 第1章 貨幣資本の循環
    • 第2章 生産資本の循環
    • 第3章 商品資本の循環
    • 第4章 循環過程の三つの図式
    • 第5章 通流時間
    • 第6章 流通費
  • 第2篇 資本の回転
    • 第7章 回転時間と回転数
    • 第8章 固定資本と流動資本
    • 第9章 前貸資本の総回転。回転循環
    • 第10章 固定資本と流動資本とにかんする諸学説。重農主義者とアダム・スミス
    • 第11章 固定資本と流動資本とにかんする諸学説。リカードウ
    • 第12章 労働期間
    • 第13章 生産時間
    • 第14章 通流時間
    • 第15章 資本前貸の大きさにおよぼす回転時間の影響
    • 第16章 可変資本の回転
    • 第17章 剰余価値の流通
  • 第3篇 社会的総資本の再生産と流通
    • 第18章 緒論
    • 第19章 対象についての従来の諸叙述
    • 第20章 単純再生産
    • 第21章 蓄積と拡大再生産

第3部 資本主義的生産の総過程

  • 第1篇 剰余価値の利潤への転化、および剰余価値率の利潤率への転化
    • 第1章 費用価格と利潤
    • 第2章 利潤率
    • 第3章 剰余価値率にたいする利潤率の関係
    • 第4章 回転の利潤率に及ぼす影響
    • 第5章 不変資本の充用における節約
    • 第6章 価格変動の影響
    • 第7章 補遺
  • 第2篇 利潤の平均利潤への転化
    • 第8章 相異なる生産部門における資本の平等な組成とそれから生ずる利潤率の不等
    • 第9章 一般的利潤率(平均利潤率)の形成と商品価値の生産価格への転化
    • 第10章 競争による一般的利潤率の均等化。市場価格と市場価値。超過利潤
    • 第11章 労働賃金の一般的諸変動が生産価格に及ぼす諸影響
    • 第12章 補遺
  • 第3篇 利潤率の傾向的低下の法則
    • 第13章 この法則そのもの
    • 第14章 反対に作用する諸原因
    • 第15章 この法則の内的矛盾の展開
  • 第4篇 商品資本及び貨幣資本の商品取引資本および貨幣取引資本への(商人資本への)転化
    • 第16章 商品取引資本
    • 第17章 商業利潤
    • 第18章 商人資本の回転。諸価格
    • 第19章 貨幣取引資本
    • 第20章 商人資本にかんする歴史的考察
    • 第21章 利子生み資本
    • 第22章 利潤の分割。利子率。利子率の「自然」な率
    • 第23章 利子と企業者利得
    • 第24章 利子生み資本の形態における資本関係の外在化
  • 第5篇 利子と企業者利得とへの利潤の分裂。利子生み資本
    • 第25章 信用と架空資本
    • 第26章 貨幣資本の蓄積、その利子率に及ぼす影響
    • 第27章 資本主義的生産における信用の役割
    • 第28章 流通手段と資本。トゥックおよびフラートンの見解
    • 第29章 銀行資本の構成部分
    • 第30章 貨幣資本と現実資本1
    • 第31章 貨幣資本と現実資本2(続)
    • 第32章 貨幣資本と現実資本3(結)
    • 第33章 信用制度のもとにおける流通手段
    • 第34章 通貨主義と1844年のイギリス銀行立法
    • 第35章 貴金属と為替相場
    • 第36章 資本主義以前
  • 第6篇 超過利潤の地代への転化
    • 第37章 緒論
    • 第38章 差額地代。総論
    • 第39章 差額地代の第一形態(差額地代1)
    • 第40章 差額地代の第二形態(差額地代2)
    • 第41章 差額地代2 その1、生産価格が不変な場合
    • 第42章 差額地代2 その2、生産価格が低下する場合
    • 第43章 差額地代2 その3、生産価格が上昇する場合。結論
    • 第44章 最劣等耕地にも生ずる差額地代
    • 第45章 絶対地代
    • 第46章 建築地地代。鉱山地代。土地価格
    • 第47章 資本主義的地代の創世記
  • 第7篇 諸収入とその源泉
    • 第48章 三位一体の定式
    • 第49章 生産過程の分析のために
    • 第50章 競争の外観
    • 第51章 分配諸関係と生産諸関係
    • 第52章 諸階級
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