今回は、「なぜ未だに日本では、マルクス主義の信奉者がいるのか。 」について、日本の特殊事情を説明します。
社会主義を信じる教授は、戦前は保守教授たちに押さえ込まれていましたが、GHQの統治が始まると、立場が逆転しました。マッカーサーが彼らを解放したことで、学内を越え、学界での勢力争いに大勝しました。その喜びを、民法学者我妻栄氏の回想記から一部を紹介します。
「委員のうちの相当の数が、貴族院議員や、法令制定を任務とする委員会の委員となったので、その際には憲法研究委員会で得た知識を活用した。」
氏の言う委員とは、昭和21年に東大内に作られた「憲法研究委員会」の委員のことです。南原繁総長の発案で作られたとなっていますが、構成メンバーを見ますと、GHQの意向を受けた人選であることが事情を知る者には分かります。
「敗戦日本の再建のために、大日本帝國憲法を改正しなければならないことは、」「誰もが知っていた。」「多数の優れた学者を持つ、東京帝国大学としても、これについて、貢献する責務があると考えられたからであろう。」「発案者は南原総長であったが、学内にそうした気運がみなぎっていたことも確かであった。」
我妻氏は、このように説明しています。ここで「憲法研究委員会」の委員名を紹介します。
委 員 長 宮沢俊義(法学部)
特別委員 高木八尺(法学部) 杉村章三郎 岡 義武 末弘厳太郎
和辻哲郎(文学部) 舞出長五郎(経済学部)
委 員 我妻 栄(法学部) 横田喜三郎 神川彦松 尾高朝雄
田中二郎 刑部 荘 戸田貞三(文学部)
板沢武雄 大内兵衛(経済学部) 矢内原忠男
大河内一男 丸山真男(法学部助教授) 金子武蔵(文学部助教授)
「宮沢は、敗戦後、松本烝治憲法大臣と美濃部教授とともに、助手として、帝国憲法改正作業に、従事していた。その時は外務省に対して、憲法草案に関し、新らたな憲法は必要なしとアドバイスしていた。」
「占領軍が、松本大臣を嫌っていることを知ると、氏は彼らを裏切った。」「ここで占領軍に取り入れば、自分は、神のごとき権威になれると判断した。なぜなら、GHQは権力を振りかざすことはできても、細かな国際法や、憲法学の議論ができなかったからだ。」
以後東大の左翼教授たちは、政府委員として、あるいは議員として、その発言が重要視されるようになります。東大だけにとどまらず、関西、近畿、中部、中国、四国、九州、北海道と、教授たちの連携が広がり、マッカーサーと阿吽の呼吸で通じた彼らが一大勢力となり、現在の「憲法改正反対」勢力の先頭に立っています。
わざわざマルクス主義と直接関係のない話を、挿入したのは、敗戦後の学界の動きが、今日までの73年間、日本中を反日左翼の天下にした大元だと言いたかったからです。
メンバー表を見れば分かる通り、彼らは日本をリードした著名な学者たちです。彼らは全国で系列の教授を育成し、日本の学界と思想界を牛耳っていきます。反日の朝日やNHKに寄稿すれば、有識者の言として全国に発信されます。彼らの意に反する学者の意見は取り上げられず、戦前を肯定する教授は昇進の道を塞がれました。
戦前の彼らが、保守系の教授から冷遇されたのと、そっくり同じことをやっています。これが、「戦後日本の特殊事情」です。彼らがマルクス主義について、どのような意見をのべていたのかを、紹介します。
[ 大内兵衛 ]
「日本は、社会主義を否定したり、排斥したりすることは、決してできない筋と思われる。」「もともとマルクス主義又は、レーニン主義といっても、本来、個人の自由の要求に出発するものであり、到達点もそうであるから、階級的独裁を、人権の自由に優先させることでないのは自明であるが、一定の条件の元では、そういう傾向をもつのも又事実である。」
「ロシアの経済学は、二十世紀の後半において、進歩的な特色のある学問として、世界の経済学界で、相当高い地位を要求するようになるだろう。」「こういう歴史の変革のうちに、経済学者としていよいよ光彩を加える名は、レーニンと、スターリンでありましょう」
[ 宇都宮徳馬 ]
「中国共産党こそが、半植民地中国の解放という仕事において、献身的努力を、一番実行してきたという事実を誰も否定できないだろう。」「もしその点に疑いがあるというのなら、どん底にある貧窮者の地位向上において、共産主義者や、社会主義者と競争してみればよい。」
「歴史の論理として言っているのに、アメリカは、これを強盗の論理としてしか、受け取らないという食い違いが生じている。」
[ 末川博 ]
「人類のながい歴史のなかで、それぞれの民族や国家は波瀾興亡をくりかえして きたが、現代における奇跡といってもよいほどに、驚異的な発展をとげて、栄光と勝利に輝いているのは朝鮮民主主義人民共和国である。」
「かって幾世紀かの間、内憂と外患のために苦しんできた朝鮮民族は、いま金日成首相を天日と仰いで、社会主義国家としての基本路線をまっしぐらにつきすすみ、 ゆるぎない基盤を築きあげている。」
「まさに金日成首相は、百戦錬磨の偉大な政治家であるとともに、国際共産主義運動と、労働運動の卓越したリーダーである。」
「世界史上にもまれな、民族解放闘争を勝利へと導いた、人間金日成将軍の伝記は、感動あふれる一大叙事詩であり、輝かしい朝鮮 近代史であり、人類の良心とも、希望ともいえる不滅の人間ドラマである。」
「朝鮮民主主義人民共和国こそ、立命館大学が理想とする国家である。」