ねこ庭の独り言

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文明の衝突 - 8 ( 地域主義と愛国主義の台頭 )

2019-10-15 13:07:36 | 徒然の記
 本日はのっけから、著書の転記で始めます。
 
 「地域主義と宗教の復活は、世界的な現象であるが、」「特に顕著なのは、アジアとイスラムによる、西欧への文化的主張と挑戦であろう。」「この二つの文明圏は、20世紀後半の、四半世紀の間、力強い動きを見せてきた。」
 
 私の推測が当たりました。
 
 ・勢いを失いつつある西欧が、今度は四つの文明の挑戦を受ける時が来た
 
 ・特に中国とイスラム諸国が、敵意を剥き出しにし、立ちはだかりつつある
 
 6回目のブログで書きましたが、いい加減な推量ではなかったようです。
 
 「イスラム教の挑戦は、この宗教がイスラム世界で、」「文化、社会、政治の各分野で、広範な復興を遂げようとしている事実に、現われているし、」「それに伴う西欧の価値観や、制度の否定に見ることができる。」
 
 「一方アジアの挑戦は、東アジアの全ての文明圏、中華、日本、仏教、イスラムに、顕著であり、」「それぞれが、西欧との文化的相違を主張するとともに、」「時には互いに、共通する部分を強調する。」
 
 「アジアもイスラムも、自分たちの文化が、西欧よりも優れていると主張する。」
 
 私の印象では、日本はそんな主張をしていないと思いますが、私の知らない日本が別にあるのか、それとも単に氏の思い込みなのか、今は分かりません。しかし、次の意見には、うなづかされる部分があります。
 
 「この二つの文明圏の挑戦には、互いに関連しながらも、」「異なる背景がある。」「アジアの自信は、経済の成長に基づいている。」「一方イスラム諸国の自信は、社会の活性化と、」「人口増から、発したものである。」
 
 「アジアとイスラムの挑戦は、現在も、そして21世紀に入ってもなお、」「世界の政治を不安定にするような、影響を、及ぼし続けるだろう。」
 
 本の出版が、1998 ( 平成10 )年ですから、今から21年前、20世紀末の著作です。中国とアラブ ( 特にイランとシリア ) が、激しくアメリカと対立している状況を見ますと、今のアメリカが、西欧文明のトップランナーの位置にいますから、かなり適切に説明していると思えます。
 
 「東アジアの人々は、自分たちの経済が、力強い発展を遂げた理由を、」「西欧文化を移入したからでなく、」「自らの文化にこだわったためだと、見なしている。」「彼らは、言う。」「成功したのは、自分たちが西欧とは異なるからだと。」「今や彼らは、ひ弱な存在でなくなり、ますます力をつけ、」「かって利用した、西欧的価値観すら、攻撃の対象にしている。」
 
 「イスラム世界では、イスラム教の復興や、」「再イスラム化が、至上命題となっている。」「インドでも、西欧的な制度や価値観を否定し、」「政治や社会のヒンドゥー化を図ることが、時代の流れである。」
 
 「東アジアでは、政府が儒教を奨励し、」「政治や精神面の指導者たちは、国を " アジア化 " しようとしている。」
 
 「1980年代半ば、日本では日本人論が盛り上がり、」「日本とは、日本人とは何か、という問題を、」「夢中になって議論した。」
 
 「日本のある有名な文化人は、歴史的に日本は、」「外国文化を移入し、模倣し、洗練し、自国化させるというサイクルを繰り返し、」「再び外海へ門戸を開くという、サイクルの二段階目に差しかかっている、と言う。」
 
 日本の有名な文化人が誰なのか、知る由もありませんが、私の実感では、日本が西欧文明に対し、否定的・攻撃的態度をとっているとは思いません。むしろ日本は、聖徳太子以来の精神を持ち、国際社会では「和をもって、尊しとなす。」を実行し、自己主張を控えています。
 
 アメリカを筆頭とする西欧諸国に対し、戦闘的攻撃をしている中国やイランと、同列に語られることには違和感があります。「氏の意見に、部分的にうなづかされる、」と言ったのは、この違和感からです。
 
 「このように、世界的な規模で、地域主義が起こっている証拠として、」「宗教間の摩擦が、世界の各地で多発していることが挙げられ、」「中でもアジアと、イスラムの諸国において、」「経済的、人口統計的な活性化を、」「主な理由とする、文化的復興が起こりつつあることが、指摘できる。」
 
 書評は現在、150ページです。日本に関する叙述を除けば、概ね氏の意見に同意できます。今一つ反論すれば、「地域主義」と「愛国主義」を主張しているのは、西欧文明のトップランナーである、米国自身だということです。当時の氏に、トランプ大統領の出現が予想できなくて当然でなので、これ以上はやめます。
 
 世界はグローバリズムが終わりを告げ、「地域主義」と「愛国主義」の流れが大きくなるような気がします。トランプ大統領の出現と、孤高の存在である日本を頭に置きながら、明日も氏の著作を読もうと思います。
コメント
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