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文明の衝突 - 19 ( EAEC ( 東アジア経済協議体 )と日本 )

2019-10-29 19:52:14 | 徒然の記
 秋の夜長の読書を、楽しみたいと思います。氏が日本という国をどのように捉えているのか。著作の中から、該当する部分をまとめてみました。
 
 本題に入る前に、EAEC ( 東アジア経済協議体 ) について調べました。

  ・マレーシアのマハティール首相が、1990 ( 平成2 )年に提案した貿易ブロック構想である。
 
  ・EU(欧州連合)市場統合や、NAFTA(北米自由貿易協定)など、地域主義の動きに対抗したものである。
 
  ・ASEAN(東南アジア諸国連合)、日本、韓国、中国など、東アジア地域諸国も団結すべきとの発想から生まれた。
 
  ・しかしアメリカなどが、アジアのブロック化だと強く批判し具体化していない。
 
 オーストラリアが参加を希望したのに、マハティール氏が、ヨーロッパ人の国だと参加を拒んだのが、このEAECでした。進展していると思っていましたが、アメリカの反対で発足していませんでした。
 
 アジアの国々がEUに負けないようにと頑張っているのに、なぜ米国が反対をするのか。知るほどに、覇権を守りたいアメリカの自己中心主義が見えてきます。
 
 ASEANの加盟国についても、整理しておきます。
 
   ・  当初の加盟国は、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの5カ国。
 
   ・ その後、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオスが加盟し、1999 ( 平成11 )年にカンボジアが加わり、東南アジア10ヶ国がまとまった。
 
  ・  これにより、人口5億人を超える集合体となった。
 
 ハンチントン氏の説明を読みますと、日本の置かれた位置がよく分かります。 
 
 「東アジアに、意味のある地域的組織が生まれるには、」「それを維持できるだけの、文化の共通点が、存在しなければならないだろう。」「東アジアの社会には、確かにいくつかの共通点があり、それゆえ欧米と異なっている。」
 
 「マハティール首相によると、これにより協力の基盤ができ、」「EAECの促進が図れると、言う。」「この会議にはASEAN加盟国と、ミャンマー、台湾、香港、韓国が参加し、」「最も重要な参加国として、中国と日本も含まれると言う。」
 
 ここで氏が、マハティール首相の言葉を紹介します。
 
 「東アジア内の組織とはいえ、単なる地理的な集団でなく文化的な集団でもある。」「東アジア人は、日本人であれ、韓国人であれ、」「インドネシア人であれ、文化的には、ある程度似ている。」
 
 多少の違いがあってもヨーロッパ人がまとまっているし、アメリカも同様だから、アジア人もまとまらなければならないと言うのが、マハティール氏の意見です。
 
 「マハティールの協力者の一人の言葉によれば、その目的は、」「アジアで共通点を持つ国同士の、地域貿易を拡大することである。」「この考え方に基づいて、オーストラリア、ニュージーランドと米国が外された。」
 
 経済の発展が国を豊かにするのですから、世界の富を欧米諸国だけに占有させず、今後はアジアも一つになり経済圏を作ろうと言う提案です。
 
 「しかしEAECの成功を、決定的に左右するのは、日本と中国の参加である。」「マハティールは、日本の参加を熱心に要請した。」
 
 そう言うことだったのかと分かりましたが、日本のマスコミは大きな報道をしなかったと記憶しています。氏の紹介するマハティール氏の訴えは、私たちに届いていなかった気がします。
 
 「マハティールは、日本の聴衆に語った。」「日本はアジアです。」「日本は、東アジアの国なのです。」「この地理的、文化的な事実に、」「背を向けることはできません。」「あなた方は、ここに属しているのです。」
 
 マスコミが伝えなかった理由が、氏の次の説明でわかりました。
 
 「だが日本政府は、参加に乗り気ではなかった。」「一つには、アメリカの機嫌を損ねることを恐れ、」「また一つには、自らをアジアの一国と認識するかどうかで、」「意見が分かれていたからだ。」
 
 「日本が参加すれば支配的な立場に立たされ、参加国の懸念や不安を掻き立て、」「中国には、敵意を抱かせる可能性がある。」「かって数年にわたり日本が主導し、アジアに、円ブロックを作ろうと、盛んな討議がなされた。」
 
 「ところが日本は、近隣諸国と文化的なつながりを持たないほとんど孤立した国であり、」「1995 ( 平成7 )年現在、円ブロックは、実現していない。」「ASEANの発展は遅れ、円ブロックは夢のままで、日本は躊躇し、EAECは発足できずにいる。」
 
 円ブロックについては、アメリカによる強力な反対で頓挫したとマスコミが報道していましたから、よく覚えています。氏が言うように、日本の優柔不断だけが原因でなかったはずです。むしろ私は、氏に異を唱えたい気持ちになります。
 
 「日本がアジアで孤立しているのは、文化的なつながりの欠如というより、」「アメリカへの忖度が、そうさせるのです。」「アメリカは、かってのように日本がアジアで主導権を握ることを警戒し、」「アメリカの対抗勢力となることに、反対しています。」
 
 「そのための東京裁判であり、憲法の押しつけでした。」「日本の戦後は、アメリカへの忖度と、従属の年月ではなかったのでしょうか。」
 
 政治学者であるハンチントン氏が、この事実を知らないはずがありませんから、日本に関する説明には賛成しません。
 
 今回は、EAECを通して見た日本観を紹介しましが、次回は、文明論の視点から眺めた日本に関する、氏の意見を紹介します
コメント
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