プーチン大統領がウクライナ侵略を開始したのは、2月21日ですが、それに先立つ約1ヶ月前にバイデン大統領が語った言葉を、BBCと共同通信社が伝えています。
BBCの報道は1月25日で、共同通信社は1月28日です。バイデン大統領の発言は、ロシアとウクライナが疑心暗鬼の停戦交渉をしている最中にされています。
緊張が高まるウクライナ情勢のなかで、バイデン氏はどうしてこのような発言をしたのか。私はゼレンスキー氏と同じ軽率さを感じますが、そうでなかったとすれば、ロシアへの挑発となります。二つの報道を並べて紹介しますので、息子たちと「ねこ庭」を訪れた方々は自分で確かめてください。
〈 1月25日のBBCの記事 〉
・バイデン大統領は25日、ロシアがウクライナに侵攻すれば、ウラジミール・プーチン大統領個人に制裁を課すことを検討するだろうと述べた。
・バイデン大統領は、ロシアが国境を接するウクライナに対して行動を起こせば、世界にとって「甚大な影響」をもたらすだろうとした。
・バイデン氏の発言に先立ち、ほかの西側諸国の首脳たちも、ロシアが侵攻すれば高い代償を払うことになると繰り返し警告した。
・一方のロシアは、アメリカやほかの国々が「緊張を激化させている」と非難してきた。また、ウクライナへの侵攻は計画していないとしている。
〈 1月28日の共同通信社の記事 〉
・バイデン米大統領は27日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談した。
・米高官によると、バイデン氏は2月にロシアがウクライナに侵攻する可能性は「十分ある」と警告した。
・一方、CNNテレビによると、両首脳は侵攻に関する危機認識に不一致があったといい、ウクライナ高官は会談が「うまくいかなかった」と述べた。
・米英などが在ウクライナ大使館の職員家族らの国外退避を決める中、ウクライナ側は沈静化に躍起となっている。
・ロシアのプーチン大統領による次の一手を読めず、米欧とウクライナの足並みの乱れが垣間見える
ウクライナとロシアの交渉中に、バイデン氏はロシアの武力侵攻があると語り、プーチン氏への制裁にまで言及しています。侵攻の可能性が高かったとしても、交渉の段階でなぜバイデン氏は早々と断定したのでしょう。
私が注目したのは、共同通信社の報道です。バイデン氏がゼレンスキー氏と電話会談をし、ここでも氏がロシアによる侵攻を警告しています。記事の注目点は、次の二つの叙述です。
・ ウクライナ側は沈静化に躍起となっている。
・ 両首脳は侵攻に関する危機認識に不一致があったといい、ウクライナ高官は会談が「うまくいかなかった」と述べた。
二つの文章から私が受け取ったのは、ゼレンスキー氏がバイデン氏の性急な結論を抑えようとしている姿です。そのため、「認識の不一致があった」と言い、「会談はうまくいかなかった」と言う表現になったのではないでしょうか。
BBCの報道の最後の文章を読むと、流動的な状況が分かります。
・一方のロシアは、アメリカやほかの国々が「緊張を激化させている」と非難してきた。また、ウクライナへの侵攻は計画していないとしている。
互いの情報戦が既に始まっていたとしても、プーチン氏はこの段階で、ウクライナ侵攻を公言していません。こうなると、「戦勝記念日」でのプーチン氏の演説との符合が出てきます。息子たちと「ねこ庭」を訪問される方々に、もう一度プーチン氏の演説を紹介しますので、自分で確かめてください。
「去年12月、われわれは安全保障条約の締結を提案した。」「ロシアは西側諸国に対し、誠実な対話を行い、賢明な妥協策を模索し、互いの国益を考慮するよう促した。」「しかし、すべてはむだだった。」
「NATO加盟国は、われわれの話を聞く耳を持たなかった。つまり実際には、全く別の計画を持っていたということだ。われわれにはそれが見えていた。」「ドンバスでは、さらなる懲罰的な作戦の準備が公然と進められ、クリミアを含むわれわれの歴史的な土地への侵攻が画策されていた。」
ウクライナ侵略戦争の主役が、米露の2大国であることは周知の事実なので、米国が表に出ていないとしても、プーチン氏の主眼は最初からバイデン氏の動向にあります。そのバイデン氏が、盛んにウクライナ侵攻を喋るのですから、交渉を遮断されたと考えるのも無理はありません。
と言うことで、私の最初の結論に戻ります。
「ゼレンスキー氏も支援する西欧諸国も悪、ロシアも悪」