
葉真中顕氏の小説原作の映画。
こちらも『月』と同様、やまゆり園の事件を彷彿とさせる問題作。
月を見る為に整えた覚悟、その勢いのまま、前から見たかった本作も視聴しました。
どちらも命の尊厳について、似ているようで違う角度から問う作品になってます。
ストーリーは、
高齢者を殺害した介護士が逮捕される。
捜査を担当する大友検事は、犯人・斯波宗典と対峙するが……という導入。
最初、やまゆり園と似た話なんかと思ったら、全くテーマが違いました。
今作は高齢者介護、その是非と光と影と言ったお話。
原作小説はミステリーらしいんすけど、映画はもう謎解きどうのはなし。
ストレートに問題を直視させるような内容。
介護で疲れた家族を救う為。喪失の介護。
人々を救うにはどうしたら良いのか。斯波という男が下した正義とその顛末。
いかにどんな正論を持ち出そうと、40人殺しておいて、もちろん死刑にせん訳にはいかない。
でも、斯波が言うように絆は呪縛で、死ぬ時ぐらい家族を辞めてもいいんじゃないか、
罪悪感を捨ててでも人を殺さないといけない時がある…
正義とは何なのか。考えさせられる作品。
じゃあ、ただ罪を裁くだけの警察や検事は?
生活保護を拒否する役所は?
何の対処もせず先延ばしするだけの政府は?
誰しもが直面する問題で、もうこれ以上無視が出来なくなるんじゃないか。
優生思想は正義か悪か?
安楽死は正義か悪か?
議論ではなく結論。
人それぞれの意見とかそういうんじゃなしに、
その結論を誰が出すのかは知らないが、ハッキリとした答えが今求められてるんだと思います。
正直、この作品は映画じゃなかったですねw
映画ってやっぱり創作で、感情移入はしても結局は自分とは関係ない話ですから。
でも、この映画は誰しもに当てはまる。
空想の物語ではなく、他人事じゃない現実や未来の話なんすね。
家族がおらんで介護する必要がない人もおるやろが。
でも、人は必ず老人にはなるから。介護される側には、よっぽど健康で大往生でもしない限り、問題は常に付き纏う。
介護は何も老人だけじゃなく、障害者もそうですね。
事故で怪我して自分が障害者になるかもしれないし、生まれてくる子供が障害を持ってるかもしれない。
障害者殺人も、別にやまゆり園が特殊というわけじゃなく、介護を苦にしての事件は既に全国で起きてます。
これから安楽死が現実になるのか分からないし、介護現場の改善が進むのかどうか。
施設やサービスも利用費が高騰してて、自分で介護をしなきゃいけない人もいる。
介護の負担をどう減らしていくか。
10年前くらいはただの問題提起だったのが、もう答えを出さなきゃいけない時に突入したんだと。
まぁ、今の社会を見てると、「答えを出さない」のが答えみたいになるんかな。
政府も役所も対処せず、警察も検事も介護殺人というバグやエラーをただだだ処分していく。
介護だけの問題でもなく。
去年7月に奈良県のダムから飛び降りて一家心中した父娘のニュースがあったが。
この父親は児童相談所や家族やら、周囲にちゃんと相談していたんです。
でも、結局、誰も助けなかった。父親は死を選んだ。
介護育児に加え、今は物価高で1人暮らしでも大変な人が多いでしょう。
そういう人が追い詰められて自殺や犯罪をしても、政府も誰も助けない。
自殺は自己責任だし犯罪は犯罪。
それも全て自分のせいです。あなたのせいです。死ぬのならご勝手に。
それを、この国が滅びるまでやる。
ただただ見殺ししていく。究極の自己責任の国になっていくと、個人的には感じる。
まあ、そんな社会だからこそ、答えは自分だけのものなんやとも思う。
介護に追い詰められる人を政府は見捨てるし、追い詰められた末に家族を殺した人を社会は排除する。
それはもう変わらないんだけど、自己責任が目に見える形で具現化する社会で。
家族への思いや抱える苦悩だけは、政府や社会に決められない、自分だけのものになっていく。
そう考えたら、意外と良い世界かもねw
誰も人を助けないし、見殺していくだけの世界で。
破滅と、その答えだけは自分のもの。
では、また。
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