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ロストケアについて、その律法と預言者

2025-03-05 17:44:00 | 刑事・社会

 葉真中顕氏の小説原作の映画。

 こちらも『月』と同様、やまゆり園の事件を彷彿とさせる問題作。
 月を見る為に整えた覚悟、その勢いのまま、前から見たかった本作も視聴しました。

 どちらも命の尊厳について、似ているようで違う角度から問う作品になってます。

 ストーリーは、

 高齢者を殺害した介護士が逮捕される。
 捜査を担当する大友検事は、犯人・斯波宗典と対峙するが……という導入。 


 最初、やまゆり園と似た話なんかと思ったら、全くテーマが違いました。
 今作は高齢者介護、その是非と光と影と言ったお話。

 原作小説はミステリーらしいんすけど、映画はもう謎解きどうのはなし。
 ストレートに問題を直視させるような内容。

 介護で疲れた家族を救う為。喪失の介護。
 人々を救うにはどうしたら良いのか。斯波という男が下した正義とその顛末。

 いかにどんな正論を持ち出そうと、40人殺しておいて、もちろん死刑にせん訳にはいかない。

 でも、斯波が言うように絆は呪縛で、死ぬ時ぐらい家族を辞めてもいいんじゃないか、
 罪悪感を捨ててでも人を殺さないといけない時がある…

 正義とは何なのか。考えさせられる作品。

 じゃあ、ただ罪を裁くだけの警察や検事は?
 生活保護を拒否する役所は?
 何の対処もせず先延ばしするだけの政府は?

 誰しもが直面する問題で、もうこれ以上無視が出来なくなるんじゃないか。
 
 優生思想は正義か悪か?
 安楽死は正義か悪か?


 議論ではなく結論。

 人それぞれの意見とかそういうんじゃなしに、
 その結論を誰が出すのかは知らないが、ハッキリとした答えが今求められてるんだと思います。

 正直、この作品は映画じゃなかったですねw
 映画ってやっぱり創作で、感情移入はしても結局は自分とは関係ない話ですから。

 でも、この映画は誰しもに当てはまる。
 空想の物語ではなく、他人事じゃない現実や未来の話なんすね。

 家族がおらんで介護する必要がない人もおるやろが。
 でも、人は必ず老人にはなるから。介護される側には、よっぽど健康で大往生でもしない限り、問題は常に付き纏う。

 介護は何も老人だけじゃなく、障害者もそうですね。
 事故で怪我して自分が障害者になるかもしれないし、生まれてくる子供が障害を持ってるかもしれない。

 障害者殺人も、別にやまゆり園が特殊というわけじゃなく、介護を苦にしての事件は既に全国で起きてます。

 これから安楽死が現実になるのか分からないし、介護現場の改善が進むのかどうか。
 施設やサービスも利用費が高騰してて、自分で介護をしなきゃいけない人もいる。

 介護の負担をどう減らしていくか。
 10年前くらいはただの問題提起だったのが、もう答えを出さなきゃいけない時に突入したんだと。

 まぁ、今の社会を見てると、「答えを出さない」のが答えみたいになるんかな。
 政府も役所も対処せず、警察も検事も介護殺人というバグやエラーをただだだ処分していく。

 介護だけの問題でもなく。
 去年7月に奈良県のダムから飛び降りて一家心中した父娘のニュースがあったが。

 この父親は児童相談所や家族やら、周囲にちゃんと相談していたんです。
 でも、結局、誰も助けなかった。父親は死を選んだ。

 介護育児に加え、今は物価高で1人暮らしでも大変な人が多いでしょう。
 そういう人が追い詰められて自殺や犯罪をしても、政府も誰も助けない。

 自殺は自己責任だし犯罪は犯罪。
 それも全て自分のせいです。あなたのせいです。死ぬのならご勝手に。

 それを、この国が滅びるまでやる。
 ただただ見殺ししていく。究極の自己責任の国になっていくと、個人的には感じる。

 まあ、そんな社会だからこそ、答えは自分だけのものなんやとも思う。
 介護に追い詰められる人を政府は見捨てるし、追い詰められた末に家族を殺した人を社会は排除する。

 それはもう変わらないんだけど、自己責任が目に見える形で具現化する社会で。
 家族への思いや抱える苦悩だけは、政府や社会に決められない、自分だけのものになっていく。

 そう考えたら、意外と良い世界かもねw

 誰も人を助けないし、見殺していくだけの世界で。
 破滅と、その答えだけは自分のもの。
 
 では、また。




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