時々雑録

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Freakonomics 読書録8

2011年02月17日 | 
まず本のデータ

Steven Levitt and Stephen Dubner 
Freakonomics: a rogue economist explores the hidden side of everything.
2005 Harper Collins

日本では、八百長発覚を期に、大相撲が危機を迎えているとか。八百長そのものは議論の焦点ではなかろうとは思いますが、この件についてあちこちで言及されている本を借りて読みました。第一章、人はズルをするのか、という件に関する部分でさっそくこの件が。

翻訳されて売れたようですから知ってる人も多いでしょうが、内容は、記事に引用されて読んだものより踏み込んでいます。

1. まず、データは1989年初場所から2000年初場所の11年間と1場所。
2. 半分以上の力士が、7、8、9勝で場所を終える(たんなる確率論的過程の結果)。
3. 7勝7敗で千秋楽を迎えた十両以上の力士(関取)が8勝6敗の力士と対戦した場合
  (i)  過去の対戦成績から期待される前者の勝率は5割弱
  (ii) 実際の結果は、8割弱
つまり、30%くらい余計に勝っていることになります。9勝5敗の力士との対戦も26%の勝率アップ。

ただし、これだけだと、「瀬戸際の力士のほうが頑張るから勝つことが多くなる」という解釈もできる。そこで、

4. 上記の対戦者同士の次回の対戦結果を見ると、前者(助かったほう)の勝率が、4割。つまり、期待確率より10%ほど余計に負けていることになる。
5. さらに次回の対戦結果では、期待値どおり、50%程度に落ち着く。

ということで、二場所単位で、勝負の貸し借りが行われていると考えられる。
ここまでは記事で読みました。本ではさらに重要な指摘が続いていて、

6. データが取られた期間に、八百長に関してメディアが取り上げ、追求することが何度かあったが、その直後の上記のような対戦の勝率は、期待値どおり50%程度に下がる。

ここから筆者は「どんな角度からデータを眺めても、八百長が行われていたことを否定するのは困難だ」と結論付けてます。

さらに5より前に出てくるのですが、
7. 勝負の貸し借りは、部屋単位で行われるケースもあることがうかがわれる。
(ただしこれに具体的データはなし。American Economical Reviewに載った原論文を読む必要があります)

ここからは私見。まず、この分析結果は、勝敗の貸し借りの存在を示すと考えて間違いなさそう。また、3~5を見ただけでは、30%の勝率アップが丸々取引によるものなのか、その一部は「瀬戸際のものが頑張ったから」なのか分かりませんが、6によると、片方が瀬戸際でも、真剣勝負をすれば、ほぼ期待値どおりの勝率に落ち着くらしいので、30%の勝率アップ分がほぼ丸々取引によるものである可能性もありそう。2を考え合わせると、この時期の八百長は、けっこう大規模だった可能性があります。また、4のように、次回対戦による返報が10%しかないことを考えると、一部は勝敗以外による取引(金銭?)がなされていると考えることができそうです。もっとも一部は、「武士の情け」で対戦相手が本気を出さないでくれた結果の部分があるかもしれません。

この章には、教師による統一テストの成績の不正操作の件も出ているのですが、いずれも、ここまで明らかにされてしまうものなのだなという印象。データとは恐ろしいものです。

著者はシカゴ大の教授とニューヨーク在住のジャーナリスト。この2人、Podcastもやってます。iTuneでダウンロードできますが、気に入って毎回聞くようになりました。

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