「縮緬本」というのは、ちりめん布のように加工した和紙に印刷された本で、柔らかい手触りと、絹の縮緬布に似た風合いから「縮緬本」と呼ばれている。「縮緬本」は、初め語学教材として作られたが、明治期に来日した外国人が帰国する際のお土産用として重宝がられたもので、外国に日本の文化を紹介するのに役立った。
長谷川武次郎という人が、明治十八年から日本の昔話を外国語に翻訳して刊行したもので、それらの翻訳者には、チェムバレンや、ヘボン式ローマ字の創始者ヘボン、ラフカディオ・ハーンなどがいた。このシリーズは英語以外にドイツ語・フランス語・スペイン語・オランダ語・ポルトガル語などの言語に翻訳されている。
この縮緬本昔話シリーズから、表紙裏表紙とも復刻された「桃太郎・舌切雀・猿蟹合戦・花咲爺・鼠の嫁入り」の五冊を一冊に豆本としたものである。
豆本にした場合、絵の中の会話は文字が小さいので読みづらいが、本文はかなりはっきりしている。