この豆本、歌川芳虎の「江戸乃花子ども遊び 纏尽し」という。一枚ごとに各組のまといとそれを持つ火消しの絵と、その組の受け持つ町の名前がれ列記してある。図は喧嘩で有名な「め組」の纏である。
タイトルから判るようにこれらは子供向けの物であり、子供のころからこうした絵を通して自分の住む町の火消しに親しんでいたということから、当時の江戸の人にとって、火事とはそれほど恐ろしいもので、それから守ってくれる火消しの存在は重要だったのであろう。
その象徴の纏に関して、自分の町ばかりではなく江戸中のさまざまな纏を知ること、またその絵をコレクションすることは、子供にとって喜びごとだったに違いない。
<付記>
この文をを書いたあとで、成人女性や、火事の場面を錦絵として扱う事に対して禁令が出たため 子供何々というようなタイトルをつけて法の目を逃れたというようなことを知った。従って上記私の推測は見当違いということで、訂正。
この画は上とは別作品、広重や豊国・国貞の共作の「江戸乃花名勝会」の一枚で、江戸の町の名物物産や名所、関連の芝居出し物、演ずる役者などをまとめたものだが、こうしたものにもこれまたタイトルや絵から判るように、纏が登場していて、火消しとその町の結びつきの強いことがしめされているのである。
図は花川戸、市川団十郎演ずる助六、そして右上は担当の「ち組」の纏が描かれている。