二枚のユディト
ユディトというのは旧約聖書『ユディト記』( 正典として認めない考えもある)の信仰心篤い美しい女性で、街を包囲した敵軍の将ホロフェルネスに美貌を種に近づき、その首を落として街を救うという話である。このユディトを描いた絵画・彫刻は数多くあって、私の手元にも52点の画像がある。ただそのほとんどが、敵将の首をぶら下げたものや、まさに切り落としている最中とかの凄惨な場面で、ユディトと知らない人は残忍な悪女の絵かと思ってしまう。その中にあって比較的シンプルにユディトの姿を描いている作品が下に掲げたものである。
ところで一見同じ絵のようだがよく見比べると顔が少し違っていて右の方がややいかつい感じがする。それと画面左下隅の右の手のあたりが異なっていて、画像で判然としないのだが左の絵は何か(首?)を提げているようにも見える。
左は A.Riedel というドイツの画家、右は P.Peel なるカナダの画家のものである。この二人や二つの絵の関係についてはわからないが、ドイツの方が古い人なので、右は左の模写だと思われる。
ボッテチェリの敵将の首を侍女に持たせ街に戻るユディトと、ロッビアのテラコッタによる彫像。
ともに15,6世紀の作で、首ははっきりしていてもさほど不気味ではない。