実際の使用実例があるか知らないが、「琴の琴」とはどういうことか。
まずこれは「キンのコト」と読む。現代では「こと」は「琴」の文字を当てるのが普通で、それは下掲写真の一番右の楽器を意味している。しかしもともと「こと」は弦楽器全体のことで、「筝」「琴」「琵琶」などの名称をもった、複数の異なった楽器の総称である。だから「きん琴」と「そう筝」は違う楽器なので、古くは「きんのこと」「そうのこと」「びわのこと」のように言ったのである。「梅」「桜」を「うめのはな」「さくらのはな」と総称の「花」を付けて表すのと同じである。
要するに下の写真で判るように「琴」と「筝」は大きさ、琴柱の有無とか絃の本数も「7本と13本」のように異なっている。そして「筝」が次第に「こと」の代表のようになったようだが、ならば「筝」の文字が「こと」の意味にならず「琴」の文字の方が「こと」になったのか理解に苦しむところである。
小うるさい議論はともかく「こと」言えば「筝」を指し、文字まで「琴」に変わったという次第である。
したがって絵に描かれている「琴こと」は本来「箏」という楽器がほとんどなのである。
鈴木春信 細田栄之 鳥居清長
葛飾北斎 喜多川歌麿 歌川豊国
北尾重政 磯田湖龍斎 水野年方
◎ 筝以外の「こと」 最後は「こと」の一種らしいが他に比べて丈が短く幅が広いように見える、名称不明。
細田栄之 琴のこと 揚州周延 二弦琴 揚州周延
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