写真手前は「銀河鉄道の夜」、奥は「オッペルと象・よだかの星・セロ弾きのゴーシュ」の豆本である。
賢治作品の豆本は市販されているものが多いと思うし、童話全集という豆本も知っているが、販売をしない私にとっては関係ないことである。
この「銀河鉄道」は拙作豆本の中で最もページ数の多い厚い(13丁104枚+見返し4枚)本である。以前にも書いたように、化粧裁ちで一番苦労したものである。
定規とカッターナイフで普通の紙を切ることなど簡単だというのは、たぶん知らない人の言である。両面印刷用の少し厚い紙(0.15mm)だと全体の厚さが1.6センチ以上になる紙束を三方を垂直に裁断する。それもA4の大きさを半分にするのではなくA7以下の大きさの紙束である。紙が小さくなるほど定規で押さえているところがずれやすくなる。そちらに集中していると、そうでなくとも神経を使うカッターで垂直に切ろうとする方がおろそかになってしまう。
そんなわけでごく最近、製本関係のサイトから教示を受けて自作した器具が下の物である。
結局多くの枚数を切るためには、紙全体をプレスで固定して、あとはカッターの方だけに集中して慎重に切っていくしかないということである。
写真は下から、台・マット・作品・定規で、定規は作品を挟んでねじで下の台に固定される。上に載せてある白いものは、木の定規の側面保護のために貼り付けたプラスチック材で、これは反対側にもつけてある。この定規は巾64ミリで、横長B8版の上下を一回の固定でやれるのである。豆本用だから、大きさはA5版の本ほどで、もちろんプレス機として、乾燥用にも使える。
趣味で僅かな豆本を作る人には必要ないが、私にとってはこれを作ったために、ずいぶんと気楽になった。
実際これまで豆本を作っていて、この化粧裁ち段階がうまくいかないとそのあとの仕上げの意欲がかなり削がれてしまっていたのである。