伊勢物語としては六点では少ないようで揃いではないと思う。
例のごとく、物語の絵は上方の小間絵で描かれ、それと女性の姿との結びつきがむずかしい。
画中の和歌、左から、
月やあらぬ春や昔の春ならぬ わが身は一つもとの身にして 四段
唐衣きつゝ馴にしつましあれば はるばる来ぬる旅をしぞ思ふ 九段
名にしおはゞいざこと問はむ都鳥 わが思ふ人はありやなしやと 九段
武蔵野はけふはな焼きそ 若草のつまもこもれり我もこもれり 十二段
夜も明けばきつにはめなで くたかけのまだきに鳴きてせなをやりつる 十四段
くらべこしふりわけかみもかたすぎぬ きみならずしてたれかあぐべき 二三段