岳亭には文具を扱った一連の作品が他にもあり、女性と文具がその文具を詠みこんだ和歌の屏風を背にして描かれたものである。
「文尽くし」というような作品集だがノンタイトルであり、また最後の作品は構図が異なるうえサブタイトルも「文●」ではないので別作品かもしれない。
文机 ・ 文台 ・ 文鎮 ・ 文車
文庫 ・ 文箱 ・ 文章 ・ 短冊
岳亭の姓は「八島」とも書くようである。北斎の門人。
「文房四友」は、筆・硯・墨・紙のことで「文房四宝」ともいう。
日本
小野東風 筆 ・ 紫式部 硯 ・ 小野小町 墨 ・ 藤原定家 紙
中国
女几は伝説の女道士。 衛夫人は能書家。 伯英という人物は書家のようだが不明。
玄宗皇帝 墨 ・ 女几 紙 ・ 衛夫人 筆 ・ 伯英 硯
六歌仙を個別に描けば六枚が当然だが、これは「五色染め」とあり五枚で揃いだと思う。
「一女五人男」の小町は「業平・小町」と美男美女の代表として併称され一枚目に描かれている。
では他の四人の女性は?、ということだが私は全部小町ではないか、つまり一人の小町にそれぞれの男が言い寄っている絵ではないかと思う。
喜撰の女性は町娘みたいで小町らしくないようだが、それでも小町とするのには理由がある。
まずタイトルの「五色染め」が五つの色に染めるということでそれを示していよう。
それともう一つ、女性の衣裳はすべて異なるが髪を注意すると、いずれも蝶リボンのような飾りになっている。女性画達人の歌麿が別人女性をこのように描くとは思えない。だからこそ男達は衣服などで判別させれば個々の名を書く必要もない。
尤も以上のことは画像を検索した際、一枚目だけに小町とあって他は男性名だけだったから私が勝手に思っただけで、すでに衆知のことなのかもしれない。
業平 小町 ・ 喜撰 ・ 遍照
黒主 ・ 康秀
六歌仙 小町から時計廻りに遍照、黒主、康秀、喜撰、業平
「ザ ダンス」という雑誌の1920代、30年代の表紙で、古典バレーからモダンダンス、民族舞踊などが登場する。
Danceという雑誌は現在もあるようだが、今回取り上げた雑誌の継続したものかどうかは分らない。
十二支に引っかけたタイトルで、その年生まれの女性の性格・運勢のようなものの記述があるのだが、例によって私には読めず、空しく眺めるだけ。
ひとりネ ・ 旅はウシ ・ 喰いトラ ?
大そウ ・ 腹をタツ ・ 楽しミ
竹ウマ ・ 人目をヒツジ ? ・ いらザル
籠のトリ ・ 負けてイヌ ・ めでたイ
明治中ごろの女性たちが「観たい」「行きたい」「成りたい」などという憧れ願望を円形のスライド画面として描いた作品。
これは2014年8月に二回に分けて扱っているが、その後の追加分とともに纏めて掲載する。
多分この作品を一括して一覧出来るのはここしかないのではないか。ただしこれが全作品かどうかは分らないが・・・
芝居 ・ 勧進帳 ・ 寄席
隅田川 ・ 川開き ・ 王子の瀧
嵐山 ・ 造菊[菊人形] ・ 温泉
学校試験 ・ 女子演説 ・ 洋行
※ 以下「海水浴」までが既出。その後五点が追加作品。
上掲の「寄席」は義太夫など音曲中心で、下の「落語」中心の席とは区別しているらしい。
海水浴 ・ 落語 ・ 能
※ 「踊さらい」ということと前の母子と後の絵とがどういう繋がりになるのか私には分らない。
最後の作品は貴重な作品で、偶然見つけた美術商のカタログにあった小さな絵を引きのばしたものだからぼけがひどい。サブタイトルも読めないが、大奥か何かの高貴なお方の前で行われる「歌合せ」のようなものの出席にあこがれている女性らしい。確認しようとしたが行方知れず。
踊さらい ・ 梅屋敷 ・ ?
二月二日が節分となるのは124年ぶりだそうだが、今後暫くはうるう年の翌年の四年ごとに二日節分となるようである。
そんなことより、豆まき美人を探したが見当たらず、結局美女どころろか荒くれ男の坂田金時金太郎の豆撒き特集になってしまった
春朗(北斎) ・ 葛飾北斎 ・ 鳥居清長 ・ 勝川春映
歌川国芳 二点
唯一、楊斎周延の千代田の大奥の女性版節分があったが、中央の女性が豆撒きしたかは分らない。
左の男性は豆を並べて何をしているのだろうか。