お昼の少し前に小さな訪問者は現れました。
あれ~学校は???
きけば試験の最終日だったそうです。
「あのね~今日はママの誕生日なの・・・」
「今、お小遣は持っていないんだけど・・・」
なんという偶然!
お店には大切なお客様から注文をいただいていた
誕生日ケーキの為のスペシャルな生クリームがあったんです。
ウチの子供達だったら思っても言えなかったであろう願い。
お昼前の時間帯で、当日、今、スグに始めてママが帰宅する前に、
できれば4時頃までに
「ママの誕生日ケーキ」を作りたい・・・なんて。
トナさんは○ちゃん良く来てくれたね~嬉しいな~と声をかけ
抱きしめながら僕を見るし・・・
今日入っている注文のパンの焼き上げは3時!
その時、僕は以前聞いた話を思いだしました。
旅行から帰る子供を迎えに行く父親があまりに急いで
家を出たために財布を忘れてしまったそうです。
子供がお腹を空かしてないかと食事に誘った時に
父親は財布を持っていない事にはじめて気が付き、
ポケットにあった小銭で子供だけがラーメンを食べたそうです。
子供はその時に自分だけが食べたラーメンを通して
自分を見守る人の温かさを知ったんじゃないかと思います。
そんな子供が成長したらならきっと周囲の人達を助け励まし
湯気の温かさを伝えられる人になると確信しています。
よっしゃ、そのラーメンの話は先日同じような体験をした
○ちゃんのこの日の為に聞いたのだと僕は考えました。
何か食べて飲みなさいとトナさんに言われ
「サンドイッチの中が好きなの、パンは嫌い」
「昔、オジちゃんはロボットの犬のケーキ作ったよね」
そうです、壊れても部品を替えれば治り、死とは無縁のロボット。
確かに○ちゃんとお兄ちゃんの為に作りました。
お兄ちゃんの為だけに作ったのではありません。
君達兄妹の健康を願って食べられるSONY作りました。
誰の為のアイボ型ケーキか解らなかった事もサンドイッチの
中身だけが好きな事も聞かされてボディブローや
カウンターパンチを貰った気分ですが、
オジサンはこの一年で大きく強く成長しましたから
倒れずにすみました。○ちゃんの正直なストレートパンチが
オジサン嫌いじゃありません。ヘロヘロですが心地良い感じ・・・
最近の子供達の不幸な事件の話などされるとドキドキしましたが
「もったいないね、楽しい事にも沢山出会えるかも知れないのにね」
「辛い事を経験すると普通が楽しく感じるかもね」
「楽しいだけだと普通が辛い」などと話しながら
お店の戦場、昼前に○ちゃんは一度帰宅して着替えてから
来る事になりました。
トナさんは使いに出たついでに「苺でも買ってこようか?」と
言いましたが、僕は賛成しませんでした。
想い出のラーメンにどんなチャーシューが何枚のっていた
なんてどうでもよかったと考えていましたから・・・
大事なのは○ちゃんが家事や仕事で忙しいママの誕生日に
自分でケーキを作る事。 メッセージ・・・
右下の余白になんて書くか悩んで相談されたので、
「頑張って」もいいけど「ありがとう」ってぇ書かれていたら
きっとママは頑張れると思うな~
夜、ママからトナさんの携帯に仕事を中断してケーキを
作ったお礼のメールが入りました。
○ちゃんがママに誕生日のケーキを作ってくれるなんて
思ってもみなかった事だったそうです。
子供は親が思っているよりも遥かに早い速度で成長するんですね。
僕は自分で最初のケーキを作る場所にパレットを選んでくれたのが
とても嬉しく、○ちゃんに感謝したい気持なんです。
お礼はそれで十分です。
先週売出しをした某店舗で一日の売上を聞きました。
ドーナツだけでも一日中黙って千数百個揚げ続けた
手伝いがいたそうです。
当店とはF-1と自転車ほどの速度差を感じます。
パンは創る楽しさも苦しさも嬉しさも感じさせてくれますが、
僕には商売の才能が乏しいことを強く感じています。
ラーメンの湯気の温かさは理解できるつもりなんですがね~~