Hei!(「ヘイ」って読んで「やあ」って意味)~義務教育世界一の秘密

義務教育世界一の国の教師養成の実態を探る旅。フィンランドの魅力もリポート!その他,教育のこと気にとめた風景など徒然に。

予算配分の格差が促す学校間競争は子どもを幸せにするか

2006年11月05日 | Weblog
東京都足立区教育委員会は,区立小中学校に配分する来年度予算で,都と区の教育委員会が実施している学力テストの成績に応じて各校の予算枠に差をつける方針を固めた。小学校と中学校を最上位約400~500万,最下位は約200万円の間で4段階にランク分けする予定。
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足立区教委が決めたこのような予算配分格差が促す学校間競争は,子どもたちを幸せにするでしょうか。内藤博道・区教育長が「頑張った学校に報い,校長と教員の意欲を高めることが,区全体の基礎基本の学力向上につながる。」と語ったように,確かに学校間競争は促されるでしょう。競争すること自体が悪いわけではない。しかし問題は,この競争が本当に教育の場で行うにふさわしい,教育的なものになるかどうかという一点にあります。

学校では,短期的に確実な成果を上げるために,論理的な考え方や本当の理解を大切にした時間と手間のかかる学習を放棄し,記憶や訓練中心の学習塾のような学習を重視したりしないでしょうか。場合によったら,成果のマイナス要因になりそうな子どもを欠席させたり欠席したことにするなどの問題が起きたり,成績の改ざんが行われたりはしないでしょうか。過去の事実からすれば,これらは決して杞憂ではありません。もしこれらが起こったとすれば,教育上極めて不適切なことであり,それは導入の動機が善意であったとしても,結果として教育委員会が学校に強要したことになるのです。

問題はそれだけではありません。今回の措置でそもそもそう見なしているように,これまで成果が上がらなかった原因が校長と教員の意欲のなさにあった(真実がどうか私には分かりません)のであれば,その責をなぜ子どもたちに負わすのでしょうか。配分予算の格差の影響を受けるのは子どもたち自身に他なりません。またどの教科の成績を学力と考えるのか不明であるものの,基礎基本という名のもと限られた数教科の学力のみを測定して,その結果で児童生徒の教育を受ける権利に格差を設けるのは適切なことでしょうか。

このような拝金主義の競争の結果,大人社会が学校にさえ生み出す「勝ち組―負け組」「勝ち学校―負け学校」という眼差し,そして予算配分の多い少ないによってさらに拡大される不平等は,全て子どもたちに向けられ背負わされるものです。予算配分の格差が促す学校間競争は決して子どもたちを幸せにはしません。むしろ「いじめ」現象を助長することさえあるでしょう。結果が思わしくないのであれば,むしろ予算を向けるのは成果の上がらなかった学校であるべきです。
コメント (1)
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