英カーディフ大学が、「宇宙には、生命に不可欠な化学元素であるリンが不足している可能性がある」との研究成果を発表。
地球に似た環境の惑星が夥しく見つかっているが、地球外文明らしきものはまだ見つかっていない。その理由に、生命体が存在する条件にリンの存在が決め手であるが、リンが存在する天体が意外に少なく、このため、地球外生命の存在が少ないのではという 結論になる。この観点の正しさと、地球外惑星のリンの存在を調べ上げる必要があろう。
英カーディフ大学の研究プロジェクトは、2018年4月、欧州宇宙機関(ESA)と王立天文学会(RAS)の共同年次総会(EWASS)において、「宇宙には、生命に不可欠な化学元素であるリンが不足している可能性がある」との研究成果を発表した。リンは超新星爆発によって放出されると考えられた
リンは、炭素や酸素などとならび、地球上の生物が生活機能を営むために必須となる生体元素のひとつで、DNAの生成や、エネルギーの貯蔵と放出を担うアデノシン三リン酸(ATP)に不可欠なものだ。
宇宙では、大質量星がその寿命の最終段階で起こる大規模な爆発現象、すなわち超新星において放出されるガス雲に、リンが含まれていると考えられてきた。2013年には、米ハーバード・スミソニアン天体物理学センターが、17世紀後半の爆発によって生まれ、地球から約11光年の距離に位置する、カシオペア座の超新星残骸「カシオペア座A」を観測し、超新星によってリンが生成されたことを確認している。
一方で、リンが極めて少ない超新星残骸「かに星雲」英カーディフ大学の研究プロジェクトは、スペイン領カナリア諸島に属するラ・パルマ島のウィリアム・ハーシェル望遠鏡を使って、6500光年ほど離れた牡牛座にある超新星残骸「かに星雲」のリンと鉄からの赤外線を観測し、前述の「カシオペア座A」での観測データと比較した。
その結果、「かに星雲」では「カシオペア座A」よりもリンが極めて少ないことがわかった。研究チームでは、この結果について、「『カシオペア座A』は稀な超大質量星の爆発によるものであるため、このような違いが生じたのではないか」とし、「超新星からリンが供給され、隕石で宇宙を移動するのだとしたら、若い惑星は、生まれた場所によって、リンが欠乏した状態となり、生命が生まれづらくなるおそれがある」と考察している。
ただし、現時点では、英カーディフ大学の研究成果は、まだ予備的段階のものにすぎない。研究プロジェクトでは、「かに星雲」にもリンが豊富な領域が存在する可能性があるとして、今後も天体観測を継続したい考えだ。
リンと超新星の関連性を明らかにするためにはさらなる研究の進展が待たれるところだが、生命体が存在する可能性を探るうえで、「どのような形態の超新星が近くにあるか」という点も注目すべきポイントのひとつにはなりそうだ。