2020年代前半の実用化を公言するトヨタ自動車をはじめ、多くの企業が全固体電池の開発を急いでいる。“次世代電池の本命”への熱気が高まる中、全固体電池と距離を置く戦略を採るのが中国・寧徳時代新能源科技(CATL)だ。世界最大の電池メーカーであるCATLの真意を探った。

 「全固体電池は開発中で、サンプルも作った。だが、商品化するのは2030年以降になるだろう」。CATLで電池開発を担当する幹部は明かす。更に別の幹部は、「本当に全固体電池は必要なのか。現行の液系リチウムイオン電池を効率よく使いこなすことが、コスト面でも航続距離の面でも電気自動車(EV)にとって最善だ」と述べ、全固体電池の開発ブームに疑問を投げかける。トヨタは全個体電池の成果を2020年に出すと吐いているが商用化するとは言っていない。やはり全個体化はそうそうたやすいものではなさそう。

 

電池コストは50ドル/kWhが目標に

  全固体電池は、電解液を固体にしたもので、現状のリチウムイオン電池を超えるエネルギー密度を実現できる可能性を秘める。冷却機構などの周辺部品を簡素化できることから、電池パックとしての低コスト化も期待される。

 トヨタは「2020年の東京五輪のタイミングで何らかの形で全固体電池の成果を見せる」(同社副社長の寺師茂樹氏)と意気込むが、乗用EVへの適用は容易ではない(図1)。固体電解質や正極材、負極材など電池を構成する主要材料の最適な組み合わせは探索の途上で、大量生産する技術は確立されていないためだ。

 

図1 トヨタが開発中の全固体電池の試作品
2020年代前半の実用化を目指す。(撮影:日経Automotive)
 

 EV用の電池で何より重要なのがコストの議論である。目安になるのが、パワートレーンのコストで内燃機関車と同等にすること。トヨタの技術者によると、「電池セルの価格が50ドル/kWhまで下がってようやく、EVと内燃機関車のパワートレーンのコストは同等になる」という。