WSJによると、日本の静かな「一帯一路」、中国を上回る成果という。一帯一路は、意外にうまくいっておらず、新興国もインフラ整備で一帯一路に依拠したが、返済計画が立たなかったり、プロジェクト自体がつまずいたり、国土の一部を中国に長期に課さざるを得なくなったりという話も多い。パキスタンの軍港とか、インドネシアの高速鉄道など。
戦後補償の面もあるが、ODAなどの莫大な援助をしてきたことが、双方にとって喜ばれる新興国支援に役だったのだろう。
中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に関する報道は絶え間なく伝えられている。しかし、中国政府の対外投資戦略の中核を成す同構想は幾つかの点で、日本の静かな取り組みに後れを取っている。
国際通貨基金(IMF)によると、2016年末には日本と中国の海外資産保有額がほぼ同水準となったが、それ以降は日本の対外投資が中国を数百億ドルも上回っている。日本の海外資産保有額は2018年第3四半期時点で1兆6670億ドル(約187兆円)だが、IMFの入手可能な最新データによると、中国は同年第2四半期時点で1兆5420億ドルだ。
この差は、日本政府の国際融資拡大のまずまずの成功と、中国の「一帯一路」の限界を示すものだ。
中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、日本と米国が中心のアジア開発銀行(ADB)に対抗する機関だが、2016年の発足以降の融資は控えめであり、2018年9月までの融資残高は64億ドルにとどまっている。これとは対照的にADBは2018年だけで358億ドルを融資している。2年前に比べると40%増だ。
さらに「一帯一路」は人民元の国際化を図るという一面を持つが、これまでのところ国際的な融資は圧倒的にドル建てが占めている。実際のところ、日本は自国通貨の海外での利用促進について中国よりうまくやっているように見える。
国際取引において円は世界第3位の通貨で、2019年2月の時点での比率は4.35%だった。ドルとユーロには遠く及ばないものの、人民元の1.15%は大幅に上回っている。そして過去数年、人民元の比率はほとんど拡大していない。さらに人民元を使用した国際取引の大半は香港で行われている。
国際決済銀行(BIS)のデータによると、主要通貨で対外融資が金融危機前の水準を上回っているのは、円とドルだけだ。英ポンドおよびユーロ建ての国際融資は大幅に減っている。
中国が最も成功しているとみられている外貨準備高でさえ、日本に負けている。世界の外貨準備高のうち人民元が占める比率は、初めて報告された2016年末時点の1.07%から1.89%に伸びた。同じ期間に円が占める比率は3.96%から5.2%に伸び、過去15年で最も高くなった。
中国はいつの日か、日本からアジア最大の対外債権国の座を奪うかもしれない。また人民元は世界の金融システムでより大きな役割を担うようになるかもしれない。中国の経済的影響力の大きさを考えれば確かにそうなるだろう。だが現段階では、中国政府の対外的野心は実績が言葉に追い付いていない。